魔法の薬草辞典の加護で『救国の聖女』になったようですので、イケメン第二王子の為にこの力、いかんなく発揮したいと思います

高井うしお

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20話 騎士団の帰還

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 それから二日経って騎士団は王城へと帰ってきた。私とザールさんは入城した騎士団を少し遠くから眺めていた。

「あれは……?」

 隊列の後ろの大きな荷馬車にくくりつけられているのは巨大な赤い鳥だった。

「今回討伐された魔物でしょう。さ、もう解散みたいですよ」
「あ、はい」

 私はフレデリック殿下の解散の合図に騎士団の元に駆け寄った。

「お疲れです! 疲労回復の特製ドリンクを作りましたので、まずは喉の渇きを癒してください!」
「おおっ、ありがたい」

 今回作ったのはハイビスカスとローズヒップのコーディアルに蜂蜜とレモンを加えて冷たい水で割ったドリンクだ。甘さとほどよい酸味が疲れた体にはぴったりなはず。

「ああ……生き返る……」
「沁みるなぁ」

 兵士さん達にザールさんと手分けしてドリンクを配っているとそこに分け入るようにしてやってきたのはブライアンさんだ。

「おいおい、ずるいぞ俺の分は!」
「はい、隊長さん。お疲れ様です」

 安心してね、苦くないから。私は心の中で呟いてカップを渡す。ブライアンさんはそれをグッと飲み干した。

「うん、美味い! おかわり」
「はーい」
「ところで、魔物は見たか? あれが三匹いたんだ」
「三匹も……」
「白の騎士団が苦戦するわけだ。羽根があるのは厄介だからなぁ」

 ブライアンさんはお代わりに注いだドリンクもあっという間に飲み干すとニッと笑った。

「俺はアレの羽根を帽子飾りにしてやる。お前にも分けてやるぞ」
「えっと……帽子持ってないので……」

 あの赤い羽根を帽子に……? ブライアンさんには良く似合いそうだけど。

「何? そしたら帽子も買ってやる」
「いやいや……そんな……」
「遠慮するな。今回、怪我人がすぐに回復した事で騎士団の士気も落とさず任務を遂行できた。ほんのお礼だ」
「えっと……」

 私はザールさんをチラリと見た。ザールさんは苦笑しながら首を振った。

「真白、ブライアンは言いだしたら聞きません。あきらめましょう」
「ええ……?」
「明日はどうせ休みですし、城下に出るのもいいのでは? ま、ブライアンはこの上ない護衛になるでしょう」
「そうだ、たまにはいいことを言うな、ザール」

 なーんか勝手に決められちゃったなぁ。という訳で明日は帽子を買いに城下に買い物に出かける事になった。

「……という訳で……お願いします。クラリスさん……」
「はいっ、お任せください!」

 部屋に帰った私は明日のコーディネートをクラリスに頼んだ。彼女は目をキラキラさせて鼻歌まじりに部屋を出て行った。

「帽子……真っ赤な羽根付き帽子……?」
『何をぶつぶつ言ってるんだお前は』

 私が絶対に似合いそうにない派手な帽子を思い浮かべていると、リベリオがにゅっと顔を出した。

「明日買い物に行くことになって……」
『いいじゃないか、気晴らしして来るといい』
「そうかな?」
『市場にいって美味いものでも食べてくればいい。真白、ここ数日随分気を張っていただろ』
「ん……まあ……」

 そうよね。帽子は置いといてショッピング……か。それもいいかもね。お城の中にいるとお金を使う機会も無いし。

「よーし、そうと決まったらとっとと寝よう!」

 私はお気に入りの天蓋付きベッドに潜り込んだ。



「ねぇ……ちょっと派手じゃないかしら」
「そんな事ないですよ。お綺麗です」

 本当かしら。翌日、私はクラリスの用意した外出用ドレスを身につけて鏡の前に立っていた。スカイブルーの生地に青の刺繍が入ったレースつきのそれは初夏らしさがあった。ドレスは素敵なんだけど着ている本人が負けてないかと不安だ。

「に、してもブライアン隊長と外出ですかぁ……羨ましいですね」
「そう?」
「この屋敷の女使用人は柔和なフレドリック殿下派と逞しいブライアン隊長派に別れています」
「な、なにそれ……」
「王国騎士団の皆さんは庶民にとっても憧れですから」

 うーん、それってアイドルみたいな扱いって事かしら。そうねぇ……実際、魔物と戦うヒーローだものね。

「さ、そろそろお時間です」
「はい。じゃあ行ってきます」

 私は辞典を抱えた。それを見てクラリスは眉をひそめた。

「それ……今日も持って歩くんですか? 休日ですよ」
「なんか手元にないと落ち着かないの。じゃ!」

 実際、今日は辞典リベリオを使う予定はないけれど……。コレがないと私は回復魔法が使えない。いわば丸腰のようなものだ。
 辞典を抱えたままで外に出ると、馬車が止まっていた。えんじ色の馬車……ブライアンさんのお迎えだ。

「よぉ……なんだ。本なんか持って」
「えっと……仕事道具を手放していると落ち着かなくって」

 私がそう言うと、ブライアンさんはフッと笑った。そしてコートの隙間からチラリと剣を見せる。

「それなら俺も一緒だ」
「ふふっ、本当ですね」
「さぁ乗ってくれ」

 ブライアンさんが私に手を差し出す。その手を取って私は馬車に乗り込んだ。

「そういえば……」

 ガラガラと進む馬車の中で、ブライアンさんは外を眺めながら呟いた。

「あの粉、良かったぞ。肌がサラサラして快適だったし、虫がこないのが良かった」
「お役に立てて何よりです。他になにか不便な事があったら言ってください。私に出来る事があれば対応したいと思います」
「……ありがたいが、なんでそこまでやる?」
「え?」

 ブライアンさんは灰色の眼でじっと私を見た。

「フレデリック殿下にお世話になったので……お礼をと……」
「十分だと思うがな。……惚れたか? 殿下に」
「なっ! な……な……」

 なんて事言うのよ、この人は! 確かに殿下はイケメンだし優しいしちょっとかわいい所もあるし……嫌いになる要素はないけど!

「違いますっ」
「……そうか」
「大体、殿下は王子様でしょう……。私がどうこうしたって……」

 何でこんなに頬が熱くなるのかしら。いつもより首の詰まった襟元の所為だけではない、と思う。

「……」

 私は口をへの字にして黙り込んだ。ブライアンさんはそれを見てちょっと笑った。何笑ってるのよ。兵士達に苦いのが苦手だってばらしちゃうから!
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