双子の番は希う

西沢きさと

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双子の番は噛み締める


 指と指を絡ませて、触れるだけのキスをする。そんな恋人同士の甘やかな行為を、翼とできる日がくるなんて。
 ささやかな幸せを堪能しながら唇を離した途端、目尻が下がってでれでれになっている片割れの顔が視界に入ってきた。

「……めちゃくちゃにやけてるぞ、翼」
「うるせぇ。幸せを噛み締めてるんだよ、俺は」

 ぎゅ、と抱き締めてくる翼に大人しく体を預け、自分も彼の背中に腕を回す。密着した部分から互いの熱が混じり合い、まるでひとつの塊になったような錯覚を起こした。

(あったかいなぁ……)

 これまでは、どれだけ近くにあっても得られなかったぬくもりだ。焦がれて、それでいて手を伸ばすことはできなくて。
 ずっと、ずっと、我慢していた。
 それが、たった一回の発情期ヒートで手に入ってしまったのだから、世の中わからないものだと思う。

(うまくいったからよかったものの、逆に全部壊れてしまう可能性もあったんだよな)

 むしろ、そちらの確率のほうが高いはずだったのに。運命のいたずらなのか、それとも血の繋がった双子を運命の番なんかに設定した神様からのお詫びなのか、今のところ何の問題も起こらず日々を過ごせている。
 まぁ、次の発情期がある意味での勝負ではあるのだが。

(周期通りくるのか、次もちゃんと薬は効くのか。俺がΩだと隠せる状況を維持できないと、今後に不安が残るもんな)

 心臓があまりよくない音を立てる。
 胸を苛む不安は、欲を持って翼を愛しているのだと自覚した時からずっと消えることはなかった。これは、一生抱き続けるものなのだと思う。
 双子の片割れを、弟を、自分のものにしたいだなんて、普通に考えれば狂気の沙汰だ。諦めることしか許されていない感情だ。
 それなのに捨てられず、ついには叶えてしまった。

(翼も、俺と同じ気持ちだってわかってたから)

 もし、翼が他の誰かを好きになっていたら、きっと自分はただの双子・・・・・を演じられただろう。心から祝福を祈ることはできなくても、祝うことはできた。

「もう、無理だけど」
「は? 何がだよ」

 つい声に出してしまった言葉に、翼が体を離して問うてくる。遠くなったぬくもりを惜しんでいると、真っ直ぐで強い視線を向けられた。

「何が無理だって?」
「翼を、他の誰にもあげられないなぁって」
「なんだそれ、当たり前だろ」
「……当たり前になったんだなぁって、噛み締めてたんだよ」

 翼は翠のものになり、翠は翼のものになった。その事実が日々じわじわと心に沁みて、ふとした時に倍になって溢れてくる。

「なぁ、翼」
「なに」
「もう一回、キスしたいんだけど」
「……一回でいいのか?」

 後頭部に掌が添えられ、翠はそっと目を閉じる。もたらされたくちづけの回数は、途中から数えるのをやめてしまった。

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