私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25

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93話

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「え、サボるって、」

 私は驚いて問いかけた。
 遥希くんがそんなことを言うなんて。

「たまには息抜きも必要でしょ?」

 私を気遣ってくれて言ってくれてるのは分かるけど、まさか、本気じゃないよね。

「それでもダメだよ、文化祭の準備しないとだし、」

 文化祭の準備が私の心の中で重くのしかかる。

 自分の心の中にあるプレッシャーがさらに大きくなるのを感じた。

「真面目だなぁ」

 呆れたような、だけど優しい目で呟いた。

 遥希くんの笑顔に、少しだけ心が軽くなる。

 それと同時に、表情を見て、胸が締め付けられるような感覚が広がった。

 "行くべきでしょ"

 先輩と比べてしまった。

 遥希くんは…欲しい時に、欲しい言葉をくれる。

「真面目なんかじゃないよ。ただ、文化祭を成功させたいだけ。それにあと一週間しか…」

 その文化祭で、あの男が私に会いに来るかもしれないことを思い出した。

 あと一週間は、何も気にしなくて、いいんだよね。

「分かったよ、」

 遥希くんは、俯いたまま静かにそう言った。

「学校い」

 学校行こっか、そう言おうとした時だった。

「じゃあ、2時間だけ!」

 そう言って、遙希くんは私の手を引っ張り、急に走り出した。

「えっ、ちょ、遙希くん、!?どこ行くの!」

 驚きながらも、遥希くんに着いて行くしかなかった。

 心臓がドキドキと高鳴り、遥希くんがどこに連れて行こうとしているのか分からないまま、走り続けた。

 手の温もりを感じながらも、不安が募る。

「いいから、いいから」

 遙希くんは振り返って笑顔を見せた。

 彼の目には決意と少しの楽しさが光っていたように見えた。

 その笑顔が、私の心に少しだけ安心感をもたらした。

 遥希くんと一緒に走りながら、私の心の中では色々な感情が交錯していた。

 沙紀先輩のこと、あの男のこと、それから…先輩のことも。

 今、こうして私のために学校をサボってくれている遥希くんのことも。

 私を気遣ってくれていることに感謝しながらも、自分の責任感がそれを阻む。

 遥希くんの手の温もりが私の心に少しだけ光をもたらす。だけど、それでも心の奥底にはまだ恐怖が根強く残ってた。

 遙希くんに引っ張られながら走り続け、ついに遥希くんの足が止まった。

「はぁ、はぁ、」

 息を整えるために膝に手をつき、私はしばらくその場に立ち尽くす。

「心桜ちゃん、顔上げてみて」

 遥希くんの声に少しだけ顔を上げると、目の前に広がる美しい景色に驚いた。

「わぁ…」

 その景色に思わず声が出た。

 周囲の緑や広がる空が私の目に飛び込んでくる。

 その景色に圧倒され、しばらくの間その場に立ち尽くす。

 近くにこんないい場所があったなんて、全く知らなかった。

「すごいでしょ?ここ、俺のお気に入りの場所なんだ。心桜ちゃんには、特別に教えてあげるよ」

 そう言うと、優しく微笑んだ。

「…ありがとう」


 しばらくの間、その美しい景色を眺めながら静かに過ごした。


 私の心の中で感じていた不安や恐怖が、少しずつ和らいでいくのを感じた。

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