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カフェ・ド・ヒロの優雅な面々
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――カランカラン。私がその店のドアを開けると軽やかなドアベルの音が鳴った。店内に居た男女が一斉にこっちを見る。
「あの……」
「あー真希ちゃん! 来た来た」
「かのん君」
人混みの中から、かのん君が躍り出てきた。そして。その後ろから髭の中年男性がゆっくり近づいて来る。少しセンの細い印象がかのん君に似ている。そうか、この人が。
「初めまして、加藤宏明といいます。この店のオーナーです」
「初めまして、あっおめでとうございます! これどうぞ」
私はかのん君の叔父さん……宏明さんに用意したフラワーアレンジメントを渡した。
「ねぇ、ヒロ君。俺の彼女の真希ちゃんだよ」
「うんうん、かわいい子だね」
かのん君がぴょんぴょんと子供のように跳ねながら、宏明さんに私を紹介してくれた。
「ちょっとバタバタしてるけどゆっくりしていって」
「はい、ありがとうございます」
宏明さんは私にそう言うと、優雅にカウンターの中へと戻っていった。かのん君が歳をとったらあんな感じになるのかな?
「真希ちゃんなに飲む?」
「ええと……じゃあサングリア」
「分かった、ちょっと待ってて」
今日はパーティ仕様なのか、カウンター上がドリンクバーのようになっていて、各テーブルにサンドイッチなどのちょっとつまめるものが置いてある。店内はしっとりと落ちついたダークトーンで統一されていて隠れ家っぽい雰囲気だ。
「おまたせー」
「ありがとう」
「ねぇねぇ、こっちの席に来て?」
かのん君に引っ張られ連れて来られた角のソファー席には華やかな美男美女がそろい踏みで座っていた。
「おう、かのん。どこ行ってたんだよ」
そう気安げにかのん君に声を掛けた男性はソファーに座っているのにも関わらず、長身な事がうかがえた。なによりゆったりと組んだ脚がとんでも無く長い。彼は鎖骨まである長髪をけだるげにいじりながらビールのグラスを傾けていた。
「ごめん、彼女が来たから迎えに行ってた」
「彼女~!? お前に彼女?」
「何!? 俺に彼女がいちゃおかしい? ほら、こちらが真希ちゃん。俺の超ラブラブ彼女です!」
はぁ? という無遠慮な視線が私に突き刺さる。おっかしいぁあ! 国内最大のファッション通販サイトで最も売れ筋のを買ったのに。オシャレ偏差値が違う、違過ぎる。
「アレク、そこ寄って。真希ちゃんが座るから」
「あー?」
この脚長男はアレクというのか。なるほど、彫りの深さが日本人離れしている。アレクはもの凄い嫌そうな顔をして席をずれた。
「お邪魔します……」
「真希ちゃん、あのねー。こいつアレクっていうの。俺のモデル仲間」
「……兼、親友! だろ、かのん」
アレクはかのん君の後頭部をぐっと掴んで引き寄せた。キスするみたいな距離感。
「俺、聞いて無いんだけど? 彼女とか」
「えー? SNSでも公開してるよ?」
「直接だよ!」
かのん君がチワワならアレクはドーベルマンみたいだ。そんな二人はお互い臆することなく言い合いをしている。
「いいわー。いい光景」
それを見ながらぼんやりと呟いたのは黒いワンピースの女性。赤いインナーカラーの切りっぱなしボブが印象的な美女だ。これまた蜘蛛の様に手足が長い。
「マチ子、バカ言ってんじゃねーぞ」
「本名いわないでよバーカ」
口は悪いが声と言い方がおっとりしている所為であんまりトゲが無い。じっと私が彼女を見ていると目があった。
「はじめまして、レネよ。私もかのん君とはモデル仲間なの」
「はい、真希といいます。よろしくお願いします」
「ふふふ、いい子っぽいじゃない。……本名の事は忘れてくれるわね」
「……もちろんです」
マチ子……ではなくレネさんは私が頷くと、満足げにマティーニを飲み干した。うん、これは本気で忘れなければならないヤツだ。
「……濃い」
私はかのん君の濃い友人達に囲まれて、小さく肩をすくめたのだった。
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「あの……」
「あー真希ちゃん! 来た来た」
「かのん君」
人混みの中から、かのん君が躍り出てきた。そして。その後ろから髭の中年男性がゆっくり近づいて来る。少しセンの細い印象がかのん君に似ている。そうか、この人が。
「初めまして、加藤宏明といいます。この店のオーナーです」
「初めまして、あっおめでとうございます! これどうぞ」
私はかのん君の叔父さん……宏明さんに用意したフラワーアレンジメントを渡した。
「ねぇ、ヒロ君。俺の彼女の真希ちゃんだよ」
「うんうん、かわいい子だね」
かのん君がぴょんぴょんと子供のように跳ねながら、宏明さんに私を紹介してくれた。
「ちょっとバタバタしてるけどゆっくりしていって」
「はい、ありがとうございます」
宏明さんは私にそう言うと、優雅にカウンターの中へと戻っていった。かのん君が歳をとったらあんな感じになるのかな?
