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ヤマタノオロチの姫と皇子

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ヤマタノオロチの姫と皇子

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・そう・・・
あれは 単に求めあっていただけ
愛と言うには
ずいぶん身勝手で・・・
気が合わぬ時は皇子をなじり・・
へこませていたが自分がさびしく
なると皇子にり寄って甘えて
みたり・・又、気分が変わる
と皇子にきつく接していた。
仕方が無い・・・なぜなら一人
で生きて来たからだ。
父も母も知らん・・兄弟も親類
もいない。私には何にも無い。
無い無いづくしの洞窟ぐらし!
だから、
私には協調性なんか無い!

そんな私の青春の思い出。

私は、暗い洞窟のなかで
生きて来た
そこに太陽のもとで日に焼けた
せっぽちの青年が現れた。 
冒険ばかりを夢見て 皇子おうじという
立場もわきまえず

無茶ばかりの旅をしていたこの国
の第三皇子と出会った。

こいつは皇子といっても・・
別口べつくちだった・・・
なにもかも・・開けっ広げで
目の前の会話相手に駆け引きなど
意味は無し!!
ただただ・・・思った事を・・
口にする皇子だった・・・


たいして・・
私は洞窟の中・・・太陽の光を
避けるように暗闇の中に居た。

なぜなら・・私はヤマタノオロチ
の転生だからだ。
だから洞窟に住み、いつもひとり
だった。

私の身体はヒトとよく似たカタチ
になって転生した。昔の超竜体ちょうりゅうたい
では無い。首もひとつだ。

だが、ヒトと違う部分もある。
爪やキバ、そして身体の一部
には ウロコ・・・

だから

人間と会う事はけて居た。
避けて居たのに・・・・・・・

そうだ!あの時、洞窟でひとり
私は肉を焼きらっていた。
そこへ若い人間の青年が立ち入り 
目が合った。

すぐに青年を(ヤマタノオロチ)
のカタキの(血筋)と感じた。
私は立ちあがりたたかいの始まりを
覚悟した。

やはりこの青年は・・・
カタキの血筋・・この国の
第三皇子と言う事だった
だが!皇子は
目を丸くしてほうけていた。

私の美しさに見惚みほれていたと
いうのだ。

私が美しい?考えたことも
無かった。
美しいという事に価値など
感じた事も無かった。

だが・・・皇子が言うには

「切れ長の大きい瞳は半獣半人
・・・赤く輝く瞳の瞳孔どうこうたて 
更に美しい白色の痩躯そうく
へこんだ腹に長い手足・ 
肩と背中には ベリル
(訳・アクアマリン)と同じ
(淡い青色)の透明で
薄くしなやかなウロコ・・・

それは 色白の美しい姫を
更に高貴に感じさせる天然の
プロテクター。
美しいウロコは他にも 
二の腕の外側から細く伸びて
(ひじ)、足の(くるぶし)から
(ふくらはぎ)のサイドを
細く伸びて(ひざ)
そして姫を正面から見た時・・・
姫の大事なデルタゾーンに申し訳
程度にアクアマリンのウロコが
輝いて とてもセクシー」だと。

何を言ってるんだか・・・
あのバキャ皇子(ポッ)

だが私はこう言った。

「用が無いならたちされ!
それとも、ワシと一戦 
あいまみえる覚悟か!おまえでは・
・無理だ!命が惜しくば帰れ!」

すると皇子は

「あなたの張りのある声 
美しいスタイル 
気のキツイ性格 
何よりも大きく赤い瞳に
魅了されてしまいました」
と言う。

まったく話が嚙み合わない
・・・何を言っても私の美しい
部分を指摘してきしてくる(ポッ)
あのバキャ皇子。

私は戦う気の無い皇子にあきれて
何も答える事が出来ないまま
だったが やがて皇子は 
すごすごとその場を離れ
帰っていった。

だがそれから三日もたたずに
皇子はやってきた。

「姫っ姫っ!ウサギをつかまえた
!今、ったトコだ!姫っ!
私が弓で射抜いた!」と
叫んでいた。

私は顔を見せてやらんかった。
ずっとイワカゲでかくれて
息をひそめた。
するとアキラメの悪い皇子は

「どうして?合ってくれないんだ
?・・・わかった!ウサギが一羽
だからだ!二羽?三羽だ!
三羽つかまえて持ってこよう!」

などと ひとりでさわいで 
帰っていった。

そして、翌日!
「ひめぇぇぇ!先日の私です!
今日はウサギを三羽捕まえて
きましたぁぁぁ!どうぞ
お召し上がり下さ~い・・・
今回は弓では無くわなを仕掛けて
つかまえましたぁ!
だから無傷むきずですよ~!」と、

言いながら、一羽いちわの首をポキッと
折りしめた。
しめたての美味おいしいウサギですよ
~生き血も新鮮ですよ~・・・
今日もお顔を見せてくれない
のですか・・・だが!あきら
ませんよっ!
次はウサギを五羽捕ごわつかまえて
きま~~す」と言った!

