触れたいのに届かなくて

fireworks

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11話 見てほしい

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11話 見てほしい
 どうすれば家族に見てもらえる? 認めてもらえる? それがわかれば、この気持ち悪さも消えるはず。そのために何をすればいい? いや、そもそも何かしたら見てくれるという保証はない。なら頑張る意味などないのでは? ……じゃあ、どうすれば。
 わかりやすい目標……。3週間後にハイスクールで試験がある。そこで結果を出せば振り向いてくれるかもしれない。それなら、やらないと。いい成績を取らないと。授業を真面目に聞かないと。提出物の締め切りを守って空欄は全部埋めて……。あとは、あとは……。この、よくわからない能力を駆使してでも……。

 そこからは単純な作業の繰り返しだった。死ぬ気力も失せるくらい、生まれてはじめて努力した。本当に大変だった。たとえ……家族が見てくれなくても、成績が取れたら悪いことじゃないから。
 それでも限界が来たときは、能力を使って誤魔化した。問題用紙に触れたり模範解答を暗記したり。もちろんただで使えるわけじゃない。使いすぎたら疲労や眠気に襲われ、寝込む日もあった。
 私が変わり始めても、特に家族からの反応はなかった。相変わらず傷口に塩を塗り込まれるような言動があったけど、気にしないように努めた。いっそ何も感じなければいい、と思うようになった。

10月3日16時――ハイスクール
 気がつけば、試験まであと1週間。できることはなるべくやった。おかげでとんでもなく疲れたけど、達成感は大きい。あとは追い込みだ。
 スマホが鳴ったみたい。何回も振動している。面倒だから無視して机に向かう。家とハイスクールを往復する日々で、ここがどこなのか、私がだれなのか、忘れそうになったけど必死に食らいついた。チャイムが聞こえるということは、ここは……。
「ルミナス」
「……」
「聞いてる?」
「……」
「もう下校時間だよ。門が閉じるから、帰ろう」
 フィディリスに話しかけられても無反応。文字を書く手が止まらない。カリカリとシャープペンシルが動く。カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ。
「ルミナス!?」
「……」
 左手を握られ、ようやくフィディリスが目の前にいることに気がつく。気配を察知できなかった。驚いて手が止まり、呆然とフィディリスを見つめる。フィディリスはふうと息を吐き、私のバッグを抱えて机に座った。
「……帰ろう」
「先生に話つけておくから。だから、いいよ。先帰って」
 文字を書ける右手はまだ動かせる。肘で教科書を押さえながら、次の問題を……。
「そんなに勉強していたら、身体壊れちゃうよ」
「……いいよ」
「良くないから。適度な休憩も大事。まずは帰るよ」
「……場所が悪いなら変える。でもあなたは要らない。じゃあね」
 互いの話がまったくかみ合わない。どちらも譲る気はなく、ただ自分の主張を押し通そうとする。
「能力使ってる?」
「……ううん」
 ついに、右手をつかまれて冷たい目で見られる。いずれそうなるとわかっていたけど、予想よりも早かった。諦めのような、あきれたような顔。そんなの、見慣れてる。
「大丈夫だから」
 このままだと集中できない。フィディリスの手からバッグを取り、雑に書類を入れてファスナーで閉じる。あ、ペンケースを忘れてた。二度手間……。そのまま歩こうとしたら、よりによって自分の足を踏んでしまった。肝心のところで手も出ず、顔から落ちていくのだった。
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