愛の在り処を求めて

天照てんてる

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第35話 初めて出会った場所

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 網谷さんにハートを送ったあと、特に返事がないままの金曜夜の配信の通知が届く。
 どんな態度を取ればいいのかわからないまま、ビューワーを開く。

「みなさまお久しぶりです! 無事退院できました」

 網谷さんの元気そうな声がして、遅れてコメント欄の読み上げが聞こえてくる。
 ……?
 なにかが、おかしい。

”花ちゃんを出せ!”
”オッサンイラネ”

 明らかに、その声の方が。私は本当に隆二さん……いや、アンブレラさんに申し訳ないことをしてしまったと思った。

 だが彼は笑いながら話す。

「花ちゃんなら、自分のチャンネルを作りましたよ。『花ちゃんねる』で検索してください、とても可愛い、とても優しい、僕の花ちゃんの姿を、みなさまにも是非見ていただきたいと思います」

 イヤだ、恥ずかしい。”可愛い”や”優しい”ならただの惚気にも聞こえるけれど、まさかだなんて、そんなことを言われてしまっては、コメントも打てないじゃない……。

「花ちゃん。いますか?」優しい声が聞こえる。

 私はに初めてLINEを送った日とはまた違う感覚の震える指で、「ノ」とだけ入力し、コメントを送信した。

「月曜日に約束した話だけど。……やっぱり、明日でもいいかな?」土日の人混みが心配だと言っていたのに、どうして?

「リスナーのみなさま、初めてのデートの最中に入院が決まってしまった僕は、改めて月曜日にデートの約束をしてたんですよ。でも、申し訳ない! 僕は明日、ひ……違う! 花ちゃんに会いたくて」彼も私の本名を呼ぼうとしてしまったようだ、私は微笑んでいた。

「何なら今すぐ配信を終えて会いに行きたいくらいの気持ちでいっぱいで、ソワソワしていて、でもLINEでは言い出せなくて。だからってこんな公衆の面前で言うな、って話ではあるんですけどね、でも、ここで言いたかったんです。花ちゃんが”名無しさん”から”花ちゃん”になった、ここで」

 そうか、私たちは、『ここ』で出会ったんだった。土砂降りの雨の中ではなく、で。

 私は恥ずかしさのあまり普段の文章が打てず「主、明日、りょ!」とだけコメントして、その日はずっと彼の惚気話を、頬が熱くなるのを感じながら、4時間近く聞いていた。
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