私はたまらず
「ちょっと!待ったぁぁぁ!
な~ぜ?五羽なんだ!貴様ぁ!
ウサギを乱獲らんかくするでな~い!」

「えっ!でも・・・ウサギを
食べるんじゃ・・・乱獲って
どういう意味ですか?」

「貴様っ!バカか!無茶苦茶
ウサギを取るで無い!
可哀そうと思わんのか!チッ!
簡単に〆やがって!!」


「でも・食べるんでしょ・・・」

「・・・・・・喰うには喰うが
・・週に二羽もあれば充分だ!
誠に人間は罠など思いついて
太刀たちの悪い生き物だ!」

「でも・・カゴに入れて置けば
新鮮なウサギがいつでも食べれる
じゃないですか?」

「だから、人間は好かん!ろうせず
いつもそなえバカリしておる!
喰いたい時に出陣して捕まえれば
良い事だっ!」

「あっ!姫っ!姫はやはり、
自身で獲物を捕まえてさばいて
食べるのですか?」

「あったりまえっだぁぁ!だれが
調理してくれると言うんだぁぁぁ!
つかまえて、爪でばらして、
火であぶって喰う!それだけだ!」

「ではっ!今日は今、〆たウサギ
を私が調理します!
私は常に塩や油、グルタミン
その他を持っております。
今日は私と食事をお願いします」

私はめんどくさい奴に 
からまれてしまった。
首をかたむけながら半眼はんがんで皇子を
にらんでみたが、
「僕を見てくれた!」と・・
皇子はニコニコして喜ぶだけ・・
まったく・・・あきれて・・
ため息・・しか出なかった。

皇子は(自分も冒険者のはしくれ)
とバカリに、ウサギの喉笛のどぶえ
短刀たんとうで切り逆ささかさにして血を竹製たけせい
のコップに流し入れてから、

毛皮を剥ぎ、
前足と後足を切り離し 
腹を裂いて内臓を取り出し 
肋骨ろっこつはずして 調味料と
オリーブオイルでマリネード
なる下調理をした。

マリネードをしてる間、
先ほどの竹製のコップに
注いだ血に少々のお酒を入れて
私に渡した。

「なんだぁっ!これはぁ!
毒では無いだろうなぁ!」
と言ったら
「では私が先にひとくち・・・
うんめぇ!」と皇子は言った。

「はぁ~~・・・??
コレを飲めば良いのか?」
私はコップを手に取り、皇子と
一瞬たりとも 視線を外さずに
コップにクチに近づけ
匂いを嗅いだ・・・ビミョーな
香りだ・・・

クチに含んでみた。
クチの中でクチュクチュと味を
確かめてからゴックンしてみた。

「なんだぁっ!コレは!!・・
コレがうわさに聞く酒か!我が父・
ヤマタノオロチが
ハマってしまい、どえらい事に
なってしまったアレかぁっ!
貴様っ!やはり!ワラワの命を
取りに来たのかっ!」

「イエイエイエイエイエ・・・
お父上の場合・・
こんなコップ酒では無く、
もっと!もっと!大きなカメを
いくつもがぶ飲みしたらしいので
大丈夫ですよ!これくらい・・」

「ほんとかぁ!マコトだろうな!
まぁ・・・美味うまいモンだな・・
酒とやらは・・・」

皇子は「ボチボチいいかな?うん、
これで大丈夫か・・」と姫が焚火たきび
をしていた場所の上下に小さな石
をいくつも置いて その上に

横幅5センチ、縦30センチの
薄手の鉄板を5枚 横に並べて
置いた その上に油を引いて
なじませ熱しった頃に

ウサギの肉を短刀でぶつ切りに
して焼いた。

私は思わずゴクリとのどを鳴らし
てしまった。
こうばしくもはなやかな
オリーブオイルの香りや 
コショーなる香辛料の香りも
初めて・・・いや・・・違う
・・・他人に料理を作って
もらうのが・・・初めての経験
だった・・・

