血に塗れた氷の騎士

fireworks

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34話 薄っぺらな感想

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34話 薄っぺらな感想
「実は、今日から臨時の先生として学生に教えることが可能になりました」
「おめでとうございます」
「今まで事務員と同じ扱いだったので、臨時でも先生になれて嬉しいです。それで……」
 いつも通りのランチタイム、フローリアが満面の笑みで話してくれた。いつしか日常になりつつある、食事の時間や何気ない会話。心地よくて穏やかな気持ちになる。涼やかな夜のように、水面が揺れて流れるように。
「そこで、セウェルスが学生役になって、私の授業スタイルを見ていただけますか?」
「いいですよ。楽しみです」
「ありがとうございます。昼休憩が終わったら準備しますので……」
 どのみち研究室にこもっているだろうし、提案を了承した。フローリアは手をたたいて喜び、カモミールを1杯飲む。今日のランチのメインは、メカジキのステーキとボロネーゼ。会話を終え、フォークを取って食事を始める。
 食べ終わった後、中庭のパーゴラの下で待ち合わせをした。シェード付きだから、眩しい日差しを遮れる。彼女はいつものバッグを抱え、丸いテーブルに教材を広げる。そのうち1枚の紙は俺に渡され、ざっと見ると古語の問題が5問あった。
 彼女が説明を始め、俺は黙って話を聞く。大事そうなところや、わからないところをメモして。解説が終わるころに疑問を尋ねると、丁寧に解説してくれる。無事に5問解けて、肩の力が抜けた。学生のころ、古語を過剰に恐れていたのに、解いてみたら単純化できた。……これって考えすぎなのかな?
「教えていただきありがとうございました。古語というので身構えていましたが、杞憂だったようです。こんなに楽しく学べるなんて知りませんでした」
「こちらこそありがとうございます。……」
 古語の授業が終わると、次の場所……訓練場へと移動した。俺は受けや対戦相手にはなれないから、近くで見学しているだけ。まともに運動したことなくて、「綺麗でした」「お上手ですね」とかいう薄っぺらな感想が空中に浮かぶ。もちろんそんなこと本人には言えないから、頭を捻って言葉を絞り出す。或いは、クラスメートが訓練に励む様子を思い出して。先生はどんな動きをしていただろうか? どんなアドバイスをしていた? ぼんやりと、何も考えずに、通り過ぎて。感覚を研ぎ澄まそうとしたって、中身のない空虚が口から飛び出る。
 俺は、騎士道より古語が上位のものだと思っていたけど、彼女にとってはそうではないらしい。剣を握り、人に見立てた人形に対して、技を繰り出す姿は生き生きしている。目にも留まらぬ剣さばきだ。始めから終わりまで、指の先や揺れる髪に目を奪われる。「誇りを持った騎士」……はあながち嘘ではないだろう。彼女は今を生きる女性の騎士だ。
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