ジェンダーレス男子と不器用ちゃん

高井うしお

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ご対面

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「かのん君、まだー」
「もうちょっと……大丈夫かな……」

 今日はとうとうお互いの両親の所へ挨拶に行く日だ。かのん君のメイクはいつもよりごく薄くて、よーく見ないと分からないくらい。服も手持ちの服では地味目のスラックスにジャケット姿。

「髪だけはどうしようもないんだよな……仕事があるし」
「変装じゃないんだから……」

 かのん君はガチガチに緊張している。私は何があっても援護するつもりだ。まずは先にかのん君の家に行く。

「うちは問題ないな」
「そう?」
「話したら普通に喜んでたよ」

 両国駅を降りてしばらくいったマンションの一室。かのん君がインターフォンを鳴らす。

「南だよ」

 そうするとパタパタと足音が聞こえて、ドアが開いた。

「あらあらー、早く上がって」

 かのん君にそっくりなお母さんが出迎えてくれた。

「紹介するね、長田真希さん。この度婚約しました」

 目の前にはかのん君のお母さんとお父さん、それから妹の楓子ちゃん。

「かのんが女の人を連れてくる日がくるとは……」

 お父さんは感慨深げに呟いた。

「兄貴、めんどくさいヤツですけどよろしくお願いします」

 まったく問題のないまま、加藤家での挨拶は終了した。

「ね、大丈夫だったろ」
「みんな明るい人だね」
「うん、俺みたいに好き勝手してても放置な人達だから」

 そんな好き勝手なかのん君だから、私は救われた。かのん君の家族には感謝だ。

「それじゃ、私の実家行きますか」
「泊まりって……マジ?」
「だって群馬だよ。まぁ日帰り出来ない事もないけど」

 このためにレンタカーも手配済みだ。不便な所でいきなりハードル上がっちゃったのは申し訳ないけど。

「それじゃ、いくよ。乗って乗って」
「う、うん……」

 かのん君はすでに車酔いをしたような顔色だ。運転は私がしよう。

「帰りにこんにゃく買って帰ろう。手作りこんにゃくおいしいんだよ」

 なんとかかのん君の気持ちが晴れるように色々話しかけたが全て生返事だった。

「大丈夫、お父さんがへんな事言ったら私がげんこくらわしてあげるから」
「それはお義父さんがかわいそうだよ……」

 そうこう話しているうちに群馬の我が家にたどり着いた。もう時刻は夕方だ。

「ただいまー」
「あら、真希遅かったわね」
「途中渋滞はまっちゃって」

 玄関先に出てきたのはお母さんだ。田舎の気のいいおばちゃんそのものである。

「それで? お相手さんは?」
「こっち、ほら来て」

 玄関の出口で隠れていたかのん君の腕を引っ張ってお母さんの前に立たせる。

「……あれ、どっかで見たような?」
「加藤南といいます。かのんという名前でタレント活動してます」
「あー、かまいたちの番組でみたんだわ……って真希!? この方と?」
「結婚します」
「あらあら……」

 お母さんは驚いてはいたけれど、特に拒否もしなかった。

「こっちでお父さん待ってるから、どうぞ」

 私とかのん君は田舎特有の広くてごちゃついている居間に通された。そこにはお父さんがあぐらをかいて座っている。

「おとうさん、ただいま」
「……おう」
「それからね、こちらが婚約者の加藤南さん」
「……おう。おう?」

 お父さんも緊張していたみたいで、かのん君が目の前に座ってはじめて顔を上げた。

「加藤南です」
「……その髪は……」
「染めてます」
「そうじゃなくて」
「あ、タレントしてまして……仕事の関係で」

 いまいち噛み合わない会話が続く。かのん君もガチガチに緊張しているのが分かる。

「かのん君はタレントしてるんだよー、見た事ない?」
「うーん?」
「お母さんは知ってるって、ねー? お母さんテレビで見たんだよね」
「ええ」

 お母さんがお茶を持ってやって来た。

「どうぞ、粗茶ですが」

 はじめて聞いたわそんな台詞。お母さんも戸惑ってはいるのかな。

「それで……そのタレントさんとうちの娘がどういう……」
「家が近所で、たまたま知り合いになりました」
「かのん君はなんでも出来るの。実はもう一緒に住んでるんだ」
「えっ」

 お父さんが湯飲みを取り落としそうになる。しまった、余計な事言ったかな……。微妙な空気が流れるのを断ち切るように、お母さんが手を叩いた。

「さ、お腹空いたでしょ。ご馳走作ったから食べていって!」
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