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41話 キャリアデーの始まり
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41話 キャリアデーの始まり
10月31日10時――博物館
金曜日、私たちはキャリアデーということで博物館に出かけた。ほとんどの人が遊びだと思っている理由は、成績に加点されないことと、将来の夢が決まっている人が多いからだろう。まあ、試験の結果で進路が確定するし、その前のひと休み。
全生徒の96%が進路を決める。では、残りの4%はどうなのか? それは「未定」である。病気の人、何もしなかった人、決められなかった人……。後者ふたつがそのほとんどを占める。もちろん、フィディリスと私もそこに入る。
そういう人たちの最後の砦というか、機会として設けられているキャリアデー。本来の意味とは大きく外れているけど、先生たちは名誉と実績のため、「未定」や「不合格」を出さないよう必死だ。
あの進路希望調査表の締め切りは来週の火曜日だ。回収されたら、真っ先に怒られるだろうな……。あまり考えたくない。
このキャリアデーも、きっと、私は意味のないものにしてしまうだろう。非常に惜しいのだけど、かといってできることは限られているから息だけしておく。
「ルナ?」
「ああ、ごめん」
「行こう」
フィディリスに呼ばれて歩き始める。ここは……県の管理する博物館だ。県内で最も広く大きな建物、常設展示に加え、季節ごとに特別展示が行われている。それに伴って、イベントも開かれているためお祭り状態。ちょうど収穫祭シーズンということで、かぼちゃ、小麦、ハム、魚のオブジェクトや装飾が目立つ。あまり勉強や将来のため、というふうには見えない。
集合場所で点呼をして、皆いることを確認してから中に入った。開いた本と、積み重なった本をイメージした外観。内装は黒と茶で統一されている。5階まであるらしい。入ってすぐのホールは開放感抜群で、最上階まで吹き抜けだ。息を呑む。心が浮き立つ理由も、わかる気がする。
「皆揃いました」
「こちらも」
「では、皆さん聞いてください。本日はキャリアデーです。皆さんの進路を決めるための……」
先生の話は相変わらず長い。この風潮ももうだいぶ古い……。肝心の話まで遠いし。
暇だから内装をじっくりと見てみる。左手に図書館、目の前に映画館、右手にショップやレストラン。図書館は博物館にしかない本が目玉らしく、分厚い本が多いだろう。映画館という名の広い多目的ホールは、特別展示や季節ごとのイベントで使われると。右手のショップやレストランは言わずもがな。限定グッズや落ち着いた空間での飲食を提供している。
「ということで、本日の講師のご紹介です」
ようやく本題に入った。息を吐くと、先生の背後から女性が登場した。黒髪ボブ、茶色い瞳、柔らかな雰囲気をまとっている。穏やかそうで笑ったときの笑窪が印象的。黒のスーツ、パンツスタイル。しっかり着こなしていらっしゃる。フローラルの香水。その人は顔を動かして私たちを見つめ、ツヤのある口を開けた。
……象徴的な目。私たちを見渡しているけど、その後、焦点が定まることはなかった。
「はじめまして。学芸員のミネルヴァ・ファーブラです。本日はよろしくお願いいたします!」
10月31日10時――博物館
金曜日、私たちはキャリアデーということで博物館に出かけた。ほとんどの人が遊びだと思っている理由は、成績に加点されないことと、将来の夢が決まっている人が多いからだろう。まあ、試験の結果で進路が確定するし、その前のひと休み。
全生徒の96%が進路を決める。では、残りの4%はどうなのか? それは「未定」である。病気の人、何もしなかった人、決められなかった人……。後者ふたつがそのほとんどを占める。もちろん、フィディリスと私もそこに入る。
そういう人たちの最後の砦というか、機会として設けられているキャリアデー。本来の意味とは大きく外れているけど、先生たちは名誉と実績のため、「未定」や「不合格」を出さないよう必死だ。
あの進路希望調査表の締め切りは来週の火曜日だ。回収されたら、真っ先に怒られるだろうな……。あまり考えたくない。
このキャリアデーも、きっと、私は意味のないものにしてしまうだろう。非常に惜しいのだけど、かといってできることは限られているから息だけしておく。
「ルナ?」
「ああ、ごめん」
「行こう」
フィディリスに呼ばれて歩き始める。ここは……県の管理する博物館だ。県内で最も広く大きな建物、常設展示に加え、季節ごとに特別展示が行われている。それに伴って、イベントも開かれているためお祭り状態。ちょうど収穫祭シーズンということで、かぼちゃ、小麦、ハム、魚のオブジェクトや装飾が目立つ。あまり勉強や将来のため、というふうには見えない。
集合場所で点呼をして、皆いることを確認してから中に入った。開いた本と、積み重なった本をイメージした外観。内装は黒と茶で統一されている。5階まであるらしい。入ってすぐのホールは開放感抜群で、最上階まで吹き抜けだ。息を呑む。心が浮き立つ理由も、わかる気がする。
「皆揃いました」
「こちらも」
「では、皆さん聞いてください。本日はキャリアデーです。皆さんの進路を決めるための……」
先生の話は相変わらず長い。この風潮ももうだいぶ古い……。肝心の話まで遠いし。
暇だから内装をじっくりと見てみる。左手に図書館、目の前に映画館、右手にショップやレストラン。図書館は博物館にしかない本が目玉らしく、分厚い本が多いだろう。映画館という名の広い多目的ホールは、特別展示や季節ごとのイベントで使われると。右手のショップやレストランは言わずもがな。限定グッズや落ち着いた空間での飲食を提供している。
「ということで、本日の講師のご紹介です」
ようやく本題に入った。息を吐くと、先生の背後から女性が登場した。黒髪ボブ、茶色い瞳、柔らかな雰囲気をまとっている。穏やかそうで笑ったときの笑窪が印象的。黒のスーツ、パンツスタイル。しっかり着こなしていらっしゃる。フローラルの香水。その人は顔を動かして私たちを見つめ、ツヤのある口を開けた。
……象徴的な目。私たちを見渡しているけど、その後、焦点が定まることはなかった。
「はじめまして。学芸員のミネルヴァ・ファーブラです。本日はよろしくお願いいたします!」
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