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選ばれし聖女は神に苦情が言いたい
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その日とある国でひとりの聖女が認定された。
聖女候補として集められた乙女たちがひとりひとり女神の像の前で祈り、聖女に認められると女神像が光り輝くと言う。
聖女候補の最後のひとり、アーニャが祈りを捧げると教会内を埋め尽くす程の光が溢れた。
人々は驚きと共に新たなる聖女の誕生を喜び神の前に傅き感謝の祈りを捧げた。
一部の者たちは自分や自分に利益を齎すはずだった候補が選ばれなかった事に顔を歪めたが人に倣って祈る振りをしている。
そんな中選ばれたアーニャは恐れ多くも神に対して苦情を告げる。
「何てことするのですか、神様。
わたしを聖女にするってことは、わたしの為人をご覧になったのですよね。
今まで実家で虐げられ、自分でも良くここまで生きて来たと思う程の虐待をお知りになったのですよね。
更に聖女候補になってからの周りの人たちの非道や神官たちの不正。
その上、聖女を娶る為等と戯言を言う王子の所業。
すべてご承知の上でわたしを聖女にすると?
あれだけの事を周りにされて来たわたしが人の為に、国の為に、教会の為に祝福を齎すとお思いなのですか?
有り得ないでしょう。
ここは神様のお作りに成った世界。
罰をお与えにならずに祝福だけをお与えになるのは神様の自由です。
ですが、わたしは信賞必罰であるべきと考えます。
わたしの信念に従って、褒美とも言える祝福だけをお与えになる事に反対します。
よってわたしは他人の為に聖女の力を使いません。
不適格とお思いになるのならば聖女の称号を剥奪なさって下さい。
ですがそれはわたしに対する神罰。
わたしだけが罰を受ける事になります。
ええ、それも神様の自由です。
わたしは唯一の神罰を受けた者として、勝手に聖女に選んでおいて都合が悪いと見れば剥奪した神様の理不尽を思いながら一生を過ごして行きましょう。
どうぞ神様の為さりたい様に為さって下さい。」
「貴様、神と教会に対してこれ程の不敬、死罪だけで済むと思うな。
神よ、このような者は聖女に相応しくありません。
称号剥奪と共に神罰執行を。」
「王家に対する不敬、貴様だけでなく一族郎党に罰が与えられると覚悟するが良い。
神よ、この者に神罰を。
貴様が神罰を待つ間に家族の処刑を見ているが良い。」
「神様、教会も王族も神罰に賛成されました。
勿論わたしも民のひとりとして賛成致します。
依って神様が神罰執行解禁の条件とされていた、教会、どこかひとつ以上の国家運営担当者、そして民の同意が揃いました。
どうぞ御遠慮無く神罰執行為さって下さいませ。」
アーニャの宣言と共に世界各地で幾筋もの稲妻が降り注いだ。
建物の中であろうと降り注ぐそれは正に神罰である。
神の国を名乗っていた教会の本山である聖国では聖職者の半数に神罰が降ったと後に聞こえて来た。
勿論アーニャの周辺でも多くの者が稲妻に撃ち抜かれた。
アーニャによって神罰に賛成したことにされた神官と王子も含まれている。
「信賞必罰にご同意頂きありがとうございます。
これより聖女アーニャは我らが神の為に力を振るいましょう。
わたしに神罰執行の権限を後付けなさったのはやり過ぎだと思いますよ?」
『いくら打ち合わせ通りと言っても、ちょっとカチンと来たのよ。
その分お仕事増やしておいたわ。
聖女も信賞必罰を実行して。
祝福与えるだけじゃなくて罰も与えるべきよね?うふふ。』
アーニャが神に求めたのだから神がアーニャに同じ事を求めても文句は言えなかった。
これより以降聖女アーニャは世界各地を巡り、怪我人や病人を癒し、魔物から人々を守る結界を張り巡らせ、時折神罰を執行し、100歳に至って神に成ったと言われている。
ちなみに救った人数よりも神罰で滅した人数の方が多かった事を人々は気付かない振りをしていたと言う。
後の歴史学者も未然に防がれた被害を最大に数える事によって累計が全世界の人口を越えてしまい、結果アーニャが世界を2・3回救った事になってしまったのは致し方ない事である。
聖女候補として集められた乙女たちがひとりひとり女神の像の前で祈り、聖女に認められると女神像が光り輝くと言う。
聖女候補の最後のひとり、アーニャが祈りを捧げると教会内を埋め尽くす程の光が溢れた。
人々は驚きと共に新たなる聖女の誕生を喜び神の前に傅き感謝の祈りを捧げた。
一部の者たちは自分や自分に利益を齎すはずだった候補が選ばれなかった事に顔を歪めたが人に倣って祈る振りをしている。
そんな中選ばれたアーニャは恐れ多くも神に対して苦情を告げる。
「何てことするのですか、神様。
わたしを聖女にするってことは、わたしの為人をご覧になったのですよね。
今まで実家で虐げられ、自分でも良くここまで生きて来たと思う程の虐待をお知りになったのですよね。
更に聖女候補になってからの周りの人たちの非道や神官たちの不正。
その上、聖女を娶る為等と戯言を言う王子の所業。
すべてご承知の上でわたしを聖女にすると?
