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杏奈の日常
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「もうっ。こんなかっこいい顔してるのに、なーにが心配なんだよ」
勢いよく言いながら、ぐっと楓樹の顔を両手で挟む。
整っている。
パーツ一つ一つが素晴らしくて、文句のつけ所がない。
それなのに、本人だけがそのことに気づいてないとか、そんなこと許されるわけ!?
じっとその顔を見つめながら、軽くため息をつく。
私がこの顔に生まれたもんなら、毎日自撮りして、鏡と友達になってたはずなのに。
「ちょっと、杏奈ちゃん。離して」
楓樹は戸惑ったように眉をひそめる。
そして、ジタバタしながら抵抗する。
少し困ったような表情すら、子犬みたいで可愛らしい。
「僕なんかって思うのやめる?」
ゆっくりと問いかける。
もう少し自分を認めてあげてもいいと思う。
いや、認めるべきだ。
楓樹は絶対に自分を過小評価しすぎ。
この顔面で「僕なんか」って、どの口が言ってんの!?
って感じだし。
まっすぐに視線を合わせて、返事を待つ。
「…やめる努力はする」
少し間を置いて、ポツリと返事がくる。
うんうん、それでいい。
努力でもいいから、まずはそう思うことが大事。
その答えが出ただけでも十分な進歩だ。
私は満足して手を離した。
「よし」
そう言って軽く笑った。ミッション完了。
さあ、これで自信もついてくれればいいんだけど。
そんなことを考えながら、ふと視線を感じる。
「楓樹…?」
その声が聞こえた瞬間、思わず楓樹の表情を見る。
驚いたように目を丸くしていた。
彼の視線の先には――
「…あ、碧、」
楓樹がぎこちなく名前を呼ぶ。
すごく緊張してるみたいだ。
だって、好きな人に変化した自分を見られる瞬間だもの。
「おっふ…」
声を潜めながら思わず言葉をこぼす。
タイミングが完璧すぎて、内心ガッツポーズをしたいくらいだった。
これはもう、碧くんにべた褒めしてもらう流れしかないでしょ。
「どうして眼鏡…」
碧くんが驚いたように楓樹を見る。
そうそう、そこに気づいてほしかったんだよ!絶対褒めるでしょ?
いや、かっこよくて言葉も出ないか?
これから、どんな展開になるのか見届けたい。
だけど、私にはするべき事がある。
「あー、宿題するの忘れてたなー。早くしないと。ってことで、先行ってるね!」
さりげなくそう言って、その場からさっと身を引く。
ここは空気を読んで二人きりにするべき。
最高のシチュエーションを作るには、余計な人間は速やかに撤退するのが鉄則。
二人だけの空間を作ることが、今の私の使命だ。
「あっ、」
楓樹の声が聞こえたけど、気にしない。
よしよし、これで二人きり。
あとは碧くんがべた褒めしてくれれば、楓樹の自信はうなぎ登りになること間違いなし!
勢いよく言いながら、ぐっと楓樹の顔を両手で挟む。
整っている。
パーツ一つ一つが素晴らしくて、文句のつけ所がない。
それなのに、本人だけがそのことに気づいてないとか、そんなこと許されるわけ!?
じっとその顔を見つめながら、軽くため息をつく。
私がこの顔に生まれたもんなら、毎日自撮りして、鏡と友達になってたはずなのに。
「ちょっと、杏奈ちゃん。離して」
楓樹は戸惑ったように眉をひそめる。
そして、ジタバタしながら抵抗する。
少し困ったような表情すら、子犬みたいで可愛らしい。
「僕なんかって思うのやめる?」
ゆっくりと問いかける。
もう少し自分を認めてあげてもいいと思う。
いや、認めるべきだ。
楓樹は絶対に自分を過小評価しすぎ。
この顔面で「僕なんか」って、どの口が言ってんの!?
って感じだし。
まっすぐに視線を合わせて、返事を待つ。
「…やめる努力はする」
少し間を置いて、ポツリと返事がくる。
うんうん、それでいい。
努力でもいいから、まずはそう思うことが大事。
その答えが出ただけでも十分な進歩だ。
私は満足して手を離した。
「よし」
そう言って軽く笑った。ミッション完了。
さあ、これで自信もついてくれればいいんだけど。
そんなことを考えながら、ふと視線を感じる。
「楓樹…?」
その声が聞こえた瞬間、思わず楓樹の表情を見る。
驚いたように目を丸くしていた。
彼の視線の先には――
「…あ、碧、」
楓樹がぎこちなく名前を呼ぶ。
すごく緊張してるみたいだ。
だって、好きな人に変化した自分を見られる瞬間だもの。
「おっふ…」
声を潜めながら思わず言葉をこぼす。
タイミングが完璧すぎて、内心ガッツポーズをしたいくらいだった。
これはもう、碧くんにべた褒めしてもらう流れしかないでしょ。
「どうして眼鏡…」
碧くんが驚いたように楓樹を見る。
そうそう、そこに気づいてほしかったんだよ!絶対褒めるでしょ?
いや、かっこよくて言葉も出ないか?
これから、どんな展開になるのか見届けたい。
だけど、私にはするべき事がある。
「あー、宿題するの忘れてたなー。早くしないと。ってことで、先行ってるね!」
さりげなくそう言って、その場からさっと身を引く。
ここは空気を読んで二人きりにするべき。
最高のシチュエーションを作るには、余計な人間は速やかに撤退するのが鉄則。
二人だけの空間を作ることが、今の私の使命だ。
「あっ、」
楓樹の声が聞こえたけど、気にしない。
よしよし、これで二人きり。
あとは碧くんがべた褒めしてくれれば、楓樹の自信はうなぎ登りになること間違いなし!
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