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引導
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「……誰だお前」
ハルオがかのん君に気を取られた隙に、私はハルオの手を払った。そして部屋へと駆け込む。
「真希っ!」
「はい、そこまでって言ったでしょ」
私の名をドスの利いた声で呼ぶハルオを、かのん君が制する。
「だからお前は誰なんだよ……男か?」
「男ですけど? ついでに言うと真希ちゃんの彼氏です」
「は? 彼氏?」
虚を突かれたハルオは一瞬ぽかんとした顔をした。しかし、すぐに馬鹿にしたような表情に戻りこう言った。
「なんだ、真希。俺に振られたショックでこんな女みたいなやつに走った訳?」
「はぁっ? 何いってんの?」
もうこいつ最悪。私は部屋にあった雑誌をハルオに向かって投げつけた。さっと避けられてしまったから玄関のドアにぶつかって下に落ちただけだけれど。
「とっとと小さい可愛らしいあんた好みの女の子のとこにでも行きなさいよ! 私はもうあんたの事なんか好きじゃないんだから!」
「真希、俺を舐めてるのか」
「舐めてるのはあんたじゃない。戻って来てくれてうれしいわ、なんて言うと思ったの」
かのん君をはさんで、私とハルオの口げんかがはじめる。怒り心頭のハルオは靴を履いたまま玄関から部屋に入ろうとした。それをかのん君が身体で止める。
「ここから先は通さないよ」
「ひょろちびが何言ってんだ」
かのん君の体格は背丈だってそんなに高い方じゃ無いし、すごく痩せているから中肉中背のハルオがとても大きく見える。
「邪魔すんなよ」
ハルオがかのん君の肩の辺りを突いて、中に無理矢理入ろうとした。ああ、かのん君が危ない。
「痛っ!」
しかし、声を上げたのはハルオの方だった。かのん君はハルオが掴もうとしてきた手をふり払い、そして流れるような動きでハルオを床に叩きつけた。
「真希ちゃーん」
「かのん君、大丈夫!?」
「離せっ! おい!」
ハルオに馬乗りになったかのん君は私の名前を呼びながらウインクしている。妙にハルオが痛がっていると思ったら、かのん君は押さえつけたハルオの小指を逆側にひねっている。そりゃ、痛いはずだわ。
「早く早く警察ー」
「え? あ、そうか」
「おいっ、それは勘弁してくれ!」
「不法侵入、って言葉知ってる?」
かのん君の追い詰め方がエグい。私は、床に這いつくばっているハルオに向かって語りかけた。
「私の彼氏、かっこいいでしょ? 分かった? もうハルオに未練はないの」
「……分かった」
「もうこんな事しないでね。うちにも来ない、連絡もとらない。いい?」
「分かったから離してくれ……」
ハルオはそういうとうなだれた。ちょっと涙目である。大の男にこれ以上の醜態をされさせるのも気の毒だ。
「かのん君、離してあげて」
「えー……真希ちゃんがそういうなら仕方ないか」
かのん君が力を緩めると、ハルオはがばっと立ち上がりスーツの埃を払った。
「……真希」
「さっきの、ちゃーんと録音しといたからね。嘘吐いたら友達みんなに聞かせるから」
「なっ、くそっ。分かったよ。お前みたいな女こっちから願い下げだ」
なによ失礼ね。ハルオはそう捨て台詞を言ってドアを乱暴に閉めると出て行った。私はすぐに鍵を掛ける。ほっ、ちゃんと撃退できた。
「かのん君……」
「真希ちゃん、おいで」
両手を広げたかのん君が私を受け止め抱きしめてくれる。
「怖かったね、もう大丈夫だよ」
私の頭を撫でてくれるかのん君の手はちょっと大きくて骨張っていて、やっぱり男の子だ。それにしてもさっきの凄かったな。
「かのん君、けんか強かったんだ」
「ああ、あれ? 合気道。高校入るまでやってたんだ。俺に痴漢してくる変態野郎がいたから。ははは」
なるほど、中学生のかのん君はそれはそれは可愛かったことだろう。
「よかったー真希ちゃんの役に立てて。それに……」
むふふふ、とかのん君がにんまり笑う。
「俺の事、かっこいいって」
「え? そこ?」
かっこいいに決まってるじゃない。暴漢から華麗に私を守ってくれたんだから。でも、素直じゃない私は改めてかっこいいよ、とかのん君には言えなかったのだった。
「あー! 遅くなったからピザでもとるか」
「え、真希ちゃんの手料理は?」
「もうそんな気力なーい」
ちょっと残念そうなかのん君をよそに私はチーズ増量でピザの配達を頼んだのだった。
