10 / 61
バニラの海
しおりを挟む
かのん君の大胆な彼女いる宣言。さすがにその反応が気になって、私はとうとうやってなかったSNSアプリを入れた。クマのスタンプで顔を隠された私とのツーショット写真には大量のいいねとコメントがついていた。『おめでとう!』『かのん君しあわせに』という祝福の言葉もあったが、やはり『失望しました』『かのん君が誰かの物になるなんて信じられない』とかいう否定的なコメントも沢山見受けられた。
「本当にこれでよかったのかな?」
スマホの画面を覗き混みながら、私がそう言うと。かのん君はなんでも無いように笑って言った。
「こういうのはこそこそしている方が反感買うもんだよ。真希ちゃんがお堅い会社員じゃなかったら顔出ししたい位だけど」
「えー……お堅くなくてもそれは無理だよぉ……」
スタンプ越しの私の顔でも、かのん君より大きいのが分かる。自分の顔がそんなに大きいとは思ってこなかったけど、かのん君が小さすぎるんだよなぁ……。
「で、今度の日曜日は水族館……でいいかな?」
「うん、いいよ」
「じゃあ決まり!」
次のデートは水族館か。確か都内にいくつかあった気がする。元彼は出不精で、あんまりそういう所に行った事ないんだけど。あの誕生日の食事会も本当に久々の外デートだったのに……あ、今更だけど怒りが湧いてきた。
「……で、今日は泊ってくの?」
「え? いや仕事あるし……」
頭の中の水族館の数をピックアップしていると、ふいにかのん君が少し掠れた声で聞いてきた。こ、これは……この雰囲気は……。かのん君の手が私の腰に回される。
「かのん君っ、私まだ、その!」
まずいまずい。私の心の準備がまだ出来ていない。私はのしかかってくるかのん君をやんわりと押し戻した。ほのかに香るバニラの匂いに私の理性もグラグラと揺れる。この香り、いつもかのん君からするけど一体なんの匂いなんだろう。
「俺のこと、嫌?」
「ううん、違うんだけど……いきなりってのは……」
ごめんなさい、かのん君。ぶっちゃけ正直な事をいうと、女にも色々こういう事には準備ってものがいるの。気持ち以外にもね。
「そおっかぁ……。うん、分かった」
パッとかのん君の手が私から離れる。現金な事にそれを少し残念に思いながら、かのん君も男の子よねぇ……と思った。それでも最初に出会った時も変な事しなかったし、彼は紳士だ。
「でも、ちょっとだけ味見しよっかな」
「ちょっと……かのん君」
前言撤回。かのん君からたっぷりとキスの雨を降らされてからようやく私は自宅に帰る事ができた。
そして来たる日曜日。おなじみの駅前集合をして電車に乗り、水族館へと向かう。
「真希ちゃんの調べてきた水族館、HP見たけど凄いね」
「うん、イルカショーが見たくて」
「メリーゴーランドもあるって書いてあったよ?」
「え、ほんと?」
メリーゴーランドとかのん君。やだ、超似合う。写真に撮りたい。……なんだか私もかのん君に似てきたかな。休日の駅はそこそこの人混みだ。
「とりあえずなんか食べようか。えーと、あー館内にレストランないのか」
「あらっ、そうなんだ。しまったなー」
自宅でも外でもかのん君は食事に気を遣ってるのがよく分かる。その辺のファーストフードですまそうって提案はしにくい。
「そうだ、そこのホテル行こう」
「ホテルッ!?」
私は先日の事を思い出して裏返った声を出してしまった。そんな私をかのん君がじとーっと見る。そして、少し意地悪い声でこう言った。
「真希ちゃん、今ちょっとやーらしい事考えたでしょうー」
「んっな……」
「そこのホテルでスイーツビュッフェやってるんだってさ」
「そ、そっかー! じゃあそれに行こう」
はー、もうやだ恥ずかしい……。慌てている自分を誤魔化す為、私はかのん君となりゆきでホテルのスイーツブッフェへと向かったのだった。
【ライト文芸大賞エントリー中 応援よろしくお願いします。】
「本当にこれでよかったのかな?」
スマホの画面を覗き混みながら、私がそう言うと。かのん君はなんでも無いように笑って言った。
「こういうのはこそこそしている方が反感買うもんだよ。真希ちゃんがお堅い会社員じゃなかったら顔出ししたい位だけど」
「えー……お堅くなくてもそれは無理だよぉ……」
スタンプ越しの私の顔でも、かのん君より大きいのが分かる。自分の顔がそんなに大きいとは思ってこなかったけど、かのん君が小さすぎるんだよなぁ……。
「で、今度の日曜日は水族館……でいいかな?」
「うん、いいよ」
「じゃあ決まり!」
次のデートは水族館か。確か都内にいくつかあった気がする。元彼は出不精で、あんまりそういう所に行った事ないんだけど。あの誕生日の食事会も本当に久々の外デートだったのに……あ、今更だけど怒りが湧いてきた。
「……で、今日は泊ってくの?」
「え? いや仕事あるし……」
頭の中の水族館の数をピックアップしていると、ふいにかのん君が少し掠れた声で聞いてきた。こ、これは……この雰囲気は……。かのん君の手が私の腰に回される。
「かのん君っ、私まだ、その!」
まずいまずい。私の心の準備がまだ出来ていない。私はのしかかってくるかのん君をやんわりと押し戻した。ほのかに香るバニラの匂いに私の理性もグラグラと揺れる。この香り、いつもかのん君からするけど一体なんの匂いなんだろう。
「俺のこと、嫌?」
「ううん、違うんだけど……いきなりってのは……」
ごめんなさい、かのん君。ぶっちゃけ正直な事をいうと、女にも色々こういう事には準備ってものがいるの。気持ち以外にもね。
「そおっかぁ……。うん、分かった」
パッとかのん君の手が私から離れる。現金な事にそれを少し残念に思いながら、かのん君も男の子よねぇ……と思った。それでも最初に出会った時も変な事しなかったし、彼は紳士だ。
「でも、ちょっとだけ味見しよっかな」
「ちょっと……かのん君」
前言撤回。かのん君からたっぷりとキスの雨を降らされてからようやく私は自宅に帰る事ができた。
そして来たる日曜日。おなじみの駅前集合をして電車に乗り、水族館へと向かう。
「真希ちゃんの調べてきた水族館、HP見たけど凄いね」
「うん、イルカショーが見たくて」
「メリーゴーランドもあるって書いてあったよ?」
「え、ほんと?」
メリーゴーランドとかのん君。やだ、超似合う。写真に撮りたい。……なんだか私もかのん君に似てきたかな。休日の駅はそこそこの人混みだ。
「とりあえずなんか食べようか。えーと、あー館内にレストランないのか」
「あらっ、そうなんだ。しまったなー」
自宅でも外でもかのん君は食事に気を遣ってるのがよく分かる。その辺のファーストフードですまそうって提案はしにくい。
「そうだ、そこのホテル行こう」
「ホテルッ!?」
私は先日の事を思い出して裏返った声を出してしまった。そんな私をかのん君がじとーっと見る。そして、少し意地悪い声でこう言った。
「真希ちゃん、今ちょっとやーらしい事考えたでしょうー」
「んっな……」
「そこのホテルでスイーツビュッフェやってるんだってさ」
「そ、そっかー! じゃあそれに行こう」
はー、もうやだ恥ずかしい……。慌てている自分を誤魔化す為、私はかのん君となりゆきでホテルのスイーツブッフェへと向かったのだった。
【ライト文芸大賞エントリー中 応援よろしくお願いします。】
0
あなたにおすすめの小説
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる