11 / 50
11話 見てほしい
しおりを挟む
11話 見てほしい
どうすれば家族に見てもらえる? 認めてもらえる? それがわかれば、この気持ち悪さも消えるはず。そのために何をすればいい? いや、そもそも何かしたら見てくれるという保証はない。なら頑張る意味などないのでは? ……じゃあ、どうすれば。
わかりやすい目標……。3週間後にハイスクールで試験がある。そこで結果を出せば振り向いてくれるかもしれない。それなら、やらないと。いい成績を取らないと。授業を真面目に聞かないと。提出物の締め切りを守って空欄は全部埋めて……。あとは、あとは……。この、よくわからない能力を駆使してでも……。
そこからは単純な作業の繰り返しだった。死ぬ気力も失せるくらい、生まれてはじめて努力した。本当に大変だった。たとえ……家族が見てくれなくても、成績が取れたら悪いことじゃないから。
それでも限界が来たときは、能力を使って誤魔化した。問題用紙に触れたり模範解答を暗記したり。もちろんただで使えるわけじゃない。使いすぎたら疲労や眠気に襲われ、寝込む日もあった。
私が変わり始めても、特に家族からの反応はなかった。相変わらず傷口に塩を塗り込まれるような言動があったけど、気にしないように努めた。いっそ何も感じなければいい、と思うようになった。
10月3日16時――ハイスクール
気がつけば、試験まであと1週間。できることはなるべくやった。おかげでとんでもなく疲れたけど、達成感は大きい。あとは追い込みだ。
スマホが鳴ったみたい。何回も振動している。面倒だから無視して机に向かう。家とハイスクールを往復する日々で、ここがどこなのか、私がだれなのか、忘れそうになったけど必死に食らいついた。チャイムが聞こえるということは、ここは……。
「ルミナス」
「……」
「聞いてる?」
「……」
「もう下校時間だよ。門が閉じるから、帰ろう」
フィディリスに話しかけられても無反応。文字を書く手が止まらない。カリカリとシャープペンシルが動く。カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ。
「ルミナス!?」
「……」
左手を握られ、ようやくフィディリスが目の前にいることに気がつく。気配を察知できなかった。驚いて手が止まり、呆然とフィディリスを見つめる。フィディリスはふうと息を吐き、私のバッグを抱えて机に座った。
「……帰ろう」
「先生に話つけておくから。だから、いいよ。先帰って」
文字を書ける右手はまだ動かせる。肘で教科書を押さえながら、次の問題を……。
「そんなに勉強していたら、身体壊れちゃうよ」
「……いいよ」
「良くないから。適度な休憩も大事。まずは帰るよ」
「……場所が悪いなら変える。でもあなたは要らない。じゃあね」
互いの話がまったくかみ合わない。どちらも譲る気はなく、ただ自分の主張を押し通そうとする。
「能力使ってる?」
「……ううん」
ついに、右手をつかまれて冷たい目で見られる。いずれそうなるとわかっていたけど、予想よりも早かった。諦めのような、あきれたような顔。そんなの、見慣れてる。
「大丈夫だから」
このままだと集中できない。フィディリスの手からバッグを取り、雑に書類を入れてファスナーで閉じる。あ、ペンケースを忘れてた。二度手間……。そのまま歩こうとしたら、よりによって自分の足を踏んでしまった。肝心のところで手も出ず、顔から落ちていくのだった。
どうすれば家族に見てもらえる? 認めてもらえる? それがわかれば、この気持ち悪さも消えるはず。そのために何をすればいい? いや、そもそも何かしたら見てくれるという保証はない。なら頑張る意味などないのでは? ……じゃあ、どうすれば。
わかりやすい目標……。3週間後にハイスクールで試験がある。そこで結果を出せば振り向いてくれるかもしれない。それなら、やらないと。いい成績を取らないと。授業を真面目に聞かないと。提出物の締め切りを守って空欄は全部埋めて……。あとは、あとは……。この、よくわからない能力を駆使してでも……。
そこからは単純な作業の繰り返しだった。死ぬ気力も失せるくらい、生まれてはじめて努力した。本当に大変だった。たとえ……家族が見てくれなくても、成績が取れたら悪いことじゃないから。
それでも限界が来たときは、能力を使って誤魔化した。問題用紙に触れたり模範解答を暗記したり。もちろんただで使えるわけじゃない。使いすぎたら疲労や眠気に襲われ、寝込む日もあった。
私が変わり始めても、特に家族からの反応はなかった。相変わらず傷口に塩を塗り込まれるような言動があったけど、気にしないように努めた。いっそ何も感じなければいい、と思うようになった。
10月3日16時――ハイスクール
気がつけば、試験まであと1週間。できることはなるべくやった。おかげでとんでもなく疲れたけど、達成感は大きい。あとは追い込みだ。
スマホが鳴ったみたい。何回も振動している。面倒だから無視して机に向かう。家とハイスクールを往復する日々で、ここがどこなのか、私がだれなのか、忘れそうになったけど必死に食らいついた。チャイムが聞こえるということは、ここは……。
「ルミナス」
「……」
「聞いてる?」
「……」
「もう下校時間だよ。門が閉じるから、帰ろう」
フィディリスに話しかけられても無反応。文字を書く手が止まらない。カリカリとシャープペンシルが動く。カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ。
「ルミナス!?」
「……」
左手を握られ、ようやくフィディリスが目の前にいることに気がつく。気配を察知できなかった。驚いて手が止まり、呆然とフィディリスを見つめる。フィディリスはふうと息を吐き、私のバッグを抱えて机に座った。
「……帰ろう」
「先生に話つけておくから。だから、いいよ。先帰って」
文字を書ける右手はまだ動かせる。肘で教科書を押さえながら、次の問題を……。
「そんなに勉強していたら、身体壊れちゃうよ」
「……いいよ」
「良くないから。適度な休憩も大事。まずは帰るよ」
「……場所が悪いなら変える。でもあなたは要らない。じゃあね」
互いの話がまったくかみ合わない。どちらも譲る気はなく、ただ自分の主張を押し通そうとする。
「能力使ってる?」
「……ううん」
ついに、右手をつかまれて冷たい目で見られる。いずれそうなるとわかっていたけど、予想よりも早かった。諦めのような、あきれたような顔。そんなの、見慣れてる。
「大丈夫だから」
このままだと集中できない。フィディリスの手からバッグを取り、雑に書類を入れてファスナーで閉じる。あ、ペンケースを忘れてた。二度手間……。そのまま歩こうとしたら、よりによって自分の足を踏んでしまった。肝心のところで手も出ず、顔から落ちていくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!
弥生 真由
恋愛
何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった!
せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!
……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです!
※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる