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忍びの里
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隠れていた木の枝から
「バサリッ」と降りて来た、
この御世話係の名はツグミ丸と
言う。当然、本名では無い。
御世話係はヒトだった頃の名は
返上するのが習わしだ。
つまり彼らは(ヒトに非ず)と
言う事は肝に銘じていた。
しかし・・・抑えきれない
感情もある・・・
ツグミ丸は、
コリス丸を可愛がっていた。
初めての出会いを思い出して
いた。
それは第三皇子の世話係に
選ばれた日の事。
我々は
親・兄弟に縁の無かった者達の
集まりだ。
幼い時はひもじさに負けて
盗みや、かっぱらいは当たり前
10歳で押し込み強盗に手を
つけた奴も多い・・・
しかし・・・所詮は子供・・・
プロの取り締まりに掛かると
「あっ!」と、いう間にお縄に
なった。(意味・捕まる事)
しかし・・・年端もいかない
子供を島送りにしても
食い扶持が増えるだけで
たいして、
肉体労働の役にも立たない。
そこで・・・ある山間の里で
手クセの悪い子供を
育てる特殊機関の里があった。
そこでは、
只々・・国の為・・になる
人材育成が目的だった。
みんな親がいないセイで
盗みをはじめ、詐欺等の犯罪に
手を染めた
後ろめたい過去を持つ子供ばかり
・・・
しかし・・・この里では・・
メシを食わせてくれた。
そして、
最初は行儀作法を徹底的に
そして、
読み書きを教育された。
そして日々・・・
年齢・身長・体重から始まり、
様々な体力を計測された。
ツグミ丸は
「基本的に狂暴な野良犬の様な
俺たちが「はい。そうですか!」
と勉強するはずも無いが
メシにつられて段々と
おとなしくなっていった。」
しかし、
数週間も里にいると「あれっ?」
と気づく事がある。
同期と言って良いのか?
同じ頃に
ここに連れてこられた奴が
数人減っていた?俺は
「アイツとアイツとアイツ・
・・がいない?」
思い返せば里の教師に酷い悪態を
ついていた連中、もしくは
体力的にドンクサイ奴が
居なくなってた。
「出て行ったのか?
勉強ばかりさせられるのがイヤ
だったのか?
寝床とメシを食わしてくれるのに
バカな奴らだ・・・」
その時・・・
バカな俺はそう思った。
この特殊機関の里はそんなに、
甘く無かった。
一度、この里に足を踏み入れた者
は絶対的な服従を示さない限り、
生きて里を出る事は無い。
まかり間違っても無い。
それが絶対の掟だ。
絶対と言う言葉は一か零
もしくは生か死か!
それ以外の曖昧な判断は
無い世界・・・
それが解ったのは他にも数人いた
反抗的な態度やドンクサイ同期が
全て消えて
しばらくした頃、里の教師が
「今日は特殊教室での授業だっ!
ついて来なさい!」といった。
我々はこの里に来て半年ほど
経ったとは言え新入り集団だ。
上には5学年あるようだった。
やっと基本的な礼儀作法と初歩の
読み書きが出来るようになった
20人ほどが、里の北側にある
いつも山や木々の陰になった
薄暗いお堂・・・それは
山に張り付く様に建立された
陰気なお堂だった・・・
そこへ我々、新入りは粛々と
歩いて向かった。
お堂の大きな入り口に到着すると
・・・教師が、
「おまえ達っ!今日の授業は人の
身体がどうなっているか?
それを徹底的にやるっ!
これから3日間っ!このお堂から
外出は出来ん!徹底的に
人体がなぜ?
動くか?勉強するのだっ!」
と教師はいった。
我々、生徒はお堂に入り・・・
顔面が固まった・・・
お堂の中には10人の教師達と
10体のムクロが横たわっていた。
灰色になったムクロは皆、
裸だった。男も女もいた。
良く見ると同期で入って来た連中
たちだった。
合計10人の子供のムクロが上を
見て固まっていた。
直ぐに、オレは
(10日以上前にアイツは姿を
消した奴!と気づいたが
もし10日前に死んだなら流石に
腐っているだろう・・なのに・・
ムクロは綺麗なままだ・・・
ムクロの中には3日前に消えた奴
もいる・・・
と・・・言う事は今日の授業の為
少し前まで生かされていたのか?
お堂は山に張り付く形で建てられ
ている。それはどうやら・・・
山の石清水の冷たい清流がお堂の
中に流れ込める設計の様だ・・・
お堂の山寄りの壁には大きな
プールがあり・・・
そこに溜まった冷たい石清水を
大きなヒシャクですくう身体中
包帯だらけの人間?が3人いた。
一定間隔で水をすくいムクロに
・・かけていた・・・)
「さぁ!一体につき、
2人で左右に分かれて共同作業
で人体解剖をしていくっ!
これは貴重な授業なので脳裏に
焼き付けながら行う事っ!
良いか!」
「・・・・はっ!はいっ!」
おれは返事していた。
1つのムクロに一人の教師・・・
そして生徒はムクロを左右で
挟みながら2人。
最初は言われるままに
右側の生徒は右腕の解剖・
左側の生徒は左腕の解剖を
教師の言うまま
カッターナイフで行った・・・
腕の関節・・・指の関節・・・
それを動かす筋肉の状態・・
モノを書く・・モノを掴む・・
モノを投げる・・・
腕の筋肉がどう?緊張したり
収縮したりして腕の運動が
成りたっているのか?
の説明と共に
最初の8時間が終わった。
一時間の休憩が来た。
隣りの部屋で一人に一個の握り飯
と一杯の味噌汁が出た。
身体中に死臭をまとわせながら・
・・皆・・・食べた。
腹が減っていたのだ。
皆・・覚悟を決めていたようだ・
・・
ここで食べずに倒れるとか・
・・
それは次は解剖される側になる事
を・・・
俺も喰った・・・今、解剖して
いる奴とは何度か・会話した事が
ある。
だが・・・アイツはしくじった。
しくじったモノには死あるのみ!
しかし・・・そのムクロは俺たち
が解剖して俺たちの知識の礎に
なる。
決してムクロを無駄にはして
いけないっ!
おまえっ!はオレの知識として
生きていくっ!
俺が生き続ける限りっ!
おまえも俺の中で生き続けるん
だっ!
・・・本当は死臭と、
目に焼き付いた人の革の内側の
情景で腹は減っているが・・・
とても握り飯を口の中に入れる
なんて無理な心持だが・・・
目を深く瞑って
「ソレとコレは違うっ!
喰わなアカンっ!・・・
やられてしまう・・・」
飯の後は8時間かけて足の解剖。
解剖の途中も常に一定の
タイミングで冷たい石清水を
ムクロに掛けていき
ムクロの鮮度を維持している。
再び1時間の食事と休憩の後、
身体の解剖。
解剖の前に代表の教師が講義を
開き図解で説明があり・・・
解剖が始まった。
これは左右の二人に、教師が
共同作業で行うように指導しつつ
人間の内臓のメカニズムを
教えてくれた。
心臓・膵臓・肝臓・腎臓・・・
肺・・胃・小腸・大腸・・・
この身体の解剖は16時間
ぶっ通しで行われた・・・
各臓器の名前・役割・以外にも
有効な毒・攻撃など様々な
観点での高説が続き・・
生徒たちは皆、ふらふらに
なりながらも、
「あ~・・そういう事か・・」や
「なるほどっ!人体はこうなって
いるのか!」等と
目にクマを作りながら徐々に
解剖に慣れていった・・・
恐ろしいモノで身体の解剖後の
休憩時間は、
緊張の坂を上り切ったのか・・・
皆・・・笑顔で握り飯を
ほお張りながら・・・
アソコの臓器はどうだとか!
・・・やはり心臓が全てっ!
で最高だとかっ!
語り合った・・・
今、想えば・・・
肉親のいない俺たちは何か?
を無くして生きて行くしか術は
無かったのだと想う。
最後に残った頭蓋骨の解剖は
生徒も教師も笑顔でこなして
いった。
クチの解剖・ハナの解剖・
メの解剖・・・アゴの下から
脳みそまでを、のこぎりで切削し
内部の構造。
みんな・・・もう、へっちゃらで
解剖していった。
ただ・・・頭蓋骨上部の
脳髄だけは解らない事が
多すぎて、教師達も
「この脳髄こそが・・・恐らく
・・ムクロ達の・・・
いやヒトの本当の姿だ。
我々に人体の仕組みを教えて
くれたムクロ達だが・・・
この部分だけには敬意をもって
接するようにしろっ!
この・・脳みそこそがモノを考え
・・・
嬉しければ腕を振る命令っ!
腹が立てば足を出して蹴る
命令っ!
ムカつけば文句を言う命令!
好きな人に好きっ!
と言う命令!
全てが・・・人の全てがこの脳髄
に潜んでいるっ!
こればっかりは如何に厳しい
この里でもどうにも出来ん!
それを踏まえてみんなっ!
この脳髄に手を合わせて
やってくれっ!」
生徒たちはみんな・・・
厳しい緊張のあまり解剖して
いたのは
最近まで一緒にいた同期達だった
事を忘れていた。
皆が手を合わせながら・・
「ムクロのみんな・・ありがとう
ございます。・・・
決してこの知識、無駄にしません。」
と教師も生徒も泣いた。
これ以降・・・生徒達はある種の
団結心のようなモノが芽生えて
里で何か?問題が起きても全員で
対処するようになっていった。
そして里での授業や訓練の日々も
難度を上げて行きながら
数年の月日が経った・・・
ある種の極みを超えたモノ達は
名前なる者を貰う。
なんとか・・・
俺も「ツグミ丸」と言う名を頂いた。
そんな
ある日の事、里の生徒達に
第三皇子の近衛隊・・・
いわゆる
御世話係の募集が懸かった
これは、
忍びの厳しい修行に耐えた者でも
一際、運動神経が良く
学業も優秀な5人が皇子専属
御世話係になれる。
同期で仲の良い
カワセミ丸とメジロ丸と
アイコンタクトで話をした。
基本的に里では小声で話す様に
躾けられるのだが・・・
何年もそんな事をしていると
目と目で会話が出来るように
なっていた。
それは我々3人だけの秘密のワザ
だった・・・
俺は、
「これって、公明正大に里の外に
出れると言う事か?」と同期の
カワセミ丸に目で問うた。
「ああ・・ツグミ丸・メジロ丸。
あの解剖の日!以来・
里を出るなんて
考えた事も無い俺たちだが・・
今は国に尽くせるダケの実力も
ついたやも知れん
・・・ならば・・・チカラの限り
・・・試したい・・」
そしてメジロ丸と呼ばれた忍びは
「表の世界か・・・行ってみてぇ
・・昔、かっぱらった団子・・
美味かったナァ・・・団子・・
まだ?売ってんかなぁ・・・
なぁ?世話係って手当が出るん
だろっ!」
カワセミ丸は
「以前に第二皇子の世話係に
なったアゲハ丸さんは城に
務める役人より多く貰って
驚いたそうだ・・・」
「えっ!・・・・」
「えっ!・・・マジッすっか?」
「やるしかないかっ!」
「お前らっ!やるのかっ!」
「挑戦しない手は無いっしょ!」
俺達3人は密かにどんな?試験が
出るのか?
今まで培った情報収集力を駆使
していった。
特に
諜報能力に長けた
カワセミ丸は、
里の住人100人以上から誰が
公募に名を連ねてくるか?
かなりっ!克明にあぶりだした。
「ちっ!やっぱり2期上の
忍者カラス丸が出てくるかっ!
