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1章 壊れた心
27話 起きてるよ
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無事に帰宅できた。オーレリアンのおかげだ。道案内してもらって、防寒具も借りたなんて感謝すればいいのやら。彼との約束を破った罪悪感よりも、オーレリアンの柔らかい表情やさりげない優しさが嬉しかったから。朝が来ればそのマイナスな感情も消え、穏やかな1日の始まりを迎えた。
手袋やマフラーは数時間では乾かなくて、次の日に渡すことを伝えた。オーレリアンは「大丈夫だよ」と控えめに笑った。てっきり言葉の雨を食らうかと思っていたから、拍子抜けした。固まる私を見ても、オーレリアンの表情は変わらなかった。……なんでだろう? 今まで向けられた顔や言葉が嘘のようみたい。妹はいつも殺気立って、近くにいる両親は落ち着かない。クラスメートの一部の人たちは顔色を伺い、目を伏せ、曖昧に笑う。オーレリアンだって同じクラスメートなのに、だれよりも人間らしかった。
いよいよ、来週から試験が始まる。この日のために基礎を固め応用問題を繰り返し解き、ミスを減らしてきた。間違いが多いところや、わからないところは早めに解決させ、先生の協力もあってここまで来た。その成果を充分に感じている。あとは本番の問題を解くだけ。決して簡単なことではなかったけど、後悔はしていない。私の本気をここにぶつける――!
今日は3時間だけ眠り、いつも通りブレックファストを作った。ブレッド、豚肉ともやしの炒め物、昨夜の加熱ミネストローネ。時間がなくて炒め物にしてしまった。
「いただきます」
ルームウェアを着たままの両親は、椅子に座ってゆっくりと咀嚼する。疲れ切った姿は相変わらずで、背中が曲がっている。充血、目の下のクマ、刻まれたしわ、白髪交じりの髪。休日は息を止めるように眠っていても、12時間ほど家から離れればだれだって疲れる。仕方ないけれど、それが家庭を支える両親のありのままの姿だった。
「ヴィアを起こしてくるね」
「……ああ」
2階に上がり、ヴィアの部屋をノックした。返事はないけど、アラームが鳴っている。……全然起きそうにないな。仕方なく部屋に入り、大きく口を開けお腹を出している妹の肩を揺らした。
「ヴィア、朝よ。起きて……」
「……んー」
「時間がないわ。早く食べないと……」
強く揺さぶっても、起きそうにない。足の部分から布団と毛布をめくり、ソファーにかけた。ゴロゴロと妹は眠っていて、私は息を吐く。すると、突然、特大の蹴りが私の脇腹にヒットした。
「!?」
「……むにゃ」
続けてもう1発。今度はお腹を蹴られ、うっと低い声が出た。それでも、妹は起きない。ベッドから離れても起きず、私は途方に暮れてしまった。
「どうすればいいのかしら……」
手袋やマフラーは数時間では乾かなくて、次の日に渡すことを伝えた。オーレリアンは「大丈夫だよ」と控えめに笑った。てっきり言葉の雨を食らうかと思っていたから、拍子抜けした。固まる私を見ても、オーレリアンの表情は変わらなかった。……なんでだろう? 今まで向けられた顔や言葉が嘘のようみたい。妹はいつも殺気立って、近くにいる両親は落ち着かない。クラスメートの一部の人たちは顔色を伺い、目を伏せ、曖昧に笑う。オーレリアンだって同じクラスメートなのに、だれよりも人間らしかった。
いよいよ、来週から試験が始まる。この日のために基礎を固め応用問題を繰り返し解き、ミスを減らしてきた。間違いが多いところや、わからないところは早めに解決させ、先生の協力もあってここまで来た。その成果を充分に感じている。あとは本番の問題を解くだけ。決して簡単なことではなかったけど、後悔はしていない。私の本気をここにぶつける――!
今日は3時間だけ眠り、いつも通りブレックファストを作った。ブレッド、豚肉ともやしの炒め物、昨夜の加熱ミネストローネ。時間がなくて炒め物にしてしまった。
「いただきます」
ルームウェアを着たままの両親は、椅子に座ってゆっくりと咀嚼する。疲れ切った姿は相変わらずで、背中が曲がっている。充血、目の下のクマ、刻まれたしわ、白髪交じりの髪。休日は息を止めるように眠っていても、12時間ほど家から離れればだれだって疲れる。仕方ないけれど、それが家庭を支える両親のありのままの姿だった。
「ヴィアを起こしてくるね」
「……ああ」
2階に上がり、ヴィアの部屋をノックした。返事はないけど、アラームが鳴っている。……全然起きそうにないな。仕方なく部屋に入り、大きく口を開けお腹を出している妹の肩を揺らした。
「ヴィア、朝よ。起きて……」
「……んー」
「時間がないわ。早く食べないと……」
強く揺さぶっても、起きそうにない。足の部分から布団と毛布をめくり、ソファーにかけた。ゴロゴロと妹は眠っていて、私は息を吐く。すると、突然、特大の蹴りが私の脇腹にヒットした。
「!?」
「……むにゃ」
続けてもう1発。今度はお腹を蹴られ、うっと低い声が出た。それでも、妹は起きない。ベッドから離れても起きず、私は途方に暮れてしまった。
「どうすればいいのかしら……」
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