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2章 殺してしまいたい
84話 心配してやってんだ
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「新作ゲーム出たんだよ! 早く買って!」
母が車を運転し、家族4人でショッピングモールに出掛けた。ふたりからすれば、せっかくの休日をゆっくりできなくてさぞ残念だろう。なんだか父は最近不機嫌で、腕と足を組んで怪訝な顔をしている。母はそんな父の顔色をうかがうので精一杯、運転も慎重で2回クラクションを鳴らされた。
「もういい。帰りは俺が運転する」
「はい……」
父の鋭い光に逆らえず、母はゆっくり頷いた。
「ラウ」
「何?」
ルームミラーに父の姿が映り、私はいつも通りの笑みを顔に貼り付ける。
「……なんでもない」
「……?」
だけど、父は話すことをやめた。目を動かすと、はしゃいだ妹がしゃっくりを起こしている。
「ひぐっ! ぐっ」
「大変! 止まりましょうか!」
母は困惑と焦りに見舞われ、ブレーキを踏むのが遅れる。シートベルトで身体が強く締め付けられてお腹が痛い。追突は免れたけど、父の大きな声に耳を塞いだ。
「運転に集中しろ!」
もっともな言葉。母の肩に力が入った。声が震えている。
「はい……」
母は、父を恐れているんだ。
「なんっ……」
ただ、空気を読めない妹は、息に苦しみながらも不満を口にする。私は座り直した。壊れたように狂った妹なんか興味ない。
「私以外を……ひぐっ! 優先させるなんて!」
なんて、顔を真っ赤にした情けない姿で喚いていた。
「いいか。電話に絶対出ろ。あと、変なやつにはついていくな。時間を守れ。有限だからな」
「はい」
「変な店には行くな。ここにだけ行け」
「え、ああ……ありがとう」
駐車して車の中から降りる。店内に入り、大きな広場があったため立ち止まった。土日ということもあり、平日の3倍近く人が遊びに来ている。老若男女様々な人がすれ違い、外の風に吹かれる。業務用の暖房は開店から閉店まで作動しているけど、出入り口であるドア付近はどうしても冷たくなる。外は極寒、中は眠たくなるほど暑い。マフラーや手袋は外し、たたんでバッグの中に入れた。遅れて3人と合流し、首筋に伸びた手をおさえて落とす。
私はゲームに興味がないから、両親と妹、私で分かれる。父は相変わらず冷たい目で私を見下ろし、威圧的な態度で接する。
スマホに送られた5枚の画像。よく見ると、赤で✕、青で◯が描かれている。何かと思って尋ねようとしたけど、父に先を越された。
「お前が行っていいところはそれだけだ。あとは禁ずる。では、13時を過ぎたらフードコートで集まるように」
「うん。ありがとう」
「そんなのどうでもいいから! さっさと並ぶよ! 時間がなくなっちゃう~」
妹は外ではいい面をしている。ぶりっこポーズで(おそらく本人は可愛いと意識して)あざとく見せようとしている。もちろん、両親はそんなものに興味がない。娘を真ん中に挟み、1階のゲームコーナーへと急いだ。
画像をもらったのはいいとして、これ、本当に必要なもの……?
母が車を運転し、家族4人でショッピングモールに出掛けた。ふたりからすれば、せっかくの休日をゆっくりできなくてさぞ残念だろう。なんだか父は最近不機嫌で、腕と足を組んで怪訝な顔をしている。母はそんな父の顔色をうかがうので精一杯、運転も慎重で2回クラクションを鳴らされた。
「もういい。帰りは俺が運転する」
「はい……」
父の鋭い光に逆らえず、母はゆっくり頷いた。
「ラウ」
「何?」
ルームミラーに父の姿が映り、私はいつも通りの笑みを顔に貼り付ける。
「……なんでもない」
「……?」
だけど、父は話すことをやめた。目を動かすと、はしゃいだ妹がしゃっくりを起こしている。
「ひぐっ! ぐっ」
「大変! 止まりましょうか!」
母は困惑と焦りに見舞われ、ブレーキを踏むのが遅れる。シートベルトで身体が強く締め付けられてお腹が痛い。追突は免れたけど、父の大きな声に耳を塞いだ。
「運転に集中しろ!」
もっともな言葉。母の肩に力が入った。声が震えている。
「はい……」
母は、父を恐れているんだ。
「なんっ……」
ただ、空気を読めない妹は、息に苦しみながらも不満を口にする。私は座り直した。壊れたように狂った妹なんか興味ない。
「私以外を……ひぐっ! 優先させるなんて!」
なんて、顔を真っ赤にした情けない姿で喚いていた。
「いいか。電話に絶対出ろ。あと、変なやつにはついていくな。時間を守れ。有限だからな」
「はい」
「変な店には行くな。ここにだけ行け」
「え、ああ……ありがとう」
駐車して車の中から降りる。店内に入り、大きな広場があったため立ち止まった。土日ということもあり、平日の3倍近く人が遊びに来ている。老若男女様々な人がすれ違い、外の風に吹かれる。業務用の暖房は開店から閉店まで作動しているけど、出入り口であるドア付近はどうしても冷たくなる。外は極寒、中は眠たくなるほど暑い。マフラーや手袋は外し、たたんでバッグの中に入れた。遅れて3人と合流し、首筋に伸びた手をおさえて落とす。
私はゲームに興味がないから、両親と妹、私で分かれる。父は相変わらず冷たい目で私を見下ろし、威圧的な態度で接する。
スマホに送られた5枚の画像。よく見ると、赤で✕、青で◯が描かれている。何かと思って尋ねようとしたけど、父に先を越された。
「お前が行っていいところはそれだけだ。あとは禁ずる。では、13時を過ぎたらフードコートで集まるように」
「うん。ありがとう」
「そんなのどうでもいいから! さっさと並ぶよ! 時間がなくなっちゃう~」
妹は外ではいい面をしている。ぶりっこポーズで(おそらく本人は可愛いと意識して)あざとく見せようとしている。もちろん、両親はそんなものに興味がない。娘を真ん中に挟み、1階のゲームコーナーへと急いだ。
画像をもらったのはいいとして、これ、本当に必要なもの……?
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