私の大好きな彼氏はみんなに優しい

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第94話

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「あのさ、遥希くん、」

 私は少しためらいながら声をかけた。

 文化祭の準備のことで頭がいっぱいになっている私は、息抜きすることに少し罪悪感を感じていた。

「んー?」

 遥希くんの優しい声に、少しだけ心が和らいだ。

「今更だけど、学校戻った方がいいんじゃないかな…?」

 心の中で感じていた不安を吐露した。

 文化祭の準備が頭の中でぐるぐる回っていた。

 どうしてこんなにも文化祭に囚われているのかは、私にも分からなかった。

「2時間だけだって。ちゃんと文化祭の準備には出るし大丈夫だよ」

 本来なら授業を受けているはずの時間に、公園にいることがなんだか落ち着かない。

「それは、そうなんだけどさ、」

 遥希くんの優しさに感謝しつつも、自分の立場を考えてしまう。

「あ、もしかして、リラックス出来なかった?」

 早く学校に行きたいみたいに聞こえた?
 誤解させちゃったかな。

「違うよ。すっごく、気が楽になった」

 私は素直に答えた。

 さっきまでは、先輩が私の気持ちを理解してくれないことに対して、苛立ちや悲しみが入り混じった何とも言えない感情に押しつぶされそうだった。

 だけど今は、優しい気持ちになれてる、気がする。
 少なくとも、さっきよりは落ち着いてる。

 学校をサボるなんて、らしくないことをしてるからだろうか。

「それなら良かった」

 遥希くんの笑顔が私の心に温かさをもたらす。

「遥希くんは、どうしてそんなに平然としていられるの?」

 自分が感じている不安と遥希くんの落ち着きのギャップに戸惑いを感じると同時に、

 どうしてこんなにも冷静でいられるのか、その答えを知りたくなった。

「え?」

 遥希くんの表情には少しの驚きが浮かんでいた。

「学校サボったのに、どうしてそんなに普通なの?私なんて心臓バクバクしてるのに、」

「どうせサボるんだったら楽しまないと」

 遥希くんの言葉には少しの無邪気さが込められていた。

「もしかして、遥希くんって思ったよりやんちゃだった?」

 何度も学校をサボったことがある、とか、?
 全く想像つかないけど。

 遙希くんは少し考えた後、ふっと笑った。

「そんなことないよ。俺だって学校サボったのは初めてだから。ただ…心桜ちゃんと一緒だからかな」

 遥希くんの言葉に、少しだけ心が揺れ動く。

「何それ、答えになってないよ」

 私は少し笑いながら答えた。

 結局、理由は分からなかった。
 ただ、私が小心者みたいだ。

「ははっ、確かに」

 …って、違う。
 今はこうして笑いあってる場合じゃない。

 その後のことについて考えないと。

「2時間も遅れて、先生になんて言えば…」

 私は再び不安を口に出した。

「確かに言い訳も必要だよね。うーん…どうしようか?俺も学校サボったことないから分からないや」

 焦っているのは私だけみたいだ。
 私がどうにかしないと。

「もう。なんの計画もなしにサボろうなんて」

「つい、」

 ついって…

 そっか、私のせいか。


「…ごめんね、」

 私が、あんな顔してたから。



 きっと何かあったんだって、遥希くんなりに慰めてくれたんだよね。
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