あん人つぇ~からなぁ・・・結構
性格・・鬼だし!」
「あの人は無視しよう・・・
変に絡んで碌な事無し・・・
それより俺達3人以外でマーク
しなきゃいけないのは・・・
①コイツと②コイツと③コイツと
④コイツ・・・の4人か!!」
「ふむふむ・・同期2人に、1期上が2人か・・・
と・いう事は同期同志で
組んでたとしても2人づつ。
先輩後輩で組んでるのは
考えにくい・・・」
「よしっ!今日から俺はっ!
おまえ達と距離を置く!」
と俺。
更に、
「そして・・俺はギリギリまで
公募に応募しない。
奴らも諜報活動をしている可能性
がある。
おまえ達は二人組のふりをしとけ
里でのオーディションなんだ!
格闘戦は絶対にアル。
2対2対2とカラス丸。
ペーパーテストが少々ダメでも
格闘戦がダメじゃぁ・・・
世話係は務まらんだろう。」
メジロ丸は、
「解った!ギリギリで応募して
おまえには仲間無しと他チームに
想わせといておまえを狙って
行った連中を俺達が背後から
狙うんだなっ!」
しかし・・・カワセミ丸は、
「まぁ・・それは良いがカラス丸
が心配だっ!アレは何か?が違う
なるべく距離をおこう!
・・・第一皇子の御世話係も
第二皇子の御世話係も楽勝だった
のに、応募しなかった。
なのに・・今回は出てくるようだ
・・・なぜ?だっ!」
メジロ丸は「まぁまぁ・・・
カワセミ丸の言う事も
最もだが・・・今は俺達3人が
選ばれる確率を上げる作戦だ。」
フムッと3人とも頷いた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・
俺は公募には締め切りギリギリで
応募した。
そして試験当日が来た。
学科は予定通り俺とカワセミ丸が
睨んだ通りの試験バカリで
楽勝だった。
そして、
上級忍者が審査員を務める
御世話係選抜実地試験が開始
された。
これに勝って見事、御世話係に
選ばれれば・・・俺達も上級忍者
と言う事だ!
俺は作戦通り囮に徹する。
あとは、カワセミ丸とメジロ丸を
信じて背中は任せるのみ!
絶対に選ばれて里を出てやる!
続く。
「バサリッ」と降りて来た、
この御世話係の名はツグミ丸と
言う。当然、本名では無い。
御世話係はヒトだった頃の名は
返上するのが習わしだ。
つまり彼らは(ヒトに非ず)と
言う事は肝に銘じていた。
しかし・・・抑えきれない
感情もある・・・
ツグミ丸は、
コリス丸を可愛がっていた。
初めての出会いを思い出して
いた。
それは第三皇子の世話係に
選ばれた日の事。
我々は
親・兄弟に縁の無かった者達の
集まりだ。
幼い時はひもじさに負けて
盗みや、かっぱらいは当たり前
10歳で押し込み強盗に手を
つけた奴も多い・・・
しかし・・・所詮は子供・・・
プロの取り締まりに掛かると
「あっ!」と、いう間にお縄に
なった。(意味・捕まる事)
しかし・・・年端もいかない
子供を島送りにしても
食い扶持が増えるだけで
たいして、
肉体労働の役にも立たない。
そこで・・・ある山間の里で
手クセの悪い子供を
育てる特殊機関の里があった。
そこでは、
只々・・国の為・・になる
人材育成が目的だった。
みんな親がいないセイで
盗みをはじめ、詐欺等の犯罪に
手を染めた
後ろめたい過去を持つ子供ばかり
・・・
しかし・・・この里では・・
メシを食わせてくれた。
そして、
最初は行儀作法を徹底的に
そして、
読み書きを教育された。
そして日々・・・
年齢・身長・体重から始まり、
様々な体力を計測された。
ツグミ丸は
「基本的に狂暴な野良犬の様な
俺たちが「はい。そうですか!」
と勉強するはずも無いが
メシにつられて段々と
おとなしくなっていった。」
しかし、
数週間も里にいると「あれっ?」
と気づく事がある。
同期と言って良いのか?
同じ頃に
ここに連れてこられた奴が
数人減っていた?俺は
「アイツとアイツとアイツ・
・・がいない?」
思い返せば里の教師に酷い悪態を
ついていた連中、もしくは
体力的にドンクサイ奴が
居なくなってた。
「出て行ったのか?
勉強ばかりさせられるのがイヤ
だったのか?
寝床とメシを食わしてくれるのに
バカな奴らだ・・・」
その時・・・
バカな俺はそう思った。
この特殊機関の里はそんなに、
甘く無かった。
一度、この里に足を踏み入れた者
は絶対的な服従を示さない限り、
生きて里を出る事は無い。
まかり間違っても無い。
それが絶対の掟だ。
絶対と言う言葉は一か零
もしくは生か死か!
それ以外の曖昧な判断は
無い世界・・・
それが解ったのは他にも数人いた
反抗的な態度やドンクサイ同期が
全て消えて
しばらくした頃、里の教師が
「今日は特殊教室での授業だっ!
ついて来なさい!」といった。
我々はこの里に来て半年ほど
経ったとは言え新入り集団だ。
上には5学年あるようだった。
やっと基本的な礼儀作法と初歩の
読み書きが出来るようになった
20人ほどが、里の北側にある
いつも山や木々の陰になった
薄暗いお堂・・・それは
山に張り付く様に建立された
陰気なお堂だった・・・
そこへ我々、新入りは粛々と
歩いて向かった。
お堂の大きな入り口に到着すると
・・・教師が、
「おまえ達っ!今日の授業は人の
身体がどうなっているか?
それを徹底的にやるっ!
これから3日間っ!このお堂から
外出は出来ん!徹底的に
人体がなぜ?
動くか?勉強するのだっ!」
と教師はいった。
我々、生徒はお堂に入り・・・
顔面が固まった・・・
お堂の中には10人の教師達と
10体のムクロが横たわっていた。
灰色になったムクロは皆、
裸だった。男も女もいた。
良く見ると同期で入って来た連中
たちだった。
合計10人の子供のムクロが上を
見て固まっていた。
直ぐに、オレは
(10日以上前にアイツは姿を
消した奴!と気づいたが
もし10日前に死んだなら流石に
腐っているだろう・・なのに・・
ムクロは綺麗なままだ・・・
ムクロの中には3日前に消えた奴
もいる・・・
と・・・言う事は今日の授業の為
少し前まで生かされていたのか?
お堂は山に張り付く形で建てられ
ている。それはどうやら・・・
山の石清水の冷たい清流がお堂の
中に流れ込める設計の様だ・・・
お堂の山寄りの壁には大きな
プールがあり・・・
そこに溜まった冷たい石清水を
大きなヒシャクですくう身体中
包帯だらけの人間?が3人いた。
一定間隔で水をすくいムクロに
・・かけていた・・・)
「さぁ!一体につき、
2人で左右に分かれて共同作業
で人体解剖をしていくっ!
これは貴重な授業なので脳裏に
焼き付けながら行う事っ!
良いか!」
「・・・・はっ!はいっ!」
おれは返事していた。
1つのムクロに一人の教師・・・
そして生徒はムクロを左右で
挟みながら2人。
最初は言われるままに
右側の生徒は右腕の解剖・
左側の生徒は左腕の解剖を
教師の言うまま
カッターナイフで行った・・・
腕の関節・・・指の関節・・・
それを動かす筋肉の状態・・
モノを書く・・モノを掴む・・
モノを投げる・・・
腕の筋肉がどう?緊張したり
収縮したりして腕の運動が
成りたっているのか?
の説明と共に
最初の8時間が終わった。
一時間の休憩が来た。
隣りの部屋で一人に一個の握り飯
と一杯の味噌汁が出た。
身体中に死臭をまとわせながら・
・・皆・・・食べた。
腹が減っていたのだ。
皆・・覚悟を決めていたようだ・
・・
ここで食べずに倒れるとか・
・・
それは次は解剖される側になる事
を・・・
俺も喰った・・・今、解剖して
いる奴とは何度か・会話した事が
ある。
だが・・・アイツはしくじった。
しくじったモノには死あるのみ!
