黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

80. 十一日目(謹慎三日)、魔の三角地帯への捜査②

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 五分が経過するとテーブルの上に並べられた料理は全て無くなり
テッシュで口元を拭った後、後藤の顔を見ながら話し始める。
「確か、口の中の物を見せながら話すのを禁じていたのは教師にな
ると決めた日からだった気がしますが今となっては教師でも無いの
で、そんな所に拘る必要もないのですが、食べながらと言えば私の
事にもっと興味を持ってくれるのではと思いまして意地悪をしてし
まいましたね」
「いえ、五分位、張り込み現場に比べれば、どうってこと無いです」
「そうですか。そういう物なんですかね。教師時代は人気があった
方では無かったので私を訪ねてくれるような教え子はたったの一人
だけですがね」
「……」
 どう返して良いか判断が付かない状況の中、無音に耐え切れなく
なった山城が会話を続けた。
「あなたを困らせるつもりは無かったんですが何分、一人暮らしが
永いもので、しゃべり相手が無くテレビに向かって独り言を話して
いる隠居者なんですよ」
「元気そうに見えますが何か御病気でもなさったのですか?」
「えぇ、そうですね。何から話して良いやらという奴です。それに
初対面の人に自分の病気の事をベラベラと話しても、きっと退屈な
さるに決まってます。もちろん愚痴を聞いて頂ければ後藤さんの質
問にもきちんと答えるつもりではいますよ」
「分かりました。精神科医ではありませんが、それで私の質問に答
えて頂けるのでしたら喜んで聞かせて貰います」
「話が分かる人で良かった。実は約二年前の1998年の9月8日
に私を尋ねに来た人が居てね。その人は私の愚痴には一切付き合わ
なかった。あなたよりも偉い人だったからなのかもしれないが市民
の私には関係無い事だったので印象はとても悪かったんですよ」
「あぁ、だから私の職業と階級を聞かれたのですね。だったら話が
速いじゃないですか、その刑事の名前を教えて下さい!!」
 求めていた情報かもしれない焦りから、さっきの口約束の内容が
頭から消えて大声を出していた。
「いいや、私は刑事とは、一言も言ってないし、直ぐに教えるとも
行って無いんだよ。君の早合点という事も有るじゃないかっ」
「でも、私が知っている人の命日の一週間前と重なっているんです。
もし違うなら……」
「時間の無駄と言いたいのかね? 後藤さんはどうも交渉術が苦手
な様だ。欲しい情報を得る為には相手に合わせなきゃ得られる物も
得られなくなってしまう時だってあるんだよ」
「では私にどうしろと?」
 ハンカチで額の汗を拭う後藤。
「黙って私が話をしたくなるまで待つんだよ。主導権は私にある。
嫌なら帰って貰っても構わないんだ」
「それってズルくないですかー」
「大人は、時としてズル賢くなるものなんだよ。君の鼻先に人参を
ぶら下げる事は私の大切な時間を過ごす為でもある」
 後藤は刑事が元教師に追い詰められている姿を第三者に観られず
に済んだので正直ほっとしていた。

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