触れたいのに届かなくて

fireworks

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12話 使いすぎだよ

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12話 使いすぎだよ
「あ」
 最近、胸や頭が痛くて、悪夢を見たり、眠れない日々が続いたりしていた。そのせいかもしれない。簡単に力が抜けてしまって、だれかに寄りかからないといけないなんて。恥ずかしい。たまたまフィディリスに支えられたから痛い思いをしなくて済んだけど、情けない姿を見せてしまった。また距離が近い。
 ……あれ、なんか……おかしい。視界が揺れてる。目をいつも通り開けていられない。まるで徹夜明けの寝起きのようだ。睫毛が震えている。
「使いすぎだよ」
 フィディリスの声を聞いたのが最後だった。
 私は力を失ってフィディリスの胸に倒れ、ズルズルと落ちていった。フィディリスは気にせず、腰に手を回して支え包み込む。そうして、私をおんぶし、両足を持って歩き始めた。

 下校時間はとうに過ぎ、生徒は帰宅し、暗闇が訪れようとしていた。滲む夕焼け空、山の輪郭、民家の明かり。廊下に響くのはフィディリスの足音。……息を潜め、慎重に一歩ずつ進んでいく。けれど、いきなりそれをやめ、私を床に下ろして柱に隠した。フィディリスもそこに潜み、かくれんぼをしているかのように息を殺す。そして、どこからともなく銃を取り出し、渡り廊下の先を睨んだ。禍々しく毒々しい空気がそこから流れ始め、あっという間に周囲を黒く染め上げる。この世のものではない異空間が出来上がる。吐く息が闇のようで、吸い込むと確実に健康を害すような色。ただのハイスクールが、一瞬にして別の世界へと変わってしまった。
 その空間を貫く弾丸。
 偶然フィディリスに当たらなかったようだけど、こんなに視界が悪いのにだれかがいることは明らかになった。だれだろう、とフィディリスはニヤリと笑い銃を構えた。狙いを定める。夢の空間のように真っ黒なのだけど、フィディリスには何かが見えているのかもしれない。
 フィディリスも撃ち始め、本格的な戦闘が始まった。互角の力で、どちらにも当たっていない。フィディリスの前にある柱がずいぶん硬く、相手も手こずっているようだ。一方で、ふたりの視界は違うもので、暗闇から狙うフィディリスは不利である。
 やがて、銃撃戦は終わる。どうやら、相手の弾が尽きたらしい。フィディリスは次のものを準備して構え、使えなくなったものをベルトにかけた。床に落ちた残骸が、熱い戦闘を物語っている。
 相手に逃げられた。戦闘能力はフィディリスが上だったけど、策は後者が強かった。弾切れもあり、真っ暗闇から狙うことは困難。さすがのフィディリスも諦め、再び私をおぶった。すると、さっきまでの異変はすべて消え、元の、いつもの廊下に戻った。気味の悪い空気も、有害な物質も、なくなった。
「……ん?」
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