私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25

文字の大きさ
44 / 181

第44話

しおりを挟む
「心桜が変わる必要なんてないよ、」

 違う。そんなことない。

 "一人が我慢しないといけないような関係はすぐ壊れちゃうから"

 朝陽先輩の言葉を思い出した。

 今回の件は私にも非があった。

「私も、もっと素直に気持ちを伝えるべきだった」

 私は涙をこらえながら言った。

 私が我慢すればいいって思ってた。
 でも、そのせいでこんな大事に。

「それは、心桜の気持ちに気づけなかった俺が悪い。それに、気持ちを伝えられない雰囲気を作てた俺に責任がある」

 柊先輩は自分を責めるように言った。

 柊先輩はどこまで優しいんだろうか。

「柊先輩に自分の気持ちを伝えられなかったのは、私のわがままで困らせたくなかったから」

 私は目を伏せた。

「困るなんて、」

 柊先輩は驚いた表情を見せた。

「それから、本当は怖かったんだ」

 私は声を震わせながら続けた。

「怖かった?どうして?」

 柊先輩は優しく問いかけた。

「私の気持ちを伝えたら…柊先輩が離れていっちゃうんじゃないかって、思ったから、」

 私は涙をこらえきれずに言った。

「そんなわけないよ」

 柊先輩はそんなことで離れていったりしないって分かってた。

 分かったけど、

「柊先輩のこと、信じきれていなかったんだと思う」

 私は涙を拭いながら言った。

「心桜…」

 柊先輩の声が優しく響いた。

「今まで、先輩ばかり責めてごめんなさい。こんなことになるなら、最初から自分の気持ちを伝えるべきだった。急に距離置きたいなんて言ってびっくりしたよね」

 私は自分を責めるように言った。

「俺が心桜だったら、同じことをしてたと思う。だから、心桜は何も悪くないよ」

 柊先輩は優しく微笑んだ。

「私、これからはちゃんと自分の気持ちを伝える。嫌なことは嫌だっていう」

「うん、俺も心桜の気持ちをもっと理解したいし、心桜にも俺の気持ちを分かってほしい」

 柊先輩の目には決意が宿っていた。

「私も、柊先輩のことをもっと理解したいし、柊先輩にも私の気持ちを分かってほしい」

 私は微笑んだ。

「これからはもっと心桜と一緒にいる時間を作るよ。俺のためにも、心桜のためにも」

 柊先輩は優しく言った。

「柊先輩、私たち…まだ間に合うかな、」

 私は不安げに尋ねた。

 柊先輩は一瞬ためらった後、深く息を吸い込んで言った。

「心桜、俺とまた付き合って欲しい」

 柊先輩の声が震えていた。

「ほんとに、私、でいいの…?」

「何言ってるの。心桜じゃないとダメなの」

 私は涙がこぼれそうになりながら、微笑んだ。

「こんな私でよければ、お願いします。」

 柊先輩は私を優しく抱きしめた。


「ありがとう、心桜。大好きだよ」
「私も、大好き」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

会長にコーヒーを☕

シナモン
恋愛
やっと巡ってきた運。晴れて正社員となった私のお仕事は・・会長のお茶汲み? **タイトル変更 旧密室の恋**

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

もう捕まらないから

どくりんご
恋愛
 お願い、許して  もう捕まらないから

契約通り婚約破棄いたしましょう。

satomi
恋愛
契約を重んじるナーヴ家の長女、エレンシア。王太子妃教育を受けていましたが、ある日突然に「ちゃんとした恋愛がしたい」といいだした王太子。王太子とは契約をきちんとしておきます。内容は、 『王太子アレクシス=ダイナブの恋愛を認める。ただし、下記の事案が認められた場合には直ちに婚約破棄とする。  ・恋愛相手がアレクシス王太子の子を身ごもった場合  ・エレンシア=ナーヴを王太子の恋愛相手が侮辱した場合  ・エレンシア=ナーヴが王太子の恋愛相手により心、若しくは体が傷つけられた場合  ・アレクシス王太子が恋愛相手をエレンシア=ナーヴよりも重用した場合    』 です。王太子殿下はよりにもよってエレンシアのモノをなんでも欲しがる義妹に目をつけられたようです。ご愁傷様。 相手が身内だろうとも契約は契約です。

記憶のない貴方

詩織
恋愛
結婚して5年。まだ子供はいないけど幸せで充実してる。 そんな毎日にあるきっかけで全てがかわる

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

処理中です...