Coffee Break

Pomu

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メビウスの約束

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それから数年、俺の耳には高梨が留学しただの結婚しただのと噂は聞こえていたが、実際のことは、何も知らなかった。

そして更に数年が経ち、俺は別の学校へ転勤になり、流れていく日々の中で煙草の銘柄を変え、あの日のことを、あの頃のことを、無理やり記憶の奥底に埋めた。



それでもまだ想いだけはこの胸の中で燻っているのだから、本当にどうしようもない。

煙草の香り一つで、まだこんなにも鮮明に、あの日のことを思い出せる。







グラスに残っていた酒を煽った。

少し、酔ってきた気がする。

今日はもう少し、飲んでいこうか。

こんな気分じゃまだ、独りの家には帰れない。





もう一杯、同じものを注文しようとした時、背後に人が立つ気配がした。

あの煙草の香りが、さっきより近くなっている。

振り返ろうとしたその時、柔らかな、男の声がこう言った。







『…あの時の約束、覚えてる?』







振り返ると、その男の顔には、忘れることなんて出来るはずもなかった面影が、確かに残っていた。





名前を呼ぶと、きっと涙が溢れてしまう。

想いが、溢れてしまう。







『………高梨』







幸せで、幸せで、笑った。





懐かしい煙草の香りに包まれて、俺は、泣きながら笑った。





それが、俺と高梨の始まりだった。










………END.
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