黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

78. 十一日目(謹慎三日)、サユリ宅にて⑬  恩田の告白2

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「ブブー。追い炊きが完了しましたー」
 ブザーと追い炊き終了を告げる知らせが響いたのでサユリの側に
移動する恩田。
「疲労感は幾分か取れたか?」
「まぁまぁって所かな」
「自分で起きれそうか?」
「途中で倒れても迷惑掛けちゃうし、眠ってる力にも興味あるから
今日は甘えてみようかなと」
「随分、正直だな」
「元々、嘘つくの苦手だし、誰かさんみたいに上手じゃないもん」
「ビアンカの事を言ってるのか?」
「まぁ、そうかな」
「そう言えば店内でコスプレしてるらしいな」
「そうなのよ。それで、そのファンが噂を聞きつけて指名客が増加
してるの」
「俺が聞いた話だと抜き身の剣に真紅のマントだったな」
「うん。そうなの。本当はリアリティを追求してマント留めにある
獅子をモチーフにした物を装着したかったみたいなんだけど流石に
マネージャーに止められて……」
「あぁ、そうだった。オチとしては、それ以上は独立してからやっ
てくれと言われたんだったな」
「嘘、そこまで知ってるんだー」
「別に驚く事じゃないさ。裏の世界では誰が何処に居ても情報だけ
は飛び交うもんだ。情報戦略だけで成り立ってる組もあるくらいだ
からな。と言っても小学生の話までは、まともに記録しちゃいない
がな」
「情報ってお金になるんだねっ」
「時期と相手次第だな。色々な所で金を借りまくってた奴が金が早
急に必要になってる時に貸してくれる金融屋と出会ったとしたら、
どうなると思う?」
「う~ん。私だったら天使に見えるかな~」
「天使か。俺を含め、奴らは旨味がなけりゃ動かない主義だ。追い
詰められてるんだから契約書や金利の欄なんて詳しく見ないで借り
てしまうのと似てるのさ」
「どういう事?」
「奴らは足元を見てるのさ。但し、奴らもアホじゃない。返す当て
が無くても笑ってる連中ではないって事さ」
「風呂屋に沈めるんでしょ」
「魅力的な身体なら、そういう方法もあるが全員に当てはまる訳で
はないし、日本国籍を取得したい外国人は沢山いるから、そういう
方法もある」
「なるほど、色々な方法があるのね。保険金連続殺人とかは?」
「言っておくが俺は自殺を他殺に見せ掛けた保険金を引き出すやり
方は進めてないし、手を染める気はない。ましてや連続なんてのは
疑ってくれと言わんばかりの馬鹿のやる事だな」
「今、聞いて良いのか分からないんだけど恩田さんって何で闇金を
やってるの?」
「まさに単刀直入だな。話の流れからは悪くない質問かもしれない
な。あの男と再会しなければ口にする事は無かったかもしれないが
話さないと決めた訳じゃないから特別に教えるよ」
「えぇっ。本当に良いの?」
「言ったろ、今日は特別だって。但し、他言は無しで頼む」
 真剣な眼差しで頭を下げる恩田に困惑してしまったが口が軽い訳
では無かったので素直に受け入れる事にしたサユリ。
「うん。分かった」
 サユリが頷いたのをしっかりと確認した後、恩田はサユリ宅で、
寝落ちした際に観た夢”拭い去りたい過去”の内容を身体を震わせな
がら順を追って説明した。裏社会のトップに君臨した法海候の存在
も自分の不甲斐なさも全てさらけ出していた。話を聞いたサユリは
暫く、むせび泣いていたが恩田に肩を抱きしめられていたので次第
に落ち着いたのか泣き崩れたままにはならなかった。
「そんな酷い事されてるのに未だ抜け出せないの?」
 右の眉毛を吊り上げながら怒りを露わにしたサユリだが恩田は、
