その魔法が解ける前に

hayama_25

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第18話

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 映画が終わる頃には、私たちはお互いに微笑み合い、リラックスした雰囲気がリビングに漂っていた。

「この映画、すごく良かったですね」

 私が感想を述べると、壱馬様も同意して頷いた。

「そうだね」

 誰かと自分の気持ちを共有するのなんていつぶりだろうか。

「次は何を見たい?」

 壱馬様が尋ねた。

「えっと、何かおすすめはありますか?」

 私は少し考えながら答えた。

「そうだな。最近話題の映画がいくつかあるけど、どうかな?」

 壱馬様は少し考えてから、提案した。

「いいですね。壱馬様が選んでくれるなら、どれでも楽しめそうです」

 壱馬様は次の映画を選び始めた。

 映画が始まると、再びリビングには静かな時間が流れた。

 壱馬様の隣で、私は心地よい安心感に包まれながら、新たな物語に引き込まれていった。


 ____


 キッチンから聞こえる音と漂ってくる美味しそうな匂いに反応し、目を覚ました。

「ん…、」

 窓の外を見ると、暗闇が広がっている。

 知らずのうちに寝落ちしてしまい、目を覚ました時にはすでに夜だった。

「嘘、映画見たまま寝ちゃったの…」

 最悪。

 捨てられることがないように上手くやらないとって思ってたのに、

 おすすめの映画を教えてもらったのに途中で寝ちゃうとか、失礼すぎる。

「あ、起きた?」

 壱馬様がキッチンから顔を出した。

「す、すみません!まさか寝ちゃうなんて…」

 私は慌てて起き上がり、身を正した。

「いいよ。気が抜けたんでしょ。起こそうかと思ったけど、気持ちよさそうに寝てたからそのままにしておいたよ」

 壱馬様は優しく微笑んだ。

 気まで使わせてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「ほんとに、すみません」

「謝らなくていいよ。あ、海老好き?」

 海老…は好きだけど、どうして急に?

「…好きです」

 私は少し戸惑いながら答えた。

「良かった。夕食もう少しでできるから待ってて」
「夕食まで…」

 私の仕事なのに、

「座って待ってて」

 壱馬様は微笑みながら言った。

「はい…、ありがとうございます」

 私は感謝の気持ちを込めて答えた。

 私の存在意義は家事をすることなのに、壱馬様にさせてしまうなんて…。

 私はソファに座り直しながら、心の中で自分を責めた。


 壱馬様の優しさに甘えちゃ駄目だ。

 今は私に好感を持ってくれているかもしれないけど、その気持ちがいつ冷めるか分からない。

 私には特別なものが何もない。
 いつそのことに気づかれるか分からない。

 壱馬様が私の欠点に気づいた時、その好意が消えてしまうのではないかと不安になる。

 もしその時が来たら、繋ぎ止めておける唯一の方法は、従順でいることだけだと思う。
  
 彼の期待に応え、彼の望む通りに振る舞うことで、少しでも長く彼のそばにいられるようにしたい。


 それが私にできる唯一のことなんだから。






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