ハルオがかのん君に気を取られた隙に、私はハルオの手を払った。そして部屋へと駆け込む。
「真希っ!」
「はい、そこまでって言ったでしょ」
私の名をドスの利いた声で呼ぶハルオを、かのん君が制する。
「だからお前は誰なんだよ……男か?」
「男ですけど? ついでに言うと真希ちゃんの彼氏です」
「は? 彼氏?」
虚を突かれたハルオは一瞬ぽかんとした顔をした。しかし、すぐに馬鹿にしたような表情に戻りこう言った。
「なんだ、真希。俺に振られたショックでこんな女みたいなやつに走った訳?」
「はぁっ? 何いってんの?」
もうこいつ最悪。私は部屋にあった雑誌をハルオに向かって投げつけた。さっと避けられてしまったから玄関のドアにぶつかって下に落ちただけだけれど。
「とっとと小さい可愛らしいあんた好みの女の子のとこにでも行きなさいよ! 私はもうあんたの事なんか好きじゃないんだから!」
「真希、俺を舐めてるのか」
「舐めてるのはあんたじゃない。戻って来てくれてうれしいわ、なんて言うと思ったの」
かのん君をはさんで、私とハルオの口げんかがはじめる。怒り心頭のハルオは靴を履いたまま玄関から部屋に入ろうとした。それをかのん君が身体で止める。
「ここから先は通さないよ」
「ひょろちびが何言ってんだ」
かのん君の体格は背丈だってそんなに高い方じゃ無いし、すごく痩せているから中肉中背のハルオがとても大きく見える。
「邪魔すんなよ」
ハルオがかのん君の肩の辺りを突いて、中に無理矢理入ろうとした。ああ、かのん君が危ない。
「痛っ!」
しかし、声を上げたのはハルオの方だった。かのん君はハルオが掴もうとしてきた手をふり払い、そして流れるような動きでハルオを床に叩きつけた。
「真希ちゃーん」
「かのん君、大丈夫!?」
「離せっ! おい!」
ハルオに馬乗りになったかのん君は私の名前を呼びながらウインクしている。妙にハルオが痛がっていると思ったら、かのん君は押さえつけたハルオの小指を逆側にひねっている。そりゃ、痛いはずだわ。
「早く早く警察ー」
「え? あ、そうか」
「おいっ、それは勘弁してくれ!」
「不法侵入、って言葉知ってる?」
かのん君の追い詰め方がエグい。私は、床に這いつくばっているハルオに向かって語りかけた。
「私の彼氏、かっこいいでしょ? 分かった? もうハルオに未練はないの」
「……分かった」
「もうこんな事しないでね。うちにも来ない、連絡もとらない。いい?」
「分かったから離してくれ……」
ハルオはそういうとうなだれた。ちょっと涙目である。大の男にこれ以上の醜態をされさせるのも気の毒だ。
「かのん君、離してあげて」
「えー……真希ちゃんがそういうなら仕方ないか」
かのん君が力を緩めると、ハルオはがばっと立ち上がりスーツの埃を払った。
「……真希」
「さっきの、ちゃーんと録音しといたからね。嘘吐いたら友達みんなに聞かせるから」
「なっ、くそっ。分かったよ。お前みたいな女こっちから願い下げだ」
なによ失礼ね。ハルオはそう捨て台詞を言ってドアを乱暴に閉めると出て行った。私はすぐに鍵を掛ける。ほっ、ちゃんと撃退できた。
「かのん君……」
「真希ちゃん、おいで」
両手を広げたかのん君が私を受け止め抱きしめてくれる。
「怖かったね、もう大丈夫だよ」
私の頭を撫でてくれるかのん君の手はちょっと大きくて骨張っていて、やっぱり男の子だ。それにしてもさっきの凄かったな。
「かのん君、けんか強かったんだ」
「ああ、あれ? 合気道。高校入るまでやってたんだ。俺に痴漢してくる変態野郎がいたから。ははは」
なるほど、中学生のかのん君はそれはそれは可愛かったことだろう。
「よかったー真希ちゃんの役に立てて。それに……」
むふふふ、とかのん君がにんまり笑う。
「俺の事、かっこいいって」
「え? そこ?」
かっこいいに決まってるじゃない。暴漢から華麗に私を守ってくれたんだから。でも、素直じゃない私は改めてかっこいいよ、とかのん君には言えなかったのだった。
「あー! 遅くなったからピザでもとるか」
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「もうそんな気力なーい」
ちょっと残念そうなかのん君をよそに私はチーズ増量でピザの配達を頼んだのだった。
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