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2章 殺してしまいたい
74話 これでまんぞく?
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残酷表現があるので閲覧注意です。続きます。
『え?』
『なに!?』
『ローレンティア? ローレンティア!』
最初は、オーレリアンの声がはっきり聞こえた。だけど、それもすぐ終わり。キツく強く絞め上げて。止めないと。もっと強く。もっと強く。もっと強く。強く。強く。強く。
(良かった。良かった。やっと行ける)
彼の望む彼女には程遠い。やはり、彼の目の前でもいいから、さっさと絶つべきだった。私の命ほど無駄なものはない。早く消えたい。息を止めて、吸わないよう力を入れる。無駄だから。要らないから。棄てられるべきだから。廃棄物だから。空気だから。消えるべきだから。
『なんで……いや……』
『……』
床に倒れ、息を閉じ込める。鼻と口を塞いでしまえ。潰してしまえ。スマホの声が遠ざかる。もう、なんていっているのかわからない。じゅもんみたい。かれのことばみたい。
みなければよかった。きかなければよかった。ふれなければよかった。あじをたしかめなければよかった。
だって、このせかいに、いみのあるものなんてなにひとつないから。いらないものがおおすぎる。やはり、うまれたことがつみだった。
ようやくわかったの。はじめてしれたの。
これでまんぞく?
『あ……ううう……』
見慣れたナイフが床に落ち、ガシャンと音を立てた。殴られたように痛みが走る。その音じゃなくて、何も触れてないのに、突き刺して滑ったような感覚。包帯の上から傷つけて、白が赤に染まる。ああ、またやってしまった。人前でやるべきじゃないのに、よりによってオーレリアンとの通話中に起こったらしい。
消えられたはずが、ごく普通に瞬きをしている。残念なことに、私は息をして生きている。確かに存在する。……おかしい。やったはずなのに。
『何か落ちた? 体調悪い? 病院に行こうか?』
『……?』
『車出そうか? 今から……』
『……』
ひとまず、床に落ちたナイフを拾って掴む。あ、間違えて刃を握ってしまった。右手のひら、少しずつ血が滲む。ティッシュを何枚か取り、その上にナイフを置いた。
『あ、違うの。そうじゃなくて』
普通に話せる。言葉にできる。おかしい。笑うことで精一杯だったはず。何かがおかしい。
だれか、びょうしんのまわるむきをかえた?
『私、何をしていたの?』
独り言だったのに、オーレリアンは聞き取って素直に答える。
『えっと……泣いてたよ。俺が電話して話していたけど、いきなり静かになったから……呼びかけてた。そのあとは泣いて……』
『そうだったの。変なことしてごめんなさい。気が動転していたみたいなの』
オーレリアンの言葉に被せて、無理矢理ぶつ切りにする。血が……止まらない。間違えて両手を傷つけてしまった。
『大丈夫じゃないよね? やっぱり病院に行く? ハイスクールはお休みして家で休むことも必要……』
『だいじょ、元気だから。電話に出てくれてありがとう。もう寝ないと』
『え?』
『なに!?』
『ローレンティア? ローレンティア!』
最初は、オーレリアンの声がはっきり聞こえた。だけど、それもすぐ終わり。キツく強く絞め上げて。止めないと。もっと強く。もっと強く。もっと強く。強く。強く。強く。
(良かった。良かった。やっと行ける)
彼の望む彼女には程遠い。やはり、彼の目の前でもいいから、さっさと絶つべきだった。私の命ほど無駄なものはない。早く消えたい。息を止めて、吸わないよう力を入れる。無駄だから。要らないから。棄てられるべきだから。廃棄物だから。空気だから。消えるべきだから。
『なんで……いや……』
『……』
床に倒れ、息を閉じ込める。鼻と口を塞いでしまえ。潰してしまえ。スマホの声が遠ざかる。もう、なんていっているのかわからない。じゅもんみたい。かれのことばみたい。
みなければよかった。きかなければよかった。ふれなければよかった。あじをたしかめなければよかった。
だって、このせかいに、いみのあるものなんてなにひとつないから。いらないものがおおすぎる。やはり、うまれたことがつみだった。
ようやくわかったの。はじめてしれたの。
これでまんぞく?
『あ……ううう……』
見慣れたナイフが床に落ち、ガシャンと音を立てた。殴られたように痛みが走る。その音じゃなくて、何も触れてないのに、突き刺して滑ったような感覚。包帯の上から傷つけて、白が赤に染まる。ああ、またやってしまった。人前でやるべきじゃないのに、よりによってオーレリアンとの通話中に起こったらしい。
消えられたはずが、ごく普通に瞬きをしている。残念なことに、私は息をして生きている。確かに存在する。……おかしい。やったはずなのに。
『何か落ちた? 体調悪い? 病院に行こうか?』
『……?』
『車出そうか? 今から……』
『……』
ひとまず、床に落ちたナイフを拾って掴む。あ、間違えて刃を握ってしまった。右手のひら、少しずつ血が滲む。ティッシュを何枚か取り、その上にナイフを置いた。
『あ、違うの。そうじゃなくて』
普通に話せる。言葉にできる。おかしい。笑うことで精一杯だったはず。何かがおかしい。
だれか、びょうしんのまわるむきをかえた?
『私、何をしていたの?』
独り言だったのに、オーレリアンは聞き取って素直に答える。
『えっと……泣いてたよ。俺が電話して話していたけど、いきなり静かになったから……呼びかけてた。そのあとは泣いて……』
『そうだったの。変なことしてごめんなさい。気が動転していたみたいなの』
オーレリアンの言葉に被せて、無理矢理ぶつ切りにする。血が……止まらない。間違えて両手を傷つけてしまった。
『大丈夫じゃないよね? やっぱり病院に行く? ハイスクールはお休みして家で休むことも必要……』
『だいじょ、元気だから。電話に出てくれてありがとう。もう寝ないと』
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