血に塗れた氷の騎士

fireworks

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14話 感傷

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14話 感傷
~氷のプリンセス~
 ようやく彼が眠った。明かりを消してから2時間、穏やかな寝息を立てている。何度か寝返りを打って、横向きになって落ち着いた。時折、思い詰めたような、息苦しい声が聞こえたけれど、今は大丈夫みたい。……眠りにつく前、医者に言われた通りの(薬の)量を守ったからだろう。床で寝落ちすることもあるから、ベッドにいるだけ良いことだ。床だと疲労は取れずたまっていくばかり。腰もやられるし、途中で起きてしまうかも。
 私は、カーテンのない窓から差し込む光に誘われて、目を覚ます。瞬きをして、口を開けたり閉じたりする。指を折り曲げて手を伸ばして、その感覚を取り戻す。息を吐いて古い空気を外に出す。前に落ちてきた髪を軽く手で梳かして耳にかける。ドレスについた埃をさっと払って、背筋を伸ばす。そろそろ動くときだ。でも、怖いものは怖い。
「……」
 足に体重をかけないよう、慎重に。かかとから外して、かといって爪先に力を入れず。もう11回目になる冒険だけど、薄暗く、硬い床は何度見ても足がすくむ。だけど進まないと。
 覚悟を決めて、目を瞑って飛び降りた。眠っているときだと大怪我を負うけれど、今の状態なら問題ない。頭から落ちた割に、鼻が少し痛い程度で済む。台座から離れて飛び降りて、なぜ元の身体に戻るのか、理由はよくわからないけど。自由に息ができて、昼と夜を堪能できるから、ほんの少しだけ楽しい。
 今は冬と春の季節の変わり目で、朝夜は基本的に冷えている。ドレスを着ているとはいえ、ノースリーブ同然で肌寒い。ソファーに掛けられていた上着を羽織り、ウッディの香りに包まれる。そしたら、床を這うようにして、別の部屋に移動する。普通に歩くより時間がかかるけど仕方がない。ドアノブに手を伸ばしてゆっくり開ける。ちょっとした会議室、小声で話していれば聞こえない。窓辺に近づいて、アルコーヴに腰掛けた。枕を抱き、喉に手を当てて声を出す準備を始める。
「ふぅ……」
 ずっと見ていたはずの星空の意味が変わった。こんなに穏やかな気持ちになれるなんて思っていなかったから。嫌だったこと、歯を食いしばったこと、過去を洗い流すかのよう。ここには、嫌なものがない。特別好きすぎるものもない。きらめく星、照らす月。黒には白が、光が映える。季節の移り変わりを教えてくれる。
(泣いてしまうほど、感傷に浸っているのね)
 ありふれた日常が愛おしい。波がなくて、揺らがなくて。
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