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逆さ山《さかさやま》
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こうして三つの大木に三人の仙人が住むようになったのです。
時の仙人は、キヌウの木の洞で、あらゆる世界のあらゆる出来事をすべて憶えていきました。
業の仙人は、ギョウの木の洞で、あらゆる世界から材料を集めて、あらゆる「もの」を作り出していきました。
死と生の仙人は、アスの木の洞で、あらゆる世界のあらゆる「もの」が壊れるさまと作り出されるさまを見守っていました。
業の仙人の作り出す「もの」の力によって、世界は繁栄していきました。
三つの大木も、世界の繁栄と共に大きくなっていきました。
草木、虫、魚、獣、そして、人。
様々な世界が繁栄していきました。
その中でも、人は、業の仙人の作り出した「もの」をまねて自分たちで作り出したり、工夫を加えて、新しい「もの」を作りました。
人の世界はひときわ繁栄しました。
人がたくさんの「もの」を作り出すにつれて、それらは、他の世界にも力を及ぼすようになりました。
人が自分の力で草木を切り、虫を追い、魚、獣を捕らえていた頃とは違い、「もの」の力はとても強かったのです。
「もの」を使って草木を切れば、草木は根こそぎなくなりました。
「もの」を使って虫を追えば、虫はすべて息絶えました。
「もの」を使って魚、獣を捕らえれば、親も子もなく、すべてを捕らえてしまうのでした。
人の世界は、他の世界を壊しながらますます繁栄していきました。
三つの大木も、さらに大きくなり、とうとう天にたどりつかんばかりとなったとき、雷が落ちたのでした。
燃えさかるキヌウの木の洞で、時の仙人は、このありさまを仔細に憶えていきました。
燃えさかるギョウの木の洞で、業の仙人は、自らが作り出した「もの」を、ひとつ、ひとつ、壊していきました。
燃えさかるアスの木の洞で、死と生の仙人は、「もの」が壊れていくさまと三つの大木が壊れていくさまを見守っていました。
三人の仙人は、七夜と半の間、憶え、壊し、見守り続けました。
そうして、すっかり、業の仙人が「もの」を壊しつくしてしまうと、死と生の仙人がアスの木の洞から身をあらわしました。
死と生の仙人は、大百足を呼び、その背にのって燃えさかるアスの木のてっぺんに上ると、三滴の唾を吐き出しました。
三滴の唾が三つの大木にかかるや、大木は石に変わっていきました。
八夜目にして、三つの大木の花、実、葉、枝、幹、根、すべてが黒々と光る石に変わったとき、ようやく炎は消えました。
この時、あらゆる世界は、時の仙人が憶えているもっとも古いありさまに戻っていたのでした。
三人の仙人は、三つの大木が石に変わり、逆さ山となった今も多知火島に住んでいます。
時の仙人は、今でも、あらゆる世界のあらゆる出来事をすべて憶えています。
死と生の仙人は、今でも、あらゆる世界のあらゆる「もの」が壊れるさまと作り出されるさまを見守っています。
業の仙人だけは「もの」を作り出すことをやめ、時折、人の作り出した「もの」を壊してまわるようになりました。
そのため、人は、真に新しい「もの」を手にすることができず、不完全な「もの」ばかりを使わねばならなくなったのでした。
いつの日か、業の仙人が再び「もの」を作り出したならば、人の世界は完全なものとなり、人は永遠の安息を得ると言われています。
時の仙人は、キヌウの木の洞で、あらゆる世界のあらゆる出来事をすべて憶えていきました。
業の仙人は、ギョウの木の洞で、あらゆる世界から材料を集めて、あらゆる「もの」を作り出していきました。
死と生の仙人は、アスの木の洞で、あらゆる世界のあらゆる「もの」が壊れるさまと作り出されるさまを見守っていました。
業の仙人の作り出す「もの」の力によって、世界は繁栄していきました。
三つの大木も、世界の繁栄と共に大きくなっていきました。
草木、虫、魚、獣、そして、人。
様々な世界が繁栄していきました。
その中でも、人は、業の仙人の作り出した「もの」をまねて自分たちで作り出したり、工夫を加えて、新しい「もの」を作りました。
人の世界はひときわ繁栄しました。
人がたくさんの「もの」を作り出すにつれて、それらは、他の世界にも力を及ぼすようになりました。
人が自分の力で草木を切り、虫を追い、魚、獣を捕らえていた頃とは違い、「もの」の力はとても強かったのです。
「もの」を使って草木を切れば、草木は根こそぎなくなりました。
「もの」を使って虫を追えば、虫はすべて息絶えました。
「もの」を使って魚、獣を捕らえれば、親も子もなく、すべてを捕らえてしまうのでした。
人の世界は、他の世界を壊しながらますます繁栄していきました。
三つの大木も、さらに大きくなり、とうとう天にたどりつかんばかりとなったとき、雷が落ちたのでした。
燃えさかるキヌウの木の洞で、時の仙人は、このありさまを仔細に憶えていきました。
燃えさかるギョウの木の洞で、業の仙人は、自らが作り出した「もの」を、ひとつ、ひとつ、壊していきました。
燃えさかるアスの木の洞で、死と生の仙人は、「もの」が壊れていくさまと三つの大木が壊れていくさまを見守っていました。
三人の仙人は、七夜と半の間、憶え、壊し、見守り続けました。
そうして、すっかり、業の仙人が「もの」を壊しつくしてしまうと、死と生の仙人がアスの木の洞から身をあらわしました。
死と生の仙人は、大百足を呼び、その背にのって燃えさかるアスの木のてっぺんに上ると、三滴の唾を吐き出しました。
三滴の唾が三つの大木にかかるや、大木は石に変わっていきました。
八夜目にして、三つの大木の花、実、葉、枝、幹、根、すべてが黒々と光る石に変わったとき、ようやく炎は消えました。
この時、あらゆる世界は、時の仙人が憶えているもっとも古いありさまに戻っていたのでした。
三人の仙人は、三つの大木が石に変わり、逆さ山となった今も多知火島に住んでいます。
時の仙人は、今でも、あらゆる世界のあらゆる出来事をすべて憶えています。
死と生の仙人は、今でも、あらゆる世界のあらゆる「もの」が壊れるさまと作り出されるさまを見守っています。
業の仙人だけは「もの」を作り出すことをやめ、時折、人の作り出した「もの」を壊してまわるようになりました。
そのため、人は、真に新しい「もの」を手にすることができず、不完全な「もの」ばかりを使わねばならなくなったのでした。
いつの日か、業の仙人が再び「もの」を作り出したならば、人の世界は完全なものとなり、人は永遠の安息を得ると言われています。
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