黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査開始

21. 八日目、資料室にて新展開 

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 急に仕事が無くなった後藤は資料室へと向かった。見落としている資料や証拠
があるのではないかと感じていたのだ。頭の中は未解決事件で一杯になっていた。

 資料室へ入ると再び、例の事件の資料に目を通す。筆記用具を取り調べ室に忘
れた為、アルミ製の灰色に塗装された机の引き出しを開けたままにして中の筆箱
を勝手に借りる事にする。
(やはり、木島課長の自殺については一切記載されていない)

 一時間後、資料から何も糸口が掴めない事が分かると気分転換の為に唯一の窓
を開けて新鮮な空気を取り込んで背伸びをすると転びそうになった。さっき先輩
が昨日、ワックス掛けしていたと話してた事を思い出し、転んでも頭や足の小指
だけは当てないように意識を向けた。壁掛け時計を見ると午後二時を指していた。

 窓を閉めようとした所に携帯電話の着信音が響き渡る。急いで取り出して画面
を見ると黒沢警部と表示されている事が分かる。電話の内容は、処分が決まった
から一階の捜査一課に来てほしいとの事だった。

 再び、窓を閉めようとした時に床一面に捜査資料が散らばっているのが目に入
った。
「風が入って来てたのか。ついてない」
 後藤が手前にある資料を拾おうとして中腰になった所に入口のドアが勢いよく
開かれて後藤の背中に衝撃が走り、押されて足元が滑り、仰向けに倒れこんでし
まう。
「当てちゃったみたいだけど大丈夫?」
「体は丈夫な方だから心配ない。用事があるなら片付けるまで待っていてくれ」
 声だけでも同僚の高橋だと分かる後藤。
「急用って程じゃないし出直すわ」
 高橋が席を外すと真上に膨らみがあるのが分かる。良く見るとアルミ製の机の
下に居る事が分かり、膨らみを手で触って確かめる。
(何かをビニールテープで固定しているぞ)
 腕を伸ばし、テープを丁寧に剥がして隠してある品物を右手で掴むと体勢を整
えてから起き上がる。中身は手帳だ。灰色のテープの屑をハンカチに隠すと持ち
主を調べる為、表紙を捲る。木島悟と克明に書かれている。
(これは本物に違いない)

 引き出しの奥面とデスク側の面の間にある空所(デッド・スペース)に本人が
隠したのであろう。偶然とはいえ、貴重な資料を入手する事が出来た。逸る気持
ちを抑えて資料を片付け、窓を施錠してから引き出しを戻し、手帳を革靴の中敷
の下に隠して資料室を後にした。
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