ごめんね、足りなかったよね。

fireworks

文字の大きさ
178 / 193
エピソード

Ep.13 恋なのかな?

しおりを挟む
Ep.13 恋なのかな?
「話を戻しましょうか。さっき、あなたは私を知ったかぶりだと言いましたけれど。私はあなたのことをだれよりも理解していますし、わからないことがあれば理解したいと思っています」
「はぁ?」
 急に難しい話になって、頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。眉毛がぐにゃぐにゃに、口がひん曲がっていたことだろう。
「例えば、あなたが何を好きなのか、何をしたいのか、なんとなくわかります。そして、何が嫌いで、されたくないことはこれ、と嫌なこともわかります」
「じゃあ話が早いわ。私はあんたが嫌い。さっさと消え失せて」
 まどろっこしい言い方をして混乱させるタチなアトラス。残念、その手には乗らない。あいつらみたいに、絆されて取り込まれるなんてイヤだから。
 私が決心しても、アトラスは引き下がらなかった。それどころか近づいて、いきなり抱きしめるから、時間が止まったかと思った。
「私はあなたの理解者になりたい」
 それが彼の本音だった。
 いつもヘラヘラしていて、飄々としていて、何を考えてるのかわからない変わり者。愛想が良くて、いつの間にかグループに溶け込んで、生活の一部になってしまった。否が応でも認めないといけないのか。
 この人は、私の深いところを見て話をしているんだって。
「どれだけ拒絶されても、気持ち悪いと思われても、あなたの心が変わるまで私はそばにいます」
 「好き」とか「愛してる」とかありふれた言葉じゃなくて。キザでカッコつけな愛の告白。聞いてる私が恥ずかしくなってくる。密着していたら、顔が赤いこととか心臓の音が聞こえてしまいそうで、胸を押して離れた。
「……変なの」
 小声でつぶやくと、彼が私の髪をすくった。
「はい。私は変な人です。自他ともに認める変人です」
 寒いほどの恥ずかしさが、燃え上がった怒りを消していく。綿毛が空に舞うように、空気が明るく軽くなった。
「もうバカらしくなっちゃった。何ピリピリしてたんだろ、私」
「さ、夜も遅いし帰りますよ」
「……うん。ありがと」

 だれでもいいようで、だれでもよくない。
 上辺だけじゃなくて、良いところも悪いところも包み込んでくれる人がいい。そばにいて話を聞いてほしい。座っているだけでいい。抱きしめてほしい。

 だれにだって欠点はあるの。
 でも、それ以上に良いところがあるの。
 卑屈になって、ハードルを上げすぎていたみたい。
 私は、私のことを好きになれると思う?
 同じように、だれかを愛せると思う?
 ねえ、これが恋なのかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

走馬灯に君はいない

優未
恋愛
リーンには前世の記憶がある。それは、愛を誓い合ったはずの恋人の真実を知り、命を落とすというもの。今世は1人で生きていくのもいいと思っていたところ、急に婚約話が浮上する。その相手は前世の恋人で―――。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

カメリア――彷徨う夫の恋心

来住野つかさ
恋愛
ロジャーとイリーナは和やかとはいえない雰囲気の中で話をしていた。結婚して子供もいる二人だが、学生時代にロジャーが恋をした『彼女』をいつまでも忘れていないことが、夫婦に亀裂を生んでいるのだ。その『彼女』はカメリア(椿)がよく似合う娘で、多くの男性の初恋の人だったが、なせが卒業式の後から行方不明になっているのだ。ロジャーにとっては不毛な会話が続くと思われたその時、イリーナが言った。「『彼女』が初恋だった人がまた一人いなくなった」と――。 ※この作品は他サイト様にも掲載しています。

【完結】勘違いしないでください!

青空一夏
恋愛
自分の兄の妻に憧れすぎて妻を怒らせる夫のお話です。 私はマドリン・バーンズ。一代限りの男爵家の次女ですが、サマーズ伯爵家の次男ケントンと恋仲になりました。あちらは名門貴族なので身分が釣り合わないと思いましたが、ケントンは気にしないと言ってくれました。私たちは相思相愛で、とても幸せな結婚生活を始めたのです。 ところが、ケントンのお兄様が結婚しサマーズ伯爵家を継いだ頃から、ケントンは兄嫁のローラさんを頻繁に褒めるようになりました。毎日のように夫はローラさんを褒め続けます。 いいかげんうんざりしていた頃、ケントンはあり得ないことを言ってくるのでした。ローラさんは確かに美人なのですが、彼女の化粧品を私に使わせて・・・・・・ これは兄嫁に懸想した夫が妻に捨てられるお話です。あまり深く考えずにお読みください💦 ※二話でおしまい。 ※作者独自の世界です。 ※サクッと読めるように、情景描写や建物描写などは、ほとんどありません。

御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

(完結)貴女は私の親友だったのに・・・・・・

青空一夏
恋愛
私、リネータ・エヴァーツはエヴァーツ伯爵家の長女だ。私には幼い頃から一緒に遊んできた親友マージ・ドゥルイット伯爵令嬢がいる。 彼女と私が親友になったのは領地が隣同志で、お母様達が仲良しだったこともあるけれど、本とバターたっぷりの甘いお菓子が大好きという共通点があったからよ。 大好きな親友とはずっと仲良くしていけると思っていた。けれど私に好きな男の子ができると・・・・・・ ゆるふわ設定、ご都合主義です。異世界で、現代的表現があります。タグの追加・変更の可能性あります。ショートショートの予定。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

処理中です...