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49話 採用
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49話 採用
「だれって、私は最初から言ってるじゃない! あなたよ!」
「どうしてそうなるのですか。あなたは妊娠7か月で、私たちは半年前に初めて会った。どう考えても計算が合わないのです。おわかりですか?」
「だからそれが違うと言ってるの! ずっと前に会って、幼いころから縁談の約束までしていたのよ」
語気が増して怒り沸騰中のブレイカ。ちょっとつついたくらいで、粘着的にくっついてくる。生気のない瞳に、青くなった頬、真っ赤な耳。酷い顔だ。可愛いか否かの次元を超えて、化け物へと変わってしまった。
「そんなこと絶対にありえません。半年前『はじめまして』と挨拶したことを忘れたのですか? 縁談の話は今年の3月に初めて出ました。そこまで言うのなら、私たちが、いつどこでどのように知り合ったのか教えてください」
「4、5歳のときだわ! 本当よ!」
はぁ、とため息が出る。
「私の両親は病弱な息子を恥に思い、すべての縁談を破棄したと言っています。ましてや、ストローマの話は聞いたことがありません」
これだけ強く言ってもブレイカは引き下がらない。今度は、話をそらしてくる。
「……なんなの、あんた、さっきから私を悪者扱いしてるじゃない」
「妊娠を隠して婚約と結婚をしたからですよね? あなたが責められて当たり前ですけれど」
「だからそれが違うの! 浮気じゃなくてあなたの子よ! まったく、人の話を聞きなさいよ!」
会話が終わっていないのに無理矢理被せてきて、自分の意見ばかりゴリ押ししようとするブレイカ。時間の無駄だ。立ち上がり、医者の診断結果をバッグに入れてドアを開けた。
「仕事があるのでここまでにします。あなたがまだ言い訳を吐く暇があるなら、別の時間に付き合いますよ」
「負け犬の遠吠えでもしてろ! ばーか!」
捨て台詞は子供じみて、とても貴族令嬢だとは思えない汚い言葉遣いだった。
同時刻、学園長と採用担当の事務職員がティータイムを楽しんでいた。場所は中庭、パーゴラの下。爽やかな風や、秋の涼しさを感じるのにぴったりだ。スッキリとした柔らかな風味の紅茶が提供される。事務職員が気にしていたことは、フローリア・メレルズ、学園長の独断で採用された謎の女性だった。
「それにしても、どうしてあの人を雇ったのですか?」
思い切って尋ねると、学園長は頷く。
「ああ。メレルズくんのことか? 彼女はとても優秀な騎士でねえ。古語の実力も確かなのだよ」
「ですが、どこのだれともわからない人に先生を任せるとはどういうことですか!?」
職員はその真意を問うと、学園長は紅茶を一口飲んで整然と答えた。
「彼女は語学力と武術に優れた逸材だ。古語の知識はもちろん、騎士道を極めている。特に後者は、国内外を見ても彼女の右に出る者はいない」
「しかし――」
職員は悔しそうに下唇を噛み、言葉を詰まらせる。
「彼女は剣で食べていける唯一の女性と言えるだろう。あの剣さばき――間違いなくティルビーの型を習得している。1000年以上前、古語と同時期に霞んだシルバー・ヴァースの正当後継者だ。世界中を探しても見つからないほどの剣士が教師になりたいと言っている。子供たちの未来を考え、雇うことにしたのだよ」
「だれって、私は最初から言ってるじゃない! あなたよ!」
「どうしてそうなるのですか。あなたは妊娠7か月で、私たちは半年前に初めて会った。どう考えても計算が合わないのです。おわかりですか?」
「だからそれが違うと言ってるの! ずっと前に会って、幼いころから縁談の約束までしていたのよ」
語気が増して怒り沸騰中のブレイカ。ちょっとつついたくらいで、粘着的にくっついてくる。生気のない瞳に、青くなった頬、真っ赤な耳。酷い顔だ。可愛いか否かの次元を超えて、化け物へと変わってしまった。
「そんなこと絶対にありえません。半年前『はじめまして』と挨拶したことを忘れたのですか? 縁談の話は今年の3月に初めて出ました。そこまで言うのなら、私たちが、いつどこでどのように知り合ったのか教えてください」
「4、5歳のときだわ! 本当よ!」
はぁ、とため息が出る。
「私の両親は病弱な息子を恥に思い、すべての縁談を破棄したと言っています。ましてや、ストローマの話は聞いたことがありません」
これだけ強く言ってもブレイカは引き下がらない。今度は、話をそらしてくる。
「……なんなの、あんた、さっきから私を悪者扱いしてるじゃない」
「妊娠を隠して婚約と結婚をしたからですよね? あなたが責められて当たり前ですけれど」
「だからそれが違うの! 浮気じゃなくてあなたの子よ! まったく、人の話を聞きなさいよ!」
会話が終わっていないのに無理矢理被せてきて、自分の意見ばかりゴリ押ししようとするブレイカ。時間の無駄だ。立ち上がり、医者の診断結果をバッグに入れてドアを開けた。
「仕事があるのでここまでにします。あなたがまだ言い訳を吐く暇があるなら、別の時間に付き合いますよ」
「負け犬の遠吠えでもしてろ! ばーか!」
捨て台詞は子供じみて、とても貴族令嬢だとは思えない汚い言葉遣いだった。
同時刻、学園長と採用担当の事務職員がティータイムを楽しんでいた。場所は中庭、パーゴラの下。爽やかな風や、秋の涼しさを感じるのにぴったりだ。スッキリとした柔らかな風味の紅茶が提供される。事務職員が気にしていたことは、フローリア・メレルズ、学園長の独断で採用された謎の女性だった。
「それにしても、どうしてあの人を雇ったのですか?」
思い切って尋ねると、学園長は頷く。
「ああ。メレルズくんのことか? 彼女はとても優秀な騎士でねえ。古語の実力も確かなのだよ」
「ですが、どこのだれともわからない人に先生を任せるとはどういうことですか!?」
職員はその真意を問うと、学園長は紅茶を一口飲んで整然と答えた。
「彼女は語学力と武術に優れた逸材だ。古語の知識はもちろん、騎士道を極めている。特に後者は、国内外を見ても彼女の右に出る者はいない」
「しかし――」
職員は悔しそうに下唇を噛み、言葉を詰まらせる。
「彼女は剣で食べていける唯一の女性と言えるだろう。あの剣さばき――間違いなくティルビーの型を習得している。1000年以上前、古語と同時期に霞んだシルバー・ヴァースの正当後継者だ。世界中を探しても見つからないほどの剣士が教師になりたいと言っている。子供たちの未来を考え、雇うことにしたのだよ」
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