私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25

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第71話

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「心桜がそんなだと遥希くん、きっと落ち込んじゃうと思うけどな」

 柊先輩の言葉に、私はドキッとした。

「どうして?」

 戸惑いながら聞き返す。

「どうして頼ってくれないんだろう。友達だと思ってるのは俺だけなのかなって」

「そんなわけ、」

 友達じゃないなんて思うわけないのに。

 遥希くんがそんな風に感じているのなら、それは私のせいだ。

「遥希くんが困ってたら、今度は心桜が助けてあげればいいし、そんな機会が訪れないとしてもそれでいいんだよ」

 遥希くんは、きっと一人で解決しようとして、きっと一人で解決出来てしまうんだろう。

 私なんかが気にかけなくても。

「私だけ貰ってばっかりで、返せなくて、」

 友達だからこそ、助け合うべきなのに、私は一方的に助けてもらってばかりだ。

「友達に貰うも返すもないでしょ。お互いが思いやっているから必然的にそういう形になるだけでね」

 先輩の言いたいことも分かる。

 友達の関係にギブアンドテイクなんてものはなくて、そんなものを意識しなくても自然と助け合うものなのだと。

「そうだよね、」

 だけど、その優しさに甘えてていいのかな、なんて。そんなふうに思ってしまうから。

 私がこんなだと先輩にも、遥希くんにまで気を使わせちゃうよね。

 でも、どうしても割り切れない自分がいる。

「昨日も言ったけど、遥希くんも心桜のことを大事に思ってるから、助けたいんだよ。それを受け入れるのも友達として大事なことだと思うよ」

 その優しさを受け入れる…

「…確かに、そうかも」

 私は小さく頷く。

 もし私が遥希くんなら、助けたいという気持ちを受け入れてもらえないのは辛いと思う。

 友達だから助けてあげたいのにって。

 友達だからこそ助け合える関係でありたい。

 お互いが思いやることで成り立つ友情を、もっと大切にしていこうと思えた。

「先輩、」

 私はふと立ち止まり、柊先輩の顔を見上げた。

 先輩にどうしても言いたいことがあった。

 先輩が私を頼りにしてくれる機会は訪れないかもしれない。

 私が先輩のためにしてあげられることなんて、ないかもしれない。

 それなら私ができることはただ一つだけ。

「ありがとう」

 感謝の気持ちをちゃんと伝えたえること。

 あなたのおかげで私が笑顔でいられると、安心していられると少しでも伝われば。

「お礼を言われることなんてしてないよ」

 先輩は微笑む。

「ううん。そばにいてくれるだけで救われてるよ。本当は、すっごく怖かった。あの人がいつ現れるか分からないから、学校にも行きたくなかった。だけど、先輩がそばにいてくれるから頑張れる」

 先輩がそばにいてくれるだけで、不安も恐怖も少しずつ和らいでいく。

 先輩の存在が私にとってどれほど心強いか、言葉にするのが難しいほどに。

「それなら良かった」

 先輩は嬉しそうに笑った。

「本当にありがとう」

 感謝の気持ちが溢れ出た。


「心桜は一人じゃないよ。もちろん俺だけじゃない。沙紀も、遥希くんも咲月ちゃんもみんな心桜の味方だからね」


 そう言って優しく頭を撫でてくれる。


 その温かい手の感触に、心がさらに安らぐのを感じた。
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