ごめんね、足りなかったよね。

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エピソード

Ep.11 八つ当たり

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Ep.11 八つ当たり
「ね、なんで私に声をかけたの?」
「ん?」
「ほら、私って出来損ないじゃん。笑っちゃうくらいバカだし、人ばっか殴ってるどうしようもないヤツだし。ホント、なんでのうのうと生きてんのかって思っちゃう。私みたいなバカとつるんでると、ろくな人生にならないよ」
 早口になってしまって、そっぽ向く。自分でもわけのわからないことを言った。アトラスは少し口を開けて1回瞬きして不思議そうな顔をしているし、困らせたのかも。
「だれかにそう言われたのですか?」
「いや……まぁ、……そう、でも……」
 なんですぐ言い切らなかったのだろう。さっさと否定すれば良かったのに。こんなときに限って、都合よく口が動かない。
 別に嘘じゃなかった。私の言動が悪いことだと自覚しているから。それに、先生の評価や成績は底辺、問題ばかり起こして懲罰も受けてる。父は兄と比較して罵り、母は父の手に怯えている。(口)喧嘩が趣味だなんて気味が悪い。ろくに授業に参加せず、遊び呆けて、朝に帰宅する。こうやって言語化してみると、確かにおかしな人だ。過去の私が蒔いた種。肥大して膨らんで破裂する。
「……別に、あんたに関係ないじゃん」
 まるで別人のように、地面に吐き捨てた。
「なぜそう思うのですか?」
 アトラスの表情に笑みはなくて、ただまっすぐに私を見つめている。このときの私は人の言動を何でもかんでも曲げてしまうクセがあって、冷たく当たってしまった。
「私がどう生きたって、だれといたって、あんたは痛くもかゆくもないってことよ」
「それは違いますよ。あなたの言葉と、私の状況は全然違います」
 ――どいつもこいつも、綺麗事を。
 気持ち悪い。嫌い。大嫌い。世界で一番嫌い。
 私は、私のことが一番嫌い。
「違うも何もないでしょ。あんたのせいで最悪な気持ちになった。もう私ひとりで帰る。ついてこないでよね。そしてもう二度と現れないで」
 自己嫌悪の果ては八つ当たり。アトラスは関係ないことはなかったけれど、たまりに溜まったものをぶつけてしまった。ぺたんこのバッグを肩にかけて、地面に靴を投げ捨てて背を向けた。
「待って」
 アトラスが私の右腕を掴み、引っ張った。
「離してっ」
 前に力を入れて、相殺する。少しだけ私が強かった。アトラスの手が離れて、距離ができる。
「なんで怒ってるの」
「構わないで! 気持ち悪い!」
「……なんとでも言ってください。気が済むまでサンドバッグになります」
 きっと、最初は別の感情が心にあったのに、思ってもいないことを口にしてしまうんだ。
 
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