選ばれし聖女は神に苦情が言いたい

もぶぞう

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とある婚約破棄の皮算用

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このとき聖女アーニャはとある国で歓迎&労いのパーティに出席していた。
既に国内各地を巡り治療と結界設置を済ませている。


「ソフィーナ・エトワール、貴様が我が愛しきリリアンヌへ行った非道の数々、既に明らかである。
この様に証言してくれる者も居る。
よって貴様との婚約を破棄し、新たにリリアンヌとの婚約を発表する。」

確か第一王子と紹介された人だったかしら。
腕に派手な女性ぶら下げて愛しきとか言ってるのは不貞の告白ではないの?


「うげっ、まじか、エトワール商会の株買っておけば良かった。」


「そこ、不敬であるぞ。
殿下のお話し中である。」


エトワール商会ってあれよね。
各地巡ったときにどの町にもあった大手のお店。
エトワールと言うくらいだから破棄された令嬢のお家関係?
ちょっと婚約破棄よりもそこの株の話の方が面白そう。


「あの王子と取り巻きは結界で封じておくから、もっとお話し聞かせてもらえる?」


「え?あ!聖女様。
そんな事して大丈夫ですか?」


「ええ、さっき不敬とか言った奴が指差した先にわたしも居たからね。
わたしへの不敬と言う事で神罰よ。
元々わたしの為のパーティを台無しにした方が悪いのよ。
何より王子よりあなたのお話の方が面白そうだわ。
どうせ王子たちはざまぁされるだけでしょ?
それで、エトワール商会の株を買っておけば良かったと言うのはどう言う事?」


「あー、それはですね。
ソフィーナ様はエトワール商会を持つエトワール公爵の令嬢って事は良いですか。
それとあそこで殿下にぶら下がっているのは男爵令嬢なんです。」


「そうなのね。
男爵令嬢じゃ相手にも成らないって事?」


「まあ、そうなんすけど、まだ続きが有ります。」


おっと話の腰を折ってしまったのね。


「ごめんなさい。
続きをどうぞ。」


「はい。
エトワール公爵様は、と言うより公爵家一同はソフィーナ様ラブでだだ甘なんです。
ソフィーナ様がただ一言「あの男爵令嬢が」と言えば次の日には男爵家揃って行方不明になるくらいには甘々です。
更に公爵様はあの王子との婚約には反対していて、公爵様の兄である王の命令なので仕方なく婚約している状態です。
いざとなったら王子の病死が発表されるだろうと噂されてた程です。」


王子の病死とか本人をわたしが抑えているとは言え大胆な事言う子ね。
場合によってはこの子の一族が消えちゃうわよ。


「と言う事はソフィーナ嬢が直接男爵令嬢に非道を行うなんて有り得ないと言うか不要なのね。
でも、取り巻きの後ろに証人とか居るみたいよ?」


「ええ、でもあれは取り巻きたちの家の寄子の令嬢です。
恐らくなにかしら脅されての証言かと。
しかも嘘の証言が済んだら下手すれば消される可能性も。
それに冤罪の証言となれば公爵様が黙っていません。
家が払えないくらいの賠償金か令嬢たち本人の身柄が要求されるでしょう。」


「まじ?あの娘らの未来真っ暗じゃない。
いっそここで脅されてるってバラして王子側から賠償金取るしか無いんじゃない?」


「おお、それは有りっすね。
と言うかそれしか無いですね。
公爵家から請求されるとしたら金貨5000枚くらい有り得るでしょう。
王子側の悪事を証言して公爵様の庇護下に入れてもらうしか生き残る道は無いでしょう。」


証言者らしき令嬢たちも聞こえている様で相談している。
おや、決めた様だ。
公爵令嬢のところで頭を下げている。
娘に甘々な公爵ならソフィーナ嬢の一言であの娘たちは保護してもらえるわね。


「あの娘たちに金貨5000枚なら王子と取り巻きにはどの位請求されるの?」


「万単位の金貨が動くでしょう。
下手すると王位が公爵家に動くかも。
と、なれば……。」


「成程、そこでエトワール商会の株が上がるのね。」


「そうです、天井知らずで上がりますよ。
しかも王位が動くとしたらソフィーナ様が商会の会頭に成る可能性が有ります。
そうなれば爆上がりが加速しますよ。」


「それ程ソフィーナ嬢は優秀なの?」


「いえ、他の追随を許さない程優秀ではあるのですが、それよりも愛され属性が強烈なのです。
周りが放っておかないので商会の利益も爆上がりします。」


そっかー、何であの王子には愛されなかったかな。
誰も魅了とか呪いとか使ってる形跡も無いし。


「結局王子側の勝ち筋は無かったのよね。
何でこんな馬鹿な事したのかな。」


「聖女様のせいで王子たちほとんど何もさせてもらえて無いですけどね。

ああ、お金じゃないっすかね。
いえ、駄洒落じゃ無いっす。
国王陛下以外の皆が婚約破棄を望んでいるのは王子も知っていましたし、ちょっとでも王子が有利に破棄と成れば裕福な公爵なら喜んで婚約破棄に同意して慰謝料払うと思ったのではないですか?」


「え?ちょっと待って。
国王以外は破棄を望んでいた?
つまり国王の我儘で姪っ子の婚約を命令したの?
何その愚王、すべての元凶じゃん。
よし、公爵に譲位させようよ、知らんけど。」


「それ程の愛され属性なんですよ、ソフィーナ様は。」


おーい、神様。
ソフィーナ嬢を聖女にした方が色々スムーズだったんじゃないの?
実家はお金持ちで王弟公爵の令嬢だし。
各地に商会の支店が有って支援も楽そうだ。
ああ、でも国内限定か。
じゃあこの国のメンテ頼むのに聖女助手に指名して良い?
あれ?ダメ?何かダメな要素が有るの?
布石?回収されない布石ね?
まあこの国周り終えたわたしがそこまで関わる事も無いだろうから良いか。


「どうもありがとう、事情通なのね。
それにしてもわたしが苦労してるのに呑気なものよね。」


「あ、いえ、お勤めご苦労様です、聖女様。」


出所した姉御か、わたしは。
ソフィーナ嬢のお迎えと王子たちの回収が来たようね。


「聖女様、彼らを取り囲んでいる結界を解いて頂きたいのですが。」


「あら、わたしを歓迎し労うパーティを台無しにした方々を無罪放免にせよと?
中にはわたしを指差し不敬を叫んだ者もおりますのよ?」


「いえ、彼らは相応の罪に問われるものかと思われます。」


「そう、まあ良いわ。
この場で労ってくれたのは彼だけですものね。
接待する側のあれがお役目忘れてあの体たらくだしね。
謝罪する者も居ないし、この国にどう思われているのか判りましたわ。
2度とこの国に来ることも無いでしょう。

解説者の君、お世話になったわね。」


こんな事している余裕はこの世界に無いんだけどねぇ。



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