「まだですよ~片面を焼いて
から、少し火を外して休ませる
のがコツですよ~」

「なんだぁっ!それは!
休ませるっ!てなんだぁっ!」
「イッキに焼くとお肉は固くなる
のでじっくりと中に火を通すん
ですよ。」

「う~む・・よくワカランが待つ
のだな!」
「・・ハイッ!裏もちょうど良い
焼き加減になりました・・・
はいっどうぞ!」

「ふんっ!モグモグモグ!
なんだぁっ!こりゃ!これが
いつものウサギなのか!
やわらかくて深い味わい・・・
これが料理なのか!」

「あ~~~姫のオクチに合って
良かった!まずかったら
私が姫に〆られるトコでした!」

「フン!誰もそこまではセン!
とは言え・・・
人間は肉を焼くだけの事に
(こんなに回りくどい)料理なる
ものをするのか?」

「それは・・・焼くだけのヒトも
おるでしょうが・・・家族や子供
・・そして好きなヒトの喜ぶ顔が
見たいので美味しい料理を造るの
です。
私は今、姫が喜ぶ顔が見れて
幸せな気持ちです。」

「ニャニオゥ!バキャモノゥ!
私は喜んでにゃどおらん!ただ、
美味いとは思っちゃけど!!
あとは自分で出来る!これで気が
済んだれゃ!もう帰れ!」

「姫!今日はたくさん、お話し
してくれましたね!また
来ますね!」

「うっさいっ!もう来んな!」

「次は 姫が怒るから・うさぎは
やめて・・・肉の燻製くんせいを持って
来ますね!
サクラのチップでいぶした燻製くんせい
最高ですよ!じゃ!また。」

「聞いてないのか!
もう来るんじゃな~~~い!」

「姫っ!姫っ!姫が私をイヤ
でも私は大好きですよ!
スキスキの大好きっ!!」

「バキャか!おまえ!ワタチの
事など なにもチらんくせに!」

「もう色々 知ってるしぃ~!
・・・まず!姫のルックス最高に
スキです。優しいトコロも!
じゃ!また来ますねっ!」

「チッ!・・・なにがルックスだ
・・・バキャ野郎・・・」

私は瞳だけでなく 頬も真っ赤に
なってるのを感じた。「・・・
スキですって・・ニャンだ??」

翌日、皇子が又・・・来た。 
気分は乗らないが・・・
とりあえず出迎えた。
こちらはヒト付き合いなど
したことが無いので
無視したいが、皇子は 
それを許さない!
こちらが無視を決め込んでも
返事をするまでしつこく
話しかけてくる!

私だって人間に対する不信感
がある・・・なぜなら 
親を殺されている・・・。

大きく言って通常の生き物と
違うヤマタノオロチとは言え 
親は親だ。何百年・何千年 
たとうが、この星の知的生命体は
ヤマタノオロチと人間の
二種だけだ。

そしてしゅが違うとは言え、
我が親は殺された・・・人間に。
だが親が死んで何百年も立つのに
私は生まれた・・・
だから・・・会った事は無いが
何百年も後に私は生まれた。
ヤマタノオロチと人間の
ハイブリッドとして・・・
しかも身体はオンナだ・・・

皇子は言う・・・

私は姫が大好きだ!
気がキツイのも当たり前・・・
あの!
ヤマタノオロチの姫なのだから・・・

人間不信も当たり前
ヤマタノオロチと人間は
敵対していたのだから

だけど、人間とはちがう文化で
育った異種族いしゅぞくの姫はどこか
神々こうごうしく、はかなげで
守ってあげたくなる・・・と。

戦闘力は僕より全然・・・
強いのだろうけど・・・・
大好きです。と・・・

とにかく あきらめの
悪い皇子と私の逢瀬おうせ
半年以上 続いてしまった。

皇子は洞窟にうかがうたびに 
ミヤゲを持って来た。
肉のひもの さかなのひもの
酒やコメ ソバ などの食料以外
にも
調味料・香辛料こうしんりょう ナベや食器 
なども持ってきた。

私はそのつど
「人間の文化は好かん!」
と怒るのだが 
しつこい皇子は実演販売
よろしく調理をして・・・

「なかなか良い物ではないか!」
と ついつい私も納得して
しまう・・・こまった皇子だ・
・・

たとえば!酒を持ってきた時
・・・「ちっ!酒か?私を
酔わせてどうする気だぁ!」
と 怒ってみるものの

皇子が「前に持って来た 
魚の干物ひものあぶりながら、酒を飲む
ととても美味しいのです。」と、
言いやがる!

