選ばれし聖女は神に苦情が言いたい

もぶぞう

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聖女アーニャとて人の身。
生きて行くにはお金が必要となる。
聖女として国を回るときには必要経費とほどほどの報酬をもらっている。
教会を通すとぼったくるので普段は冒険者ギルドで指名依頼にしてもらっていた。
ギルドなら報酬が依頼人から前納されるので安心だ。


だが話が流行り病となれば規模が大き過ぎて報酬も膨大になる事が予想された。
しかも感染者がどんどん増えるので最終的な報酬も確定できない。
なので今回は前金と事後の成果報酬での契約となった。


最初に治療したこの国の第一王子が外国から持ち込んだらしいことはすぐに判った。
何せ第一王子を初め、その周辺がまず流行り病の症状を示していたのだ。
発病して7日~10日で死に至ると言われるその病。
アーニャがこの国に入った頃にはすでに王都で大流行となっていた。


直ぐに王都の出入り制限を指示したが、どれ程国内に拡がってしまっているのかは判らない。
アーニャはひとりしか居ない。
神官たちではイメージできないのか、病の治癒の効果が薄かった。
それでもアーニャがこっそり王都に浄化の結界を掛けたことで事態を治めることができた。


「聖女アーニャ、明日には隣国へ旅立つと聞く。
息災でな。」


「ありがとうございます、陛下。
報酬を受け取り次第隣国へ参りますわ。」


「おや、報酬とな。
受け取れると良いな。」


「まさか陛下、契約を無かった事にできるとでも?
全ギルドの撤退が起きますよ。」


「いやいや、其方が丸で働かなかったとの報告を受けておる。
そうだな、宰相。」


「その通りです、陛下。
聖女に付いて回りその成果を数えようとした者も聖女が何もしない事に驚いたとの報告が来ています。」


「いや、それは無理が有りますって。
ギルドの職員も付いてきちんと成果の報告はギルドにされていますからね。」


そこはギルドだって破格の手数料が入るのですもの、職員3人派遣されてます。
何でこんなのに王権与えちゃうかな。
この世界も人材不足に悩んでるの?


「その者らの話は聞いておる。
聖女と組んで報酬を騙し取ろうとした咎で既に国外追放となった。
国を謀ろうとはギルドにも賠償金を請求せねばならぬな。」


「おやおや、どうしても報酬を払いたくないのですね。
では、わたしが何もしなかったと言うのが契約の相手である陛下の主張で宜しいですか。」


「もちろんだとも。
我が国の臣は優秀であるからな。
我に嘘の報告をするはずがない。」


「契約違反確認しました。
神罰は巻き戻しでお願いします。」


「うわああああ!」


アーニャの言葉と共に室内で悲鳴が上がった。
最初に治療した第一王子だった。
そして次々に悲鳴が上がり、すぐにその者は倒れ伏した。
それは止まることを知らず、倒れる者が増えるばかりであった。


「な、何が起こっておる。
聖女、貴様の呪いか!」


「いえ、陛下のおっしゃった、わたしが何もしなかった世界に塗り替わっているだけです。
わたしが第一王子を治療してからひと月。
何もしなかったとの事ですので第一王子は既に死亡して、他の方も同様ですね。
感染が拡がって酷いことに成ってしまいますね。


ああ、大丈夫ですよ、あなたは契約のお相手ですので経過を確認するために現状維持されてます。
ほら、死亡した人の魂も近くで待機したまま天へと召されることもありません。
すべてが治療しなかった世界に塗り替わってからその分岐点、わたしとの契約が無かった時点に戻ります。
そこからあなた方はこの記憶を持ったまま地獄を見る事になるでしょう。
死亡した人もちゃんと病の苦しさを味わってからもう一度死亡して天に召されるでしょう。
ああ、幾人かは召されずに消滅のようです。


神罰ですので出来ない事が多いですよ。
例えば今回のことを他人と共有することはできません。
書き残したり人に伝えたりね。
わたしに治療を強制することもできません。
皆さんが望んだ『わたしがこの国で治療しない世界』ですので。


この回の報酬は強制的に徴収させてもらいました。
違約金と慰謝料ももらってますのでお気になさらずに。
その分巻き戻った世界では国庫が減っているのでわたしに依頼する前金も有りませんね。
あちこちから集めればどうにか成りそうですがわたしが治療しない世界なので意味無いですね。


そろそろ塗り替えが終わりそうです。
では、皆さんはわたしが治療しなかったこの国の末路へ。」





「聞いたか、隣の国の王都は既に生きている者も居ないだろうって噂だ。」


「ああ、王族が金ケチって聖女様に依頼しなかったんだろう?
それで王族が真っ先に全滅とか笑えないだろうよ。
教会と違って法外な料金取る訳でもないのに馬鹿な国だよな。
聖女様が警告出されたので結構な人数が国を逃げ出してこの国で治療してもらったんだろう?
難民でも払えるくらいなんだから王や貴族ならはした金だろうにな。」


「違いない。
何でもパンひとつの料金取って、治療してもらうとパン貰えるらしいぞ。
払えなくても『もう貰ってるからサービス、サービス』と謎の呪文唱えてパン2つに増えるらしい。」


「なんだそりゃ!」


「それとな、王侯貴族が居なくなって国は滅んだだろうってんで、うちの王様が生き残りを助けるために聖女様に依頼を出すそうだ。
既に多めの依頼金をギルドに預けてるってさ。
真面な王が治める国に生まれて俺たち良かったな。
神様に感謝だ。」


「おい、王様を真面とか不敬だぞ。
だが、そうだな、税金取られるならちゃんと使って欲しいよな。
聖女様も寄越してくれたし、神様に感謝だ。」



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