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25話 改正
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25話 改正
こんなときなのに、フローリアのことを思い浮かべた。ただ適当に話しているだけで、俺が勘違いしているかもしれないけど。拒絶はなくて、自由に話をして。ブレイカとは比べものにならない。ブレイカを見たときの拒絶が蘇る。言葉では説明しがたい違和感。
そもそもふたりは別人で、生まれも育ちも環境もすべて違う。比べるなんてお門違いだろうか。
(参加するべきではなかったな)
なんて思いながら、立ち去ろうとした。ブレイカはというと、さっきからずっと友人と楽しそうに談笑している。この調子だと、俺がいなくなったことにも気づかない。気づいてほしい、どうして、と言えるほど、俺の立場は高くて仲が良いわけではない。何か言ったって、あしらわれ、無視され、なかったことにされるだけだ。
かつて両親にそうされたように。
「……?」
言及しなかった違和感。ブレイカは少し太っただろうか。ドレスのサイズを間違えただけ? レディーに対して言うことではないけれど、このときは話しかける勇気がなくて、その場を後にした。
~暗黒の扉~
「これも違う、はぁ、本当いやになっちゃう。なあんにも出てこない。収穫なし……ふ~ん」
長針と短針が重なる闇夜で、影に隠れたひとりの女性がため息をついた。ソファーに深く腰掛け、1枚の紙をペラペラ動かして遊ぶ。その表情は退屈で、先ほどの熱さまで吹き飛ばしてしまいそうだった。ネグリジェ1枚で、ボサボサの髪をおろし、あくびを1回。面白くないと紙を破いて紙吹雪にして、ベッドに横たわるひとりの男性を嬉しそうに見つめた。男性は服を何も着ておらず、抱いていた枕を頭の下に置いた。
「✕✕、私を✕にしてくれるのですよね?」
「ああ。そう約束したのだから、当然だろう。もちろんお前が相応の代償を払えば、な」
女性はソファーから下りて、男性の胸に飛び込んだ。ひとまず男性は抱きしめて、見えないところでニヤリと笑う。
「あははははっ。嬉しいですわ。必ず守ってくださいね」
女性が疲れて眠りについたころ、男性はベッドから抜け出してナイトウェアを着た。森に隠れた質素な宮殿を出て、黄金に輝く立派な宮殿へと移動する。玄関ホールで彼を迎え入れるひとりの女性と、数人の使用人。彼の上着やアクセサリーといった荷物は彼らが受け取り、きらびやかなドレスを着た女性は頭を下げた。
「本当に✕✕の座をあの者に渡すのですか」
その問いかけに、男性は鼻で笑った。
「そんなことするわけないだろ。愛人にも満たない遊び相手だよ」
女性は闇と同化するような無表情だったけど、彼に注意を促した。先程の女性とは違い、落ち着いていて従順な✕✕のお人形。ただ、このときばかりは夫の心配をした。
「くれぐれも法律違反をなさらないようご注意ください。✕✕とはいえ、公にしていない愛人を置くことは浮気に当たります。いずれにしろ極刑は免れないですから、お気をつけください」
ふたりはまっすぐ歩き、ふたりのための寝室のドアを開けた。
「あはは。古の歴史に囚われるなんて愚かしい。そんな法律変えてやる。万人を愛することは当たり前だろ?」
背後の不気味な月が光をかき消し、星空を掠めた。
こんなときなのに、フローリアのことを思い浮かべた。ただ適当に話しているだけで、俺が勘違いしているかもしれないけど。拒絶はなくて、自由に話をして。ブレイカとは比べものにならない。ブレイカを見たときの拒絶が蘇る。言葉では説明しがたい違和感。
そもそもふたりは別人で、生まれも育ちも環境もすべて違う。比べるなんてお門違いだろうか。
(参加するべきではなかったな)
なんて思いながら、立ち去ろうとした。ブレイカはというと、さっきからずっと友人と楽しそうに談笑している。この調子だと、俺がいなくなったことにも気づかない。気づいてほしい、どうして、と言えるほど、俺の立場は高くて仲が良いわけではない。何か言ったって、あしらわれ、無視され、なかったことにされるだけだ。
かつて両親にそうされたように。
「……?」
言及しなかった違和感。ブレイカは少し太っただろうか。ドレスのサイズを間違えただけ? レディーに対して言うことではないけれど、このときは話しかける勇気がなくて、その場を後にした。
~暗黒の扉~
「これも違う、はぁ、本当いやになっちゃう。なあんにも出てこない。収穫なし……ふ~ん」
長針と短針が重なる闇夜で、影に隠れたひとりの女性がため息をついた。ソファーに深く腰掛け、1枚の紙をペラペラ動かして遊ぶ。その表情は退屈で、先ほどの熱さまで吹き飛ばしてしまいそうだった。ネグリジェ1枚で、ボサボサの髪をおろし、あくびを1回。面白くないと紙を破いて紙吹雪にして、ベッドに横たわるひとりの男性を嬉しそうに見つめた。男性は服を何も着ておらず、抱いていた枕を頭の下に置いた。
「✕✕、私を✕にしてくれるのですよね?」
「ああ。そう約束したのだから、当然だろう。もちろんお前が相応の代償を払えば、な」
女性はソファーから下りて、男性の胸に飛び込んだ。ひとまず男性は抱きしめて、見えないところでニヤリと笑う。
「あははははっ。嬉しいですわ。必ず守ってくださいね」
女性が疲れて眠りについたころ、男性はベッドから抜け出してナイトウェアを着た。森に隠れた質素な宮殿を出て、黄金に輝く立派な宮殿へと移動する。玄関ホールで彼を迎え入れるひとりの女性と、数人の使用人。彼の上着やアクセサリーといった荷物は彼らが受け取り、きらびやかなドレスを着た女性は頭を下げた。
「本当に✕✕の座をあの者に渡すのですか」
その問いかけに、男性は鼻で笑った。
「そんなことするわけないだろ。愛人にも満たない遊び相手だよ」
女性は闇と同化するような無表情だったけど、彼に注意を促した。先程の女性とは違い、落ち着いていて従順な✕✕のお人形。ただ、このときばかりは夫の心配をした。
「くれぐれも法律違反をなさらないようご注意ください。✕✕とはいえ、公にしていない愛人を置くことは浮気に当たります。いずれにしろ極刑は免れないですから、お気をつけください」
ふたりはまっすぐ歩き、ふたりのための寝室のドアを開けた。
「あはは。古の歴史に囚われるなんて愚かしい。そんな法律変えてやる。万人を愛することは当たり前だろ?」
背後の不気味な月が光をかき消し、星空を掠めた。
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