しかし・・・そのムクロは俺たち
が解剖して俺たちの知識の礎に
なる。
決してムクロを無駄にはして
いけないっ!
おまえっ!はオレの知識として
生きていくっ!
俺が生き続ける限りっ!
おまえも俺の中で生き続けるん
だっ!
・・・本当は死臭と、
目に焼き付いた人の革の内側の
情景で腹は減っているが・・・
とても握り飯を口の中に入れる
なんて無理な心持だが・・・
目を深く瞑って
「ソレとコレは違うっ!
喰わなアカンっ!・・・
やられてしまう・・・」
飯の後は8時間かけて足の解剖。
解剖の途中も常に一定の
タイミングで冷たい石清水を
ムクロに掛けていき
ムクロの鮮度を維持している。
再び1時間の食事と休憩の後、
身体の解剖。
解剖の前に代表の教師が講義を
開き図解で説明があり・・・
解剖が始まった。
これは左右の二人に、教師が
共同作業で行うように指導しつつ
人間の内臓のメカニズムを
教えてくれた。
心臓・膵臓・肝臓・腎臓・・・
肺・・胃・小腸・大腸・・・
この身体の解剖は16時間
ぶっ通しで行われた・・・
各臓器の名前・役割・以外にも
有効な毒・攻撃など様々な
観点での高説が続き・・
生徒たちは皆、ふらふらに
なりながらも、
「あ~・・そういう事か・・」や
「なるほどっ!人体はこうなって
いるのか!」等と
目にクマを作りながら徐々に
解剖に慣れていった・・・
恐ろしいモノで身体の解剖後の
休憩時間は、
緊張の坂を上り切ったのか・・・
皆・・・笑顔で握り飯を
ほお張りながら・・・
アソコの臓器はどうだとか!
・・・やはり心臓が全てっ!
で最高だとかっ!
語り合った・・・
今、想えば・・・
肉親のいない俺たちは何か?
を無くして生きて行くしか術は
無かったのだと想う。
最後に残った頭蓋骨の解剖は
生徒も教師も笑顔でこなして
いった。
クチの解剖・ハナの解剖・
メの解剖・・・アゴの下から
脳みそまでを、のこぎりで切削し
内部の構造。
みんな・・・もう、へっちゃらで
解剖していった。
ただ・・・頭蓋骨上部の
脳髄だけは解らない事が
多すぎて、教師達も
「この脳髄こそが・・・恐らく
・・ムクロ達の・・・
いやヒトの本当の姿だ。
我々に人体の仕組みを教えて
くれたムクロ達だが・・・
この部分だけには敬意をもって
接するようにしろっ!
この・・脳みそこそがモノを考え
・・・
嬉しければ腕を振る命令っ!
腹が立てば足を出して蹴る
命令っ!
ムカつけば文句を言う命令!
好きな人に好きっ!
と言う命令!
全てが・・・人の全てがこの脳髄
に潜んでいるっ!
こればっかりは如何に厳しい
この里でもどうにも出来ん!
それを踏まえてみんなっ!
