心の面影

fireworks

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2章 うんめいにみちびかれて

35話 私の

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 衝撃的なシーンが続きます。閲覧注意です。
































35話 私の
Nona Side
 私の人生は灰色だった。今もずっとそう。音のない世界で、何もない空虚で、死ぬときを待っている。でも、私は最初から不幸せだったわけじゃない。愛し、愛してくれる家族がいて、違う自分がいた。
 幸せを永遠にしたいくらいの思い出。私の両親は何十年も前に亡くなった。そうして、あなたと出会い、結婚し、子供を授かった。こんな私でも、また幸せになれると勘違いしていた。
 私という人間が間違っていた。私は生まれるべき人じゃなかった。幸せになれると願うんじゃなかった。あなたに出会うべきじゃなかった。結婚するんじゃなかった。殺してほしかった。死んでしまいたかった。嫌いになってほしかった。離婚したかった。あなたには別の幸せを見つけてほしかった。

 あなたとの子供がなかなかできなくて、気を揉んでいた。本当はもっと前からほしかったのだけど……現実はうまくいかなかった。それでも、2回、確かに、私のお腹に命が宿った。ずっとほしかった。愛するあなたと、愛する我が子と過ごす日を心待ちにしていた。妊娠がわかると、より一層日常生活に気を配った。重いものを持たないようにするとか、食事を見直すとか。社交界を休み、屋敷でのんびり過ごした。読み聞かせをしたり、語りかけたり。赤ちゃんの着るお洋服を作って、子供用品を見て回った。
 あなたも似たような気持ちなのか、仕事の量を減らして、早めに切り上げてくれた。休憩中は必ず部屋に来て、体調を心配し寄り添ってくれた。あまり気を遣われると、さすがに恥ずかしかったけれど。一緒に寝て、食事して、たまにティーパーティーを開催して、子供時代を懐かしんで話をして。そんな何気ない日常の積み重ねはかけがえのないもので、私の宝物だった。
 あなたも、私も、この子は生まれてきてくれると思っていた。

(あ、れ……)
 ――気付いたら、私は階段から転げ落ちて、意識が朦朧としていた。視界が揺れて、鼓動が速くなる。全身が痛いと悲鳴を上げ、泣いている。だれかの泣き声。わからない。私が何者なのか、ここがどこなのか。急に忘れてしまったようだ。
(ここ……どこ……? しらない……)
 お腹が潰れていたとようやく気付く。床に押し付けてしまった。このときはまだ、生きていたかもしれない。そう信じて、折れ曲がった腕を必死に動かし、お腹に当てた。さする力はなかった。
(あか……ちゃん……は……? まも……らな……いと……)
 前から落ちてしまった。頭が尋常じゃないほど痛い。硬い床にぶつけたからか。朧気な意識の中で、ろくに動かない身体で、祈る。この子だけは守りたい。私が死んでも、この子が生きていてくれればいい……。
(わたしの……あかちゃん……)
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