あれだけの事を周りにされて来たわたしが人の為に、国の為に、教会の為に祝福を齎すとお思いなのですか?
有り得ないでしょう。
ここは神様のお作りに成った世界。
罰をお与えにならずに祝福だけをお与えになるのは神様の自由です。
ですが、わたしは信賞必罰であるべきと考えます。
わたしの信念に従って、褒美とも言える祝福だけをお与えになる事に反対します。
よってわたしは他人の為に聖女の力を使いません。
不適格とお思いになるのならば聖女の称号を剥奪なさって下さい。
ですがそれはわたしに対する神罰。
わたしだけが罰を受ける事になります。
ええ、それも神様の自由です。
わたしは唯一の神罰を受けた者として、勝手に聖女に選んでおいて都合が悪いと見れば剥奪した神様の理不尽を思いながら一生を過ごして行きましょう。
どうぞ神様の為さりたい様に為さって下さい。」
「貴様、神と教会に対してこれ程の不敬、死罪だけで済むと思うな。
神よ、このような者は聖女に相応しくありません。
称号剥奪と共に神罰執行を。」
「王家に対する不敬、貴様だけでなく一族郎党に罰が与えられると覚悟するが良い。
神よ、この者に神罰を。
貴様が神罰を待つ間に家族の処刑を見ているが良い。」
「神様、教会も王族も神罰に賛成されました。
勿論わたしも民のひとりとして賛成致します。
依って神様が神罰執行解禁の条件とされていた、教会、どこかひとつ以上の国家運営担当者、そして民の同意が揃いました。
どうぞ御遠慮無く神罰執行為さって下さいませ。」
アーニャの宣言と共に世界各地で幾筋もの稲妻が降り注いだ。
建物の中であろうと降り注ぐそれは正に神罰である。
神の国を名乗っていた教会の本山である聖国では聖職者の半数に神罰が降ったと後に聞こえて来た。
勿論アーニャの周辺でも多くの者が稲妻に撃ち抜かれた。
アーニャによって神罰に賛成したことにされた神官と王子も含まれている。
「信賞必罰にご同意頂きありがとうございます。
これより聖女アーニャは我らが神の為に力を振るいましょう。
わたしに神罰執行の権限を後付けなさったのはやり過ぎだと思いますよ?」
『いくら打ち合わせ通りと言っても、ちょっとカチンと来たのよ。
その分お仕事増やしておいたわ。
聖女も信賞必罰を実行して。
祝福与えるだけじゃなくて罰も与えるべきよね?うふふ。』
アーニャが神に求めたのだから神がアーニャに同じ事を求めても文句は言えなかった。
これより以降聖女アーニャは世界各地を巡り、怪我人や病人を癒し、魔物から人々を守る結界を張り巡らせ、時折神罰を執行し、100歳に至って神に成ったと言われている。
ちなみに救った人数よりも神罰で滅した人数の方が多かった事を人々は気付かない振りをしていたと言う。
後の歴史学者も未然に防がれた被害を最大に数える事によって累計が全世界の人口を越えてしまい、結果アーニャが世界を2・3回救った事になってしまったのは致し方ない事である。
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