ごめんね、足りなかったよね。

fireworks

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エピソード

Ep.10 なんだかもう

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Ep.10 なんだかもう
「今日は……」
「なかなか……」
「あいつ……」
「……」
 グループのメンバーといても、ちっとも落ち着かなかった。キャンプ用の椅子に胡座をかいて座り、爪の皮をめくる。血が出ていたからやめた。暇すぎて、ライターをカチカチさせて遊ぶ。メンバーは楽しそうに武勇伝を語っているけど、その輪の中には入れなかった。
 やはり、何度考えてもアトラスの頭の中がわからない。愉快犯? からかっているだけ? 嘲笑っているとか? 年下だからって舐められてる? ……いけ好かないな。
「こんばんは」
「あ、アトラスじゃん!」
「こっちこっち~」
 そうこうしているうちに、いつもの時間に彼がたまり場にやってきた。すっかり馴染んだ5人はあっさり彼を受け入れ、歓迎ムードが漂う。気持ち悪いけど、端くれである私がどうこうできる問題じゃないし、もう諦めた。また何か言われたら面倒だから、ライターをポケットにしまう。
 そういえば先日、煙草の代わりとかふざけたこと言って、細長いラムネと箱をもらった。煙も出ないしニコチンもない。まったく何を考えているんだか。そこまでなら、ライターでも煙草でも強奪するとか、或いは口を引き裂いてでもやめさせればいいのに。こんな見せかけのもので、どうにかなるとでも……?
「だっるぅ……はぁ……」
 小声でつぶやき、ため息をつく。そんな一瞬の気の緩み、彼が逃すはずもなくて。
「ユリシア」
「何」
 力強く睨みつけ、爪の皮のささくれをさらにめくる。血が滲んで、針で刺されたような痛みを感じた。彼の手にはベーカリーの大きな紙袋が握られている。
「駅前のベーカリーでサンドウィッチを買ってきたんです。肉と野菜たっぷりですよ。召し上がってください」
「そう」
「皆さんの分もありますよ。夜食にぴったりです」
 やけに袋が大きいと思ったら、ここにいる人たちの分を買ってきたらしい。彼は満面の笑みでテーブルに袋を置き、同じサンドウィッチを並べる。
「やったあ!」
「やるう!」
「いただきます!」
「お腹ペコペコだよ~」
「さすがアトラス! 気が利く~」
 はぁ、簡単に絆されて……。バカみたい……。

 夜、暗いときは彼がバイクを運転して、皆を家の近くに送り届けていた。ひとりずつ、近くに住む人から帰っていく。私は大体真ん中にいて、行こうとするたびに止められた。
「私ひとりで帰るからいい」
「夜道に歩いていると危ないですよ。さあ乗ってください」
「別に歩けるし……」
「そう言わずに。夜のドライブは楽しいですよ」
「ふぅ……」
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