私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25

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第68話

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 その日、私は夢を見た。


 夢の中で、私は暗い路地を一人で歩いていた。

 周りには誰もおらず、静寂が広がっていた。


 …不気味だ。

 心臓がドクドクと高鳴り、不安な気持ちで歩き続ける。

 暗い影が私の心に重くのしかかる。

 どこかに安心できる場所があればと願いながら、歩を進めた。

 突然、背後から足音が聞こえた。

 振り返ると、男が近づいてくる。

 フードを被っていて顔は見えない。
 だけど、どこか見覚えのあるような…。

「…っ、」

 彼の目は冷たく、無表情な顔が私に恐怖を与える。

 私は恐怖で足がすくんで動けなくなる。

 男の冷たい視線が私を捕らえ、逃げ出したい気持ちが強くなる。

 男はどんどん近づいてきて、私に手を伸ばす。

 その瞬間、私は全力で逃げ出した。

 暗い路地を駆け抜け、必死に逃げるが、男の足音はどんどん近づいてくる。

 背後から彼の気配を感じ、息が詰まりそうになる。

「助けて!」

 そう叫びたいのに、喉が詰まる。

 それに、周りには誰もおらず、ただ暗闇が広がっているだけだった。

 暗闇の中で、私は孤独と恐怖に苛まれる。

 どこかに逃げ場があるはずと必死に探すが、何も見つからない。

 息を切らしながら、何とか逃げ切ろうとするが、男の手が私の肩に触れる。

「…っ、ぁ、」

 その瞬間、恐怖が私を包み込む。

 冷たい手の感触が私の肌に染み入り、背筋が凍りつくような感覚に襲われる。

 恐怖のあまり、私は声を上げることもできず、ただ震えるばかりだった。

「離してっ…!っ、」

 私は突然、勢いよく目を覚ました。

 胸の鼓動は激しく、汗が額を流れている。

 ベッドの上で息を整えながら、夢の中で感じた恐怖がまだ続いていることに気づく。

 自分では気づいていなかったけれど、思った以上に怖がってるんだ。

 心臓が早鐘のように打ち続け、全身が緊張していることに気づいた。

「…はぁ、」

 ゆっくりと体を起こし、部屋の中を見渡す。

 現実の部屋が広がり、少しだけ心が落ち着く。

 深呼吸をして気持ちを整えると、窓の外を眺めてみる。

 夜空に輝く星を見ながら、少しだけ心が癒される。

 そのままベッドから降りて、水を飲むためにキッチンへ向かう。

 冷たい水が喉を潤す。

「ふぅ…」

 夢の中の恐怖を振り払おうとしながら、深呼吸を繰り返す。

 心臓の鼓動が少しずつ落ち着いていくのを感じる。

 再び部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。

「夢で…よかった」

 夢の中での恐怖が現実のもののように鮮明で、その感覚が未だに体に残っている。

 夢が、現実になるんじゃないかって、

 あの人が私の前に現れると、頭が真っ白になる。

 先輩のことも、遥希くんのことも忘れてしまう。
 この世に私一人しかいないような気になる。

 頭を振って、夢のことを考えるのをやめようとする。

 代わりに、明日の文化祭の準備のことを考え始めた。

 この調子で行くと、文化祭には間に合う。

 だけど、何か起きた時のことも考えないといけない。

 問題の最終確認や教室の飾り付け、道具の準備など、やるべきことはたくさんある。

 そう考えると、少しだけ気持ちが落ち着いてきた。

「今日はちゃんと休んで、明日に備えよう…」
と自分に言い聞かせる。

 ベッドに横たわり、再び目を閉じる。

 心の中で、支えてくれる人たちの存在を思い出しながら、ゆっくりと眠りに落ちていく。

 そうだよ。
 私は一人なんかじゃない。

 どんなに恐怖が襲ってきても、自分を支えてくれる人たちの存在を忘れないこと。

 彼らの優しさと温かさが、私を守ってくれると信じること。

 そして、自分自身を信じること。

 心臓の鼓動が少しずつ落ち着き、体がリラックスしていくのを感じる。

 夢の中で感じた恐怖が少しずつ遠ざかり、現実の安らぎが広がる。

 心の中でその誓いを固めながら、私は再び深い眠りに落ちていった。
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