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2章 殺してしまいたい
85話 悩みながらも
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3人と分かれたあと、私はひとりで自由に動いていた。これといってやることもないから、暖房の効いた快適な室内をぐるぐると巡る。妹のように喉から手が出るほど、ほしいものもない。そこまで真剣になる必要がないから、気ままに動けた。
そういえば、冬物の洋服1着が糸がほつれたり汚れが目立ったりしていた。アパレルショップがいくつかあるから、買い替えようかな。寒いから、できれば裏起毛を選びたい。色は、濃い赤、白、黒のどれかがいいな。派手な装飾はいらないから、ひとまず着られればいい。
いざ店に行ってみると、多くの商品が並んでいてどれもいいものに見える。選び難い。今すぐ必要というわけではないけど、いずれほしいと思っていた。別の店に行けば、違ったものが販売されている。うーん……。
1時間くらい見て回っていたけど、だんだんどれがいいのかわからなくなってしまった。それなら、今買わなくていいや、と思う。春になれば、冬物のセールが行われるから、そのときに買うのもありだ。春か。まだ遠い季節のように感じるな。
時の流れはあっという間で、進路決定までの時間も迫っている。私は決めなければいけない。
先生も言っていた。「自分のやりたいことを優先してやってほしい」って。私が何をやりたいのか、何になりたいのか、はっきりと決まっていない。進路を変えるなら勉強法も変えないといけないし。そしたら、今までやってきたことが無駄って言われてしまうのかも? そのあと何て返せばいいのだろう? ふたりを納得させる答えを出せるだろうか? だめだ。自信がない。
奥地にあるブックストア。ここはスーパーマーケットと同じくらいの広さで、まったくといっていいほど奥が見えない。本を探している人が迷わないよう、検索ステーションが2台設置されている。子供向けの絵本や小説は道沿いに、マニアックで分厚い本は遠くに押し込まれている。試し読みできるスペースがあり、そこで子供を遊ばせている親もいる。彼らは自由に過ごし、店内を流れるレトロミュージックに浸っていた。
買うか買わないかは別として、私は辞書が好きだから奥へと進んでいく。辞書はコアに分類され、大半の人が寄り付かない。店の手前は子供たちで騒がしい分、奥は声が遠くなって音楽に浸れる。少し疲れたときは、辞書の表紙や帯を見るだけでも楽しかった。
せっかくだから、何か買おうかな。……素敵な時間を表す言葉、なんてどうかな? 朝焼けとか、宵闇とか。
そういえば、冬物の洋服1着が糸がほつれたり汚れが目立ったりしていた。アパレルショップがいくつかあるから、買い替えようかな。寒いから、できれば裏起毛を選びたい。色は、濃い赤、白、黒のどれかがいいな。派手な装飾はいらないから、ひとまず着られればいい。
いざ店に行ってみると、多くの商品が並んでいてどれもいいものに見える。選び難い。今すぐ必要というわけではないけど、いずれほしいと思っていた。別の店に行けば、違ったものが販売されている。うーん……。
1時間くらい見て回っていたけど、だんだんどれがいいのかわからなくなってしまった。それなら、今買わなくていいや、と思う。春になれば、冬物のセールが行われるから、そのときに買うのもありだ。春か。まだ遠い季節のように感じるな。
時の流れはあっという間で、進路決定までの時間も迫っている。私は決めなければいけない。
先生も言っていた。「自分のやりたいことを優先してやってほしい」って。私が何をやりたいのか、何になりたいのか、はっきりと決まっていない。進路を変えるなら勉強法も変えないといけないし。そしたら、今までやってきたことが無駄って言われてしまうのかも? そのあと何て返せばいいのだろう? ふたりを納得させる答えを出せるだろうか? だめだ。自信がない。
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買うか買わないかは別として、私は辞書が好きだから奥へと進んでいく。辞書はコアに分類され、大半の人が寄り付かない。店の手前は子供たちで騒がしい分、奥は声が遠くなって音楽に浸れる。少し疲れたときは、辞書の表紙や帯を見るだけでも楽しかった。
せっかくだから、何か買おうかな。……素敵な時間を表す言葉、なんてどうかな? 朝焼けとか、宵闇とか。
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