抱きしめていた腕を解いて両肩を掌でしっかりと掴みながら否定に
入った。
「それは勝手な勘違いというものだ。俺は好きで金融屋の道を選ん
だ。闇金ではあるが暴力が苦手な俺には症が合っていると感じてい
るし生き甲斐も感じている」
「生き甲斐か。私はそんな風に感じた事は今まで一度もないな~。
少し羨ましい気もする」
「そんなもんじゃないさ。只の自己満足だ。世間一般的には回収が
厳し過ぎて自殺に追い込んでるみたいに思われがちだが金額はとも
かく返済する意思を示してくれさえすれば命までは取らないんだ。
変な知識で臓器売買なんて事を言ってくる奴も居たが健康じゃなき
ゃ意味がないし、ルートを確保できる環境は現状では難しいしリス
クの方が高いんだ。逆に同業者にリークでもされれば組の存続だっ
て危ない時代だ」
「よく、利子が膨れ過ぎて元金が一円も減らないって弁護士に相談
する人が増えてるって話もあるじゃん。そこはどう思ってるの?」
「確かに闇金は銀行と違って暴利ではある。じゃぁ、何で暴利か分
かるか!?」
「そんなの分からないよ」
「他所が貸してくれないって事は返済能力が低い。または無いって
事を証明してる様なもんなんだよ。つまり、高い金利を貰わなきゃ
割に合わないんだ」
「あぁ。それって本人に返済能力がなくても連帯保証人が払って、
くれれば良いって奴だね!」
「そうだ。親子の縁はそう簡単に切れるもんじゃないし持ち家なら
家を担保に入れる事だってできる。こっちも慈善事業をやってる訳
じゃないから取れる所から取っていく」
「そっか。そうだよね~。借りたお金は返さなきゃだもんね!」
「シンプルに返してくれれば問題ない。よく利子分が中々減らなく
て自己破産して返済義務を免れて安心した奴を見ると本当に腹が立
つんだ。何も知らずに他人の連帯保証人にされたケースには流石の
俺も同情したい気持なる。俺が言ってるのはあくまでも自らの意思
で借りたものに限るけどな」
「恩田さんは責任感強そうだもんね」
「利子分を考慮しずに元金分だけでも、きっちり耳を揃えてから、
文句を言って欲しいと俺は思ってる。返済義務が無いと裁判所が、
判断しても元金分を払い終えるまでは返済額が変動しても返済は
続けるとかな」
「でも現実は違うよね?」
「あぁ、結局は自分に厳しい人種は少数派で自分に甘い人種に溢れ
返ってる。他人に厳しく自分に甘いっていう典型的なパターンだ。
俺はそれを嫌悪しているし反面教師にしている」
「恩田さんのポリシーは私にはちゃんと伝わったよ」
「悪いな。あまり、こういう話を他人にした事がないから免疫が無
くてブレーキの掛け方が分からないんだ。それに俺が母親に言われ
た最後の言葉でもあったから影響をモロに受けたかもしれないんだ」
「差し障りなかったら、お母様の言葉を聞いても良いかな?」
「借りた金は忘れずに帰す事。もちろん相手が覚えてなくて断られ
れば仕方ないが、そうでない場合は借りた事をしっかりと胸に刻み
込んで遅くなっても良いから、ちゃんと返すんだよ。みたいな感じ
だったよ」
「その言葉が辛い時の心の支えになったんだねっ」
「あぁ、病気がちな母の最期の言葉だったから、今でも耳に残って
る……」
 熱い一面を垣間見たサユリは恩田にまた抱かれたくなっていたの
で興奮させるようなボディタッチを試みるが恩田が気付いたのか、
ゆっくりと静止された後、お姫様抱っこで抱えられて風呂場までを
しっかりとした足取りで移動して、サユリの提案で、お互いの身体
を洗いっこしてから対面する格好で湯舟に入り、只、無言でお互い
を見詰め合っていた。
 
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