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第104話
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「心桜ちゃん、先生が今から補習受けろって…あ、すみませんお話中のところ邪魔しちゃって」
声を聞いた途端、頭の中が現実に引き戻された。
補習のことを完全に忘れていた。
「そうだ補習…すっかり忘れてた。ごめんね、」
急いで言葉を返す。
安心感に浸っていたせいか、大事なことを忘れてしまっていた。
「放課後は文化祭の準備で受けられないからって。まぁ、問題解いて出すだけだからそんなに時間はかからないと思うけどね」
そんな話を聞いていると申し訳なく思えてくる。
「ごめんね、巻き込んじゃって」
私は視線を遥希くんに向けて謝った。
「もう、いいんだって」
遥希くんが少し笑いながらフォローしてくれた。
「えっと、先輩、ごめん。授業出れなかったから補習受けないといけなくて、」
その瞳に何かを伝えたい気持ちが込められているように見えて、胸が少し締め付けられる。
「…あ、うん。それはいいんだけど。学校来てない間、遥希くんといたの?」
その言葉に、私は息を呑んだ。
顔が熱くなるのを感じながら、どう答えればいいのか分からず、ただ口を開けるだけだった。
「っ、それは、」
言葉が詰まる。
確かに、二人で長い時間一緒にいたことを知ったら、気分良くないのも分かる。
もしも逆の立場だったら…
だけど言い訳なんてしたくなかった。
とは言ったものの、この状況をどう説明すればいいのか分からなかった。
「俺はただ心桜ちゃんの顔色が悪かったので話を聞いてただけですよ。それでちょっと学校に来るのが遅くなっただけです。ね、心桜ちゃん」
遥希くんが自然な口調で説明を始めた。
その言葉が私を安心させる一方で、先輩の表情がどう変わるのかが気になって仕方なかった。
「うん。たまたま遥希くんにあって、色々話聞いてもらってたの…それだけ、」
私は彼の言葉を補うように答えた。
先輩の視線を感じながら、この説明で十分だったのか、それともまだ何かを言うべきなのか、心の中で葛藤が生まれる。
一瞬謝ろうかとも思ったけど、謝ってしまったら変な誤解を招きかねないから。
「…そうなんだ、」
先輩のその短い答えに、彼が何を思っているのか分からず、不安が募る。
その声のトーンが低く感じられるのは、私の気のせいだろうか。
そこに込められた気持ちが、私には読み取れなかった。
「お前らー早くこいよー」
先生の声が廊下に響き渡り、遥希くんが肩をすくめるようにして声を返す。
「いま行きます!行こ、心桜ちゃん」
遥希くんが私に優しく微笑みながら言った。
「あ、うん。ごめん先輩。話はまた後で」
先輩に向かって軽く頭を下げながら、その場を離れることにした。
後ろを振り返らないようにしている自分が、どこか逃げているようで胸が痛んだ。
実際、先輩の目を見つめることが出来なかった。
先輩は、今どんな表情をしているんだろうか。
どうしてこんな気持ちに…なるんだろう。
声を聞いた途端、頭の中が現実に引き戻された。
補習のことを完全に忘れていた。
「そうだ補習…すっかり忘れてた。ごめんね、」
急いで言葉を返す。
安心感に浸っていたせいか、大事なことを忘れてしまっていた。
「放課後は文化祭の準備で受けられないからって。まぁ、問題解いて出すだけだからそんなに時間はかからないと思うけどね」
そんな話を聞いていると申し訳なく思えてくる。
「ごめんね、巻き込んじゃって」
私は視線を遥希くんに向けて謝った。
「もう、いいんだって」
遥希くんが少し笑いながらフォローしてくれた。
「えっと、先輩、ごめん。授業出れなかったから補習受けないといけなくて、」
その瞳に何かを伝えたい気持ちが込められているように見えて、胸が少し締め付けられる。
「…あ、うん。それはいいんだけど。学校来てない間、遥希くんといたの?」
その言葉に、私は息を呑んだ。
顔が熱くなるのを感じながら、どう答えればいいのか分からず、ただ口を開けるだけだった。
「っ、それは、」
言葉が詰まる。
確かに、二人で長い時間一緒にいたことを知ったら、気分良くないのも分かる。
もしも逆の立場だったら…
だけど言い訳なんてしたくなかった。
とは言ったものの、この状況をどう説明すればいいのか分からなかった。
「俺はただ心桜ちゃんの顔色が悪かったので話を聞いてただけですよ。それでちょっと学校に来るのが遅くなっただけです。ね、心桜ちゃん」
遥希くんが自然な口調で説明を始めた。
その言葉が私を安心させる一方で、先輩の表情がどう変わるのかが気になって仕方なかった。
「うん。たまたま遥希くんにあって、色々話聞いてもらってたの…それだけ、」
私は彼の言葉を補うように答えた。
先輩の視線を感じながら、この説明で十分だったのか、それともまだ何かを言うべきなのか、心の中で葛藤が生まれる。
一瞬謝ろうかとも思ったけど、謝ってしまったら変な誤解を招きかねないから。
「…そうなんだ、」
先輩のその短い答えに、彼が何を思っているのか分からず、不安が募る。
その声のトーンが低く感じられるのは、私の気のせいだろうか。
そこに込められた気持ちが、私には読み取れなかった。
「お前らー早くこいよー」
先生の声が廊下に響き渡り、遥希くんが肩をすくめるようにして声を返す。
「いま行きます!行こ、心桜ちゃん」
遥希くんが私に優しく微笑みながら言った。
「あ、うん。ごめん先輩。話はまた後で」
先輩に向かって軽く頭を下げながら、その場を離れることにした。
後ろを振り返らないようにしている自分が、どこか逃げているようで胸が痛んだ。
実際、先輩の目を見つめることが出来なかった。
先輩は、今どんな表情をしているんだろうか。
どうしてこんな気持ちに…なるんだろう。
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