運命の糸の先に

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第38話

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 雑貨屋をひと通り見て回ったものの、特にこれだと思うものはなく、

 店内を歩きながら瑞稀の様子をちらりと確認する。

 瑞稀は相変わらずポケットに手を突っ込んだまま、特に何かを探している様子もなく店の入り口の方を見ていた。  

 そろそろ次へ行こうかなんて思いながら、自然と出口へ向かう。

「次どうする?」  

 店を出てすぐ、ふと口にした言葉は、自分に向けたものでもあり、隣にいる瑞稀への問いかけでもあった。

 まだ一時間経ってないし…

「洋服、見てもいい?」  

 瑞稀は肩をすくめ、「勝手にしろ」といつもの調子で返してくる。

 結局こうやって付き合ってくれるのが分かっているから、どこか安心する。  

 ショッピングセンターの広い通路を歩きながら、瑞稀の歩調に合わせて何気なく店の看板を眺める。

 華やかなディスプレイや鮮やかな照明が並ぶ空間の中で、目的の服屋を見つけると自然と足が向いていく。 

 こうして一緒にいると、何か特別なことをするわけではなくても、なんとなく安心できるのが不思議だった。  

 服屋の店内は、雑貨屋よりも広く、カラフルな洋服が壁一面に並び、さらに華やかな空気が漂っていた。

 周囲の買い物客の楽しそうな声も聞こえてきて、その雰囲気に触れるだけで明るい気持ちになる。

 店内を歩くだけで目移りしてしまうほど、多種多様な服が揃っている。

 ワクワクした気持ちのまま、さっそくいくつかの洋服を手に取ると、試着室へと向かった。

 その間、瑞稀は店の隅で腕を組みながら待っている。  

「瑞稀、これどう?」  

 試着室のカーテンを開けると、ひらひらとしたワンピースを身に纏いながらくるりと一回転する。

 裾がふわりと広がり、その軽やかな動きに自分でも気分が上がる。

 瑞稀は一瞬だけこちらを見たが、すぐに目をそらした。  

「似合ってるんじゃねぇか?」  

 返ってきたのは、いつものそっけない言葉。

 どこか適当に言われたような気がして、口を尖らせる。  

「もう、ちゃんと見てよ!適当に言うのやめて」  

 少し頬を膨らませながら言うと、瑞稀は小さく息をつきながら、仕方なさそうにもう一度じっくり視線を向ける。  

 その目線がワンピースの柔らかな生地をなぞるように動くのを感じると、なんとなくくすぐったい気持ちが込み上げる。  

「服なんて自分が気に入ったもの買えばいいだろ」  

 ぼそっとした言葉が返ってくる。  

 もうっ。
 乙女心が分かってないんだから。

「瑞稀が似合うって言ってくれたら、買うんだけどなぁ」  

 少しむっとしながらじっと見つめる。

 適当に流されるのは嫌で、ちゃんとした返事が欲しくなってしまう。  

 瑞稀はその視線に負けたのか、小さく息をつくと、改めてじっくり服を見てから短く答えた。  

「悪くねぇ」  

 その一言に、思わず満足げな笑みを浮かべる。

 何気ない言葉だけど、ちゃんと見てくれたという事実が嬉しい。  

「そうでしょ?じゃあこれ買おうっと」  


「勝手にしろ」


 腕を組み直し、そう呟くだけだった。



 それでも、耳がほんのり赤く見えるのは、気のせいなのだろうか。
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