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第46話
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「か、帰りましょう」
これ以上何か言われたら、きっと心が持たない。
壱馬様の言葉が、優しすぎて、真っ直ぐすぎて、
嬉しいのに、どうしても逃げたくなってしまう。
だから、帰るという言葉で、そっと距離を取ろうとした。
「えぇ~花澄が止めたくせに」
壱馬の声は、少しだけ拗ねたようで、でもどこか楽しそうだった。
茶化すような口調なのに、その奥にある優しさが、じんわりと伝わってくる。
「もう、話したいことは全て話したので、大丈夫です」
なんとか平静を装って言ったけれど、声が少しだけ震えていた。
でも、彼は出発しようとしなかった。
ハンドルに手を添えたまま、エンジンの音だけが静かに響いている。
その沈黙が、妙に長く感じられて、胸の奥がざわついた。
「壱馬様…?」
思わず問いかける。
壱馬様の横顔をそっと覗き込むようにして、声をかけた。
何か考えているような表情。
その目が、どこか真剣で、胸がまた高鳴った。
「帰るから、一つだけお願い聞いてくれない?」
その言葉に、息が止まった。
お願い…。
壱馬様が私に何かを頼むなんて、一度もなかった。
しかも、一つだけなんて、まるで特別なことを言おうとしているみたいで。
心臓が、静かに跳ねた。
「お願いですか?」
声が少しだけ上ずった。
何を言われるんだろう。
怖いわけじゃない。
私に出来ることなんて、あるんだろうか。
「だめ?」
壱馬様の声は、少しだけ甘えているようだった。
そんな風に言われたら、断れるわけがない。
彼のお願いなら、きっと。
「私ができることならなんでも…」
言いながら、視線をそっと伏せた。
顔が熱くて、壱馬様の目を見られなかった。
でも、心の中では、何を言われても受け止めたいと思ってた。
それくらい、彼の存在が大きくなっていた。
沈黙が落ちる。
空気が、ふっと静かになる。
鼓動の音だけが、耳の奥で響いていた。
そして─────
「俺のこと、壱馬って呼んでよ」
その言葉が、静かに落ちてきた。
まるで、柔らかな羽が胸に触れたみたいに。
優しくて、でも真っ直ぐで。
私の心の奥に、そっと届いてきた。
一瞬、時間が止まった気がした。
本当に、すべての音が消えたような感覚。
壱馬様の言葉だけが、空気の中に残っていて、それ以外のものが、全部遠くに霞んでいった。
ずっと“壱馬様”と呼んできた。
それが礼儀だと思っていたし、距離を保つための言葉でもあった。
名前で呼ぶこと。
それは、ただの言い方の違いじゃない。
壱馬様との間にあった“線”を越えること。
心の中にあった“壁”を、そっと壊すこと。
呼びたい。
でも、呼んでしまったら…もう戻れない気がした。
壱馬様との関係が、確かに変わってしまう。
それが怖いわけじゃない。
彼の隣にいる時間が、
少しでも長く続いてほしいと願っていた。
でも、いつか来てしまう日に耐えられなくなる。
これ以上何か言われたら、きっと心が持たない。
壱馬様の言葉が、優しすぎて、真っ直ぐすぎて、
嬉しいのに、どうしても逃げたくなってしまう。
だから、帰るという言葉で、そっと距離を取ろうとした。
「えぇ~花澄が止めたくせに」
壱馬の声は、少しだけ拗ねたようで、でもどこか楽しそうだった。
茶化すような口調なのに、その奥にある優しさが、じんわりと伝わってくる。
「もう、話したいことは全て話したので、大丈夫です」
なんとか平静を装って言ったけれど、声が少しだけ震えていた。
でも、彼は出発しようとしなかった。
ハンドルに手を添えたまま、エンジンの音だけが静かに響いている。
その沈黙が、妙に長く感じられて、胸の奥がざわついた。
「壱馬様…?」
思わず問いかける。
壱馬様の横顔をそっと覗き込むようにして、声をかけた。
何か考えているような表情。
その目が、どこか真剣で、胸がまた高鳴った。
「帰るから、一つだけお願い聞いてくれない?」
その言葉に、息が止まった。
お願い…。
壱馬様が私に何かを頼むなんて、一度もなかった。
しかも、一つだけなんて、まるで特別なことを言おうとしているみたいで。
心臓が、静かに跳ねた。
「お願いですか?」
声が少しだけ上ずった。
何を言われるんだろう。
怖いわけじゃない。
私に出来ることなんて、あるんだろうか。
「だめ?」
壱馬様の声は、少しだけ甘えているようだった。
そんな風に言われたら、断れるわけがない。
彼のお願いなら、きっと。
「私ができることならなんでも…」
言いながら、視線をそっと伏せた。
顔が熱くて、壱馬様の目を見られなかった。
でも、心の中では、何を言われても受け止めたいと思ってた。
それくらい、彼の存在が大きくなっていた。
沈黙が落ちる。
空気が、ふっと静かになる。
鼓動の音だけが、耳の奥で響いていた。
そして─────
「俺のこと、壱馬って呼んでよ」
その言葉が、静かに落ちてきた。
まるで、柔らかな羽が胸に触れたみたいに。
優しくて、でも真っ直ぐで。
私の心の奥に、そっと届いてきた。
一瞬、時間が止まった気がした。
本当に、すべての音が消えたような感覚。
壱馬様の言葉だけが、空気の中に残っていて、それ以外のものが、全部遠くに霞んでいった。
ずっと“壱馬様”と呼んできた。
それが礼儀だと思っていたし、距離を保つための言葉でもあった。
名前で呼ぶこと。
それは、ただの言い方の違いじゃない。
壱馬様との間にあった“線”を越えること。
心の中にあった“壁”を、そっと壊すこと。
呼びたい。
でも、呼んでしまったら…もう戻れない気がした。
壱馬様との関係が、確かに変わってしまう。
それが怖いわけじゃない。
彼の隣にいる時間が、
少しでも長く続いてほしいと願っていた。
でも、いつか来てしまう日に耐えられなくなる。
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