黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査開始

31. 九日目(謹慎初日)、暗号の解読  

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 数分後、カフェイン効果が出始めたのか頭が徐々にすっきりとしていき、オー
ソドックスなアイデァが思い浮かんだ。定番中の定番である平仮名に変換する方
法である。
『① にじ、ちひ、ごごやり②はにわにこはたけ③がじーせつめもり④ ながれ
(る)があ(ばは)、お(び)かうぼう(わす)』
 漢字よりは謎を解きやすくなった気がしたが未だ意味までは分からない。④に
関しては読み方が複数あるので取りあえず頭に浮かんだものだけ書き出した。

 暗号を解くには大きく分けて、不要な文字を排除する方法と文字列を並べ替え
る方法が考えられる。やり方を間違えれば時間だけが無駄に消費されて迷路に入
り込み、そこから脱け出すのが困難になるのがオチだ。限られた時間を無駄にし
ない為にも有効な手掛かりを見付ける必要がある。思考を巡らせてから五分後、
一つの考えが浮かび上がる。

「ひょっとすると8mmビデオテープに何か映っているのかもしれない」
 試す価値が充分にあると判断して19日の最後に観た(午前十一時~午後四時
迄の録画)録画テープを勉強机の一番下の引き出しの奥から取り出してビデオデ
ッキの中へ挿入する。約一時間後に停止ボタンを押す。小学一年生の隆が積み木
で遊んでいた事が分かった。何でも無いと思っていた積木が今になって妙に引っ
かかっていたのだ。
 後藤はキッチンテーブルに置きっぱなしにしていた新聞の下から白紙部分が載
ってる広告を持ってきて白紙部分に鉛筆で力強く『積木』と書いて再び再生ボタ
ンを押した。

 積木が早々に終わると還暦の隆との二人でしりとりが始める。その最中に小学
一年生の隆が同じ動きを繰り返しているのに気が付いた。右手を握り締めた状態
から人差し指と親指のみを開けた状態にして何回も手首を捻って指の位置を反転
させている。
「俺とした事が完全に見落としていた。もしかして、これは逆さまにするって事
では無いのか?」
 後藤は広告の白紙部分に『しりとり』と『逆さま』を記入すると残りのインス
タントコーヒーを飲み干して考えを巡らす。最初に頭に浮かんだ事は、積み木=
木製だった。それを参考に暗号を見ると末尾に木と関係する文字が入っている事
が確認できた。

 ①=槍、②=竹、③=森、④=棒。暗号を解く鍵を一つ外した気持ちになり、
気分が高揚して前傾姿勢になっていく。
「次は、しりとりか……」
 後藤はパソコンに平仮名でしりとりを二つに分解させて入力すると変換を数回
繰り返す。その中に興味を惹かれる言葉が目に入って来た。尻と取りである。そ
こから末尾を排除する発想に至ると先程の木と関係する文字に鉛筆で×印を付け
た。ここまで来ると最後の鍵を解くのに時間は掛からなかった。残った文字を下
から順番に並べ替える(逆さま)と意味不明だった文章からモザイクが消される。

 ①ごごひちじに、②はこにわには、③めっせーじが、④うかびあがる。そこか
ら漢字に変換させると簡潔明瞭な意味を持つ言葉が完成する。
『午後七時に箱庭にはメッセージが浮かび上がる』
「何が出てくるのか俄然興味が出てきた。これでもう一度、東病院に行かなきゃ
ならなくなったって事かっ」
 暗号の内容を頭に記憶するとメモを記した広告をシュレッダーにかけて机の上
を綺麗にした。暗号を解いた開放感からか予定よりも早く眠りに着く事に決めて
目覚まし時計を午後十時にセットして眠りに落ちた。

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