「真希ちゃんなに飲む?」
「ええと……じゃあサングリア」
「分かった、ちょっと待ってて」
今日はパーティ仕様なのか、カウンター上がドリンクバーのようになっていて、各テーブルにサンドイッチなどのちょっとつまめるものが置いてある。店内はしっとりと落ちついたダークトーンで統一されていて隠れ家っぽい雰囲気だ。
「おまたせー」
「ありがとう」
「ねぇねぇ、こっちの席に来て?」
かのん君に引っ張られ連れて来られた角のソファー席には華やかな美男美女がそろい踏みで座っていた。
「おう、かのん。どこ行ってたんだよ」
そう気安げにかのん君に声を掛けた男性はソファーに座っているのにも関わらず、長身な事がうかがえた。なによりゆったりと組んだ脚がとんでも無く長い。彼は鎖骨まである長髪をけだるげにいじりながらビールのグラスを傾けていた。
「ごめん、彼女が来たから迎えに行ってた」
「彼女~!? お前に彼女?」
「何!? 俺に彼女がいちゃおかしい? ほら、こちらが真希ちゃん。俺の超ラブラブ彼女です!」
はぁ? という無遠慮な視線が私に突き刺さる。おっかしいぁあ! 国内最大のファッション通販サイトで最も売れ筋のを買ったのに。オシャレ偏差値が違う、違過ぎる。
「アレク、そこ寄って。真希ちゃんが座るから」
「あー?」
この脚長男はアレクというのか。なるほど、彫りの深さが日本人離れしている。アレクはもの凄い嫌そうな顔をして席をずれた。
「お邪魔します……」
「真希ちゃん、あのねー。こいつアレクっていうの。俺のモデル仲間」
「……兼、親友! だろ、かのん」
アレクはかのん君の後頭部をぐっと掴んで引き寄せた。キスするみたいな距離感。
「俺、聞いて無いんだけど? 彼女とか」
「えー? SNSでも公開してるよ?」
「直接だよ!」
かのん君がチワワならアレクはドーベルマンみたいだ。そんな二人はお互い臆することなく言い合いをしている。
「いいわー。いい光景」
それを見ながらぼんやりと呟いたのは黒いワンピースの女性。赤いインナーカラーの切りっぱなしボブが印象的な美女だ。これまた蜘蛛の様に手足が長い。
「マチ子、バカ言ってんじゃねーぞ」
「本名いわないでよバーカ」
口は悪いが声と言い方がおっとりしている所為であんまりトゲが無い。じっと私が彼女を見ていると目があった。
「はじめまして、レネよ。私もかのん君とはモデル仲間なの」
「はい、真希といいます。よろしくお願いします」
「ふふふ、いい子っぽいじゃない。……本名の事は忘れてくれるわね」
「……もちろんです」
マチ子……ではなくレネさんは私が頷くと、満足げにマティーニを飲み干した。うん、これは本気で忘れなければならないヤツだ。
「……濃い」
私はかのん君の濃い友人達に囲まれて、小さく肩をすくめたのだった。
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