「ちっ!また!人間の文化か?
・・・まぁ良い・・・やってみろ
・・・」

そして、やはり!
「うっ!美味うまいではないか・・・
酒に合う!・・おまえも飲めヤレ!」
とこんな調子になる。

しかし、ある冬の 吹雪の中、
やって来た皇子は風邪かぜをこじらせ
ていて・・・真っ赤な顔で足元を
ふらつかせながら
洞窟どうくつにたどり着いたが・・・
私を見た途端に意識を無くして
しまった・・・・

三日三晩・・・熱い身体で意識の
無い皇子を私は・・・私の冷たい
身体で抱きつづけた。
やがて・・・熱も下がりはじめて
・・・

(アレッ・・・う~~ん・・・
パチパチッと
木がはぜる音がする・・・
あ~~背中があたたかい・・・
うん・・なんだ?前のほうの
柔らかい・・この感触は・・・・)

・・・皇子の背中側には焚火が・・
・そして皇子の正面には私が添い寝
して冷やしていた。

熱も随分ずいぶん下がり・・・それは良いが
皇子は・・・そにょ・・・私の胸を
ワシヅカミして・・・モミモミを
繰り返し・・

そにょ・・そにょ・・・これで・・
皇子が元気になるにゃら・・・
それもいいかにゃ・・みたいにゃ。

「はっ!」と目を覚ました 
皇子は胸をワシヅカミしていた
事に気づいて手を引っ込めようと
したが 私は反射的に皇子の
両手首を強く握り 手はそのまま
両胸に張り付いた形で残って
しまった・・・

「バッ!バカヤリョウ!何日も
眠ってちまって!もう!起きん
かもちれないと!・・・
ちゃびちかったんだじょ!・・
もうちょっと!強くにゃりやがれ!」

私はここに来て自身がデレる体質
と言う事を悟った・・のだった。

「やっぱり姫は、俺に!
どストライクだっ!」皇子は急に
色んな部分が元気ハツラツとなり
・・・・
この夜・・・ついに私と皇子は
男女の仲になった・・・

それからの私は皇子のことばかり
おもうようになってしまった・・

ココロの中は皇子バッカリ・・・
だけど、デレる自分が恥ずかしい 
なんでこんな事になったのか?

皇子は「俺に!どストライクだっ!」
なんて言ったが・・・
ホントだろうか・・・

私の出自は人類の敵やも知れん
(ヤマタノオロチの姫)だ。
たぶん皇子はそこもって私に
興味を持ち この洞窟に通った
のでは無いか?その女が実は
・・・デレだった・・・それが
ドストライク?うむ!無い。
それは無い。

私は今まで・・クールな
ヤマタノオロチの姫だった。
しかし・・・デレがバレル
のが嫌であまり話さないように
していった。

皇子は「姫っ!姫は最近、無口
になりましたが・・・どうか?
しましたか?」

「うるさい!おまえが話しすぎ
なんだ!」と答えるのが
(いっぱいいっぱい)で・・・

でも・・・ほんとうはもっと
いっぱいお話しをちてほちい・
・・のでちゅ。

だけど・・・クールを
ヨソオイ過ぎて嫌われて
しまったら・・・どうちよう?

などとダンダンめんどくちゃい
女になってちまいまちた・・・
気がするのでちゅ・・・。

そんな事がココロの中を
占めていた私に皇子は
「ヒトのみやこに行ってみませんか
?」とさそって来た。

以前の私なら(けんもほろろ)
ことわっていただろう・・・
しかし(皇子がさそってくれた!)
こんな気持ち・・・

胸の奥の・・・
その奥のほうに軽い痛みと共に
みこんでくる
甘くて酸っぱいこの感じ・・・
いったいなんなのだ?

「姫っ!しんぱいご無用です!
ジャクハイモノの俺ですが
れてもこの国の
皇子のひとりっ!姫と生活する
屋敷やしきを大阪のみやこに建てて、
様々なグルメ三昧ざんまいして
暮らすぐらいの事は約束します
!さぁヒトの都 大阪?に!!


ヤマタノオロチの姫と皇子・1・終


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