黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

79. 十一日目(謹慎三日)、魔の三角地帯への捜査①

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 後藤が睡眠を促す裏技を試してから起床したのが朝の6時だった。
僅かながらも明るさを感じられる景色だったが平常時の食欲が復活
した訳ではなく、野菜ジュースと栄養ゼリーを各1つずつ摂取する
と食欲が無くなり、テーブルに置かれた付箋の裏に炙り出しで現れ
た住所を見て”山城先生”宅に行く事に決めた。
「黒沢警部の過去を探れば俺が追っている事件に繋がる何かが出て
来るかもしれない」
 今回の事件を追えば追う程に何もしないで手掛かりが得られる訳
がない事を学んだのだ。

 聡さんが住んでるアパートから歩いて5分の距離に当時、学年主
任だった山城先生の庭付きの自宅があった。到着時刻は朝6時45
分となっていたので朝食の時間帯かもと一瞬、頭をよぎったが無意
識に呼び鈴を押していた。
「ピンポーン」
「ガチャ、朝早くに何か用かね」
「どうも朝早くにスイマセン。どうしても山城先生に聞きたい事が
ありまして……」
 貫禄を感じさせる深みのある声が聞こえて来たので思わず緊張し
てしまい動揺している声しか出す事ができない後藤。
「どうして私が先生をやっていた事を知っているのですか?」
「あぁ、そうでした。私とした事がうっかりしていました。西新宿
署に勤めている後藤と言います」
「失礼ですが階級を教えて頂けますか?」
「もちろんです。巡査であります」
「成程、警察の方でしたか。その後藤巡査が私に聞きたい事とは何
でしょうか? 腹も空いておりますので食べながらでも良いでしょ
うか?」
「えぇ、こちらとしましては対応して頂けるだけで充分ですから」
「そうでしたな。恐らく未解決事件の事でしょうから。狭いですが
、どうぞ、お上がり下さい」
「えっ? 未だ何も話していないに普通、そこに結び付きますかっ」
 脱いだ靴を揃えるのも忘れて相手に近付き、真意を問い質そうと
する後藤。
「はっはっはっ。最初に驚かされたので、お返しという奴ですよ」  
 腰に手を回して両手を組みながら廊下を歩く様は教師というより
仙人を思わせた。

 山城はカウンターキッチンの椅子に腰を掛けると既に用意されて
いた朝食に手を付け始めた。先ずは飲むヨーグルトを一口飲んだ後、
ツナサラダを摘まんでからマーガリンが程良く沁み込んだトースト
を二口パクついた後、ハムエッグにソースを一周垂らし、ナイフと
フォークで半分に切った後、半分になったハムエッグのハムの両端
部分を重ねるように黄身を包みながら、口の中へ放り込んだ後に、
最初の飲むヨーグルトに戻って喉を潤していく。

 後藤は山城の一切の迷いが感じられない流れるような動作に食べ
る順番が決まっている事をヒシヒシと感じ取りながら、まるで少林
寺拳法の奥義を見ているような錯覚に陥っていた。
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