夏にだけ許された嘘

chelsea

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1話  知らない誰かが、私の名前を呼んだ

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    =この手紙は、私じゃない“誰か”に宛てられたものだった。
      それでも私は、その人のふりをして、彼に会いに行った=


「真柴さん、今日の打ち上げは出席しないんだよね」
「うん、ちょっと用事があって」
 私はちょっと苦笑い。
「はい、じゃあ、お疲れさまー」
 後輩のナオちゃんが、飲み会の出席確認をしてる。
会社で上半期が終わった所で、反省会を兼ねての打ち上げ会‥‥というのは建前で、その実は、ただの飲み会になってる。あっさりと断る事ができたのは、社の男性の目当てが、若いナオちゃん狙いだから。
 新入社員だった頃は、私もよく誘われてた。付き合おうと言われた事もある。でも、心の奥でこの人じゃない‥‥と囁き声が聞こえてきて、結果、全部、断っていた。そうしてる間に、私の方が彼らの眼鏡には叶わなくなったらしい。
 会社とアパートを行き来して毎日が過ぎていく。
 あと少しで三十歳になるけど、こんな事でいいんだろうかと思う。
 だから、寂しいと思う気持ちもなくはない。
「‥‥‥‥ふう」
 帰宅ラッシュの電車を乗り継いで、今日も大体同じ時間にアパートに帰宅。
 幸い、明日は休み。
 今日は‥‥貯まってるドラマでも見て夜更かしでもしようか。
 そんな事を考えながら、ドアノブに手をかける。
 ドアを開ける前に郵便受けの蓋をあけてチェックする。それが日課になっていた。
「‥‥‥‥ん?」
 どうでもいいような折りこみチラシの下から、二つ折りの白い紙が出てきた。
 表には「真柴美緒」と、私の名前が書いてあって、住所は記入されていない。もちろん判もないし、郵便で来たものでