愛の在り処を求めて

天照てんてる

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第37話 挨拶

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 私は、もう通い慣れたラムールへの道を、走りたい気持ちを我慢して、早足で歩く。運動不足で、息が上がる。ラムールの前に着いたとき、腕時計を触ると、短針は10の手前、長針は8の手前を示していた。……これくらいの遅刻なら、なんとでも言い訳はできるな、と思い、スロープをのぼる。

 自動ドアの開く音。マスターの明るい声。隆二さんの嬉しそうな声。

「ひかりちゃん、遅刻!」
「花ちゃん、待ってたよ。今日の服、一段と可愛いね!」
「えっと……アンブレラさん? 言いにくいな……えっと。お待たせしてすみません、服を選んでいたんですよ」整わない息のまま、言ってしまった。
「花ちゃん、そんなに急いで来なくてもよかったのに」隆二さんは笑う。隆二さんの笑顔を見ることができたら、どんなに幸せなことだろう……。

 開店の9時半から、閉店の19時まで、私たち3人はとりとめもない話をずっと続けていた。

 ***

 帰り道。

「花……いや、ひかりちゃん。家まで送らせてもらえる、かな?」
「……! でも、家には両親が……」
「ご両親に、挨拶しておきたいんだよ。だってひかりちゃん、言ったじゃないか。”あなたの残りの時間を全部私にください”って。あれ、プロポーズじゃないの?」

 そんなつもりで言ったわけではない。思わず口をついて出た言葉なだけだ。とはいえ、こんなに嬉しそうな隆二さんに、違いますだなんて、言えるわけがない。

「あっ……そうなりますね……」私はとても小さくてとても大きな嘘をついた。罪悪感で胸がいっぱいになっていた。
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