この脳髄に手を合わせて
やってくれっ!」
生徒たちはみんな・・・
厳しい緊張のあまり解剖して
いたのは
最近まで一緒にいた同期達だった
事を忘れていた。
皆が手を合わせながら・・
「ムクロのみんな・・ありがとう
ございます。・・・
決してこの知識、無駄にしません。」
と教師も生徒も泣いた。
これ以降・・・生徒達はある種の
団結心のようなモノが芽生えて
里で何か?問題が起きても全員で
対処するようになっていった。
そして里での授業や訓練の日々も
難度を上げて行きながら
数年の月日が経った・・・
ある種の極みを超えたモノ達は
名前なる者を貰う。
なんとか・・・
俺も「ツグミ丸」と言う名を頂いた。
そんな
ある日の事、里の生徒達に
第三皇子の近衛隊・・・
いわゆる
御世話係の募集が懸かった
これは、
忍びの厳しい修行に耐えた者でも
一際、運動神経が良く
学業も優秀な5人が皇子専属
御世話係になれる。
同期で仲の良い
カワセミ丸とメジロ丸と
アイコンタクトで話をした。
基本的に里では小声で話す様に
躾けられるのだが・・・
何年もそんな事をしていると
目と目で会話が出来るように
なっていた。
それは我々3人だけの秘密のワザ
だった・・・
俺は、
「これって、公明正大に里の外に
出れると言う事か?」と同期の
カワセミ丸に目で問うた。
「ああ・・ツグミ丸・メジロ丸。
あの解剖の日!以来・
里を出るなんて
考えた事も無い俺たちだが・・
今は国に尽くせるダケの実力も
ついたやも知れん
・・・ならば・・・チカラの限り
・・・試したい・・」
そしてメジロ丸と呼ばれた忍びは
「表の世界か・・・行ってみてぇ
・・昔、かっぱらった団子・・
美味かったナァ・・・団子・・
まだ?売ってんかなぁ・・・
なぁ?世話係って手当が出るん
だろっ!」
カワセミ丸は
「以前に第二皇子の世話係に
なったアゲハ丸さんは城に
務める役人より多く貰って
驚いたそうだ・・・」
「えっ!・・・・」
「えっ!・・・マジッすっか?」
「やるしかないかっ!」
「お前らっ!やるのかっ!」
「挑戦しない手は無いっしょ!」
俺達3人は密かにどんな?試験が
出るのか?
今まで培った情報収集力を駆使
していった。
特に
諜報能力に長けた
カワセミ丸は、
里の住人100人以上から誰が
公募に名を連ねてくるか?
かなりっ!克明にあぶりだした。
「ちっ!やっぱり2期上の
忍者カラス丸が出てくるかっ!
あん人つぇ~からなぁ・・・結構
性格・・鬼だし!」
「あの人は無視しよう・・・
変に絡んで碌な事無し・・・
それより俺達3人以外でマーク
しなきゃいけないのは・・・
①コイツと②コイツと③コイツと
④コイツ・・・の4人か!!」
「ふむふむ・・同期2人に、1期上が2人か・・・
と・いう事は同期同志で
組んでたとしても2人づつ。
先輩後輩で組んでるのは
考えにくい・・・」
「よしっ!今日から俺はっ!
おまえ達と距離を置く!」
と俺。
更に、
「そして・・俺はギリギリまで
公募に応募しない。
奴らも諜報活動をしている可能性
がある。
おまえ達は二人組のふりをしとけ
里でのオーディションなんだ!
格闘戦は絶対にアル。
2対2対2とカラス丸。
ペーパーテストが少々ダメでも
格闘戦がダメじゃぁ・・・
世話係は務まらんだろう。」
メジロ丸は、
「解った!ギリギリで応募して
おまえには仲間無しと他チームに
想わせといておまえを狙って
行った連中を俺達が背後から
狙うんだなっ!」
しかし・・・カワセミ丸は、
「まぁ・・それは良いがカラス丸
が心配だっ!アレは何か?が違う
なるべく距離をおこう!
・・・第一皇子の御世話係も
第二皇子の御世話係も楽勝だった
のに、応募しなかった。
なのに・・今回は出てくるようだ
・・・なぜ?だっ!」
メジロ丸は「まぁまぁ・・・
カワセミ丸の言う事も
最もだが・・・今は俺達3人が
選ばれる確率を上げる作戦だ。」
フムッと3人とも頷いた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・
俺は公募には締め切りギリギリで
応募した。
そして試験当日が来た。
学科は予定通り俺とカワセミ丸が
睨んだ通りの試験バカリで
楽勝だった。
そして、
上級忍者が審査員を務める
御世話係選抜実地試験が開始
された。
これに勝って見事、御世話係に
選ばれれば・・・俺達も上級忍者
と言う事だ!
俺は作戦通り囮に徹する。
あとは、カワセミ丸とメジロ丸を
信じて背中は任せるのみ!
絶対に選ばれて里を出てやる!
続く。
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