その魔法が解ける前に

hayama_25

文字の大きさ
1 / 86

プロローグ

しおりを挟む
「口説いてるんだよ」

 彼の声は低く、優しく響いた。

 穏やかな朝の中で、その声は特別な温かさを持っていた。

 彼の瞳は真剣で、まるで私の心の奥底を見透かすようだった。

「口説く…?どうしてですか、」

 私は戸惑いながらも、彼の視線から目を逸らせなかった。

「花澄のことが好きだから」

 彼は一歩一歩、ゆっくりと私の方に近づいてくる。

 心臓が早鐘のように打ち始め、頬が赤く染まるのを感じた。



 私には人権なんてものはない。

 この先もずっと、

 父の駒として、姉の召使いとして生きていくことになると思っていた。

 だけど、壱馬様が目の前に現れてから、私の世界に色がついた。

 壱馬様は私にをくれた。

 私はずっと、自分が誰かの特別な存在になれるとは思っていなかった。

 だけど壱馬様は、私の心の中に新しい光を灯してくれた。

 彼の優しい言葉と温かい微笑みが、私の孤独な心を包み込み、安心感を与えてくれた。

 家族からの冷遇や、姉からの虐待が私の心を傷つけていた私を救ってくれた。

 壱馬様との生活を通じて、私は少しずつ自分を取り戻していった。

 彼と過ごす時間は、まるで夢のようだった。

 彼の隣にいるだけで、世界が輝いて見えた。

 彼の手が私の手に触れるたびに、心が温かくなり、胸が高鳴った。

 これからは…私も幸せになれるんじゃないかって。そう思えた。

 だけど、そう思うと同時に怖かった。

 私には何も無い。
 いつまで彼が、私を好きでいてくれるか分からなかった。


 私が幸せになるなんて、無理だったんだ。

 やっぱり上手くはいかないみたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

処理中です...