12 / 50
12話 使いすぎだよ
しおりを挟む
12話 使いすぎだよ
「あ」
最近、胸や頭が痛くて、悪夢を見たり、眠れない日々が続いたりしていた。そのせいかもしれない。簡単に力が抜けてしまって、だれかに寄りかからないといけないなんて。恥ずかしい。たまたまフィディリスに支えられたから痛い思いをしなくて済んだけど、情けない姿を見せてしまった。また距離が近い。
……あれ、なんか……おかしい。視界が揺れてる。目をいつも通り開けていられない。まるで徹夜明けの寝起きのようだ。睫毛が震えている。
「使いすぎだよ」
フィディリスの声を聞いたのが最後だった。
私は力を失ってフィディリスの胸に倒れ、ズルズルと落ちていった。フィディリスは気にせず、腰に手を回して支え包み込む。そうして、私をおんぶし、両足を持って歩き始めた。
下校時間はとうに過ぎ、生徒は帰宅し、暗闇が訪れようとしていた。滲む夕焼け空、山の輪郭、民家の明かり。廊下に響くのはフィディリスの足音。……息を潜め、慎重に一歩ずつ進んでいく。けれど、いきなりそれをやめ、私を床に下ろして柱に隠した。フィディリスもそこに潜み、かくれんぼをしているかのように息を殺す。そして、どこからともなく銃を取り出し、渡り廊下の先を睨んだ。禍々しく毒々しい空気がそこから流れ始め、あっという間に周囲を黒く染め上げる。この世のものではない異空間が出来上がる。吐く息が闇のようで、吸い込むと確実に健康を害すような色。ただのハイスクールが、一瞬にして別の世界へと変わってしまった。
その空間を貫く弾丸。
偶然フィディリスに当たらなかったようだけど、こんなに視界が悪いのにだれかがいることは明らかになった。だれだろう、とフィディリスはニヤリと笑い銃を構えた。狙いを定める。夢の空間のように真っ黒なのだけど、フィディリスには何かが見えているのかもしれない。
フィディリスも撃ち始め、本格的な戦闘が始まった。互角の力で、どちらにも当たっていない。フィディリスの前にある柱がずいぶん硬く、相手も手こずっているようだ。一方で、ふたりの視界は違うもので、暗闇から狙うフィディリスは不利である。
やがて、銃撃戦は終わる。どうやら、相手の弾が尽きたらしい。フィディリスは次のものを準備して構え、使えなくなったものをベルトにかけた。床に落ちた残骸が、熱い戦闘を物語っている。
相手に逃げられた。戦闘能力はフィディリスが上だったけど、策は後者が強かった。弾切れもあり、真っ暗闇から狙うことは困難。さすがのフィディリスも諦め、再び私をおぶった。すると、さっきまでの異変はすべて消え、元の、いつもの廊下に戻った。気味の悪い空気も、有害な物質も、なくなった。
「……ん?」
「あ」
最近、胸や頭が痛くて、悪夢を見たり、眠れない日々が続いたりしていた。そのせいかもしれない。簡単に力が抜けてしまって、だれかに寄りかからないといけないなんて。恥ずかしい。たまたまフィディリスに支えられたから痛い思いをしなくて済んだけど、情けない姿を見せてしまった。また距離が近い。
……あれ、なんか……おかしい。視界が揺れてる。目をいつも通り開けていられない。まるで徹夜明けの寝起きのようだ。睫毛が震えている。
「使いすぎだよ」
フィディリスの声を聞いたのが最後だった。
私は力を失ってフィディリスの胸に倒れ、ズルズルと落ちていった。フィディリスは気にせず、腰に手を回して支え包み込む。そうして、私をおんぶし、両足を持って歩き始めた。
下校時間はとうに過ぎ、生徒は帰宅し、暗闇が訪れようとしていた。滲む夕焼け空、山の輪郭、民家の明かり。廊下に響くのはフィディリスの足音。……息を潜め、慎重に一歩ずつ進んでいく。けれど、いきなりそれをやめ、私を床に下ろして柱に隠した。フィディリスもそこに潜み、かくれんぼをしているかのように息を殺す。そして、どこからともなく銃を取り出し、渡り廊下の先を睨んだ。禍々しく毒々しい空気がそこから流れ始め、あっという間に周囲を黒く染め上げる。この世のものではない異空間が出来上がる。吐く息が闇のようで、吸い込むと確実に健康を害すような色。ただのハイスクールが、一瞬にして別の世界へと変わってしまった。
その空間を貫く弾丸。
偶然フィディリスに当たらなかったようだけど、こんなに視界が悪いのにだれかがいることは明らかになった。だれだろう、とフィディリスはニヤリと笑い銃を構えた。狙いを定める。夢の空間のように真っ黒なのだけど、フィディリスには何かが見えているのかもしれない。
フィディリスも撃ち始め、本格的な戦闘が始まった。互角の力で、どちらにも当たっていない。フィディリスの前にある柱がずいぶん硬く、相手も手こずっているようだ。一方で、ふたりの視界は違うもので、暗闇から狙うフィディリスは不利である。
やがて、銃撃戦は終わる。どうやら、相手の弾が尽きたらしい。フィディリスは次のものを準備して構え、使えなくなったものをベルトにかけた。床に落ちた残骸が、熱い戦闘を物語っている。
相手に逃げられた。戦闘能力はフィディリスが上だったけど、策は後者が強かった。弾切れもあり、真っ暗闇から狙うことは困難。さすがのフィディリスも諦め、再び私をおぶった。すると、さっきまでの異変はすべて消え、元の、いつもの廊下に戻った。気味の悪い空気も、有害な物質も、なくなった。
「……ん?」
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!
弥生 真由
恋愛
何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった!
せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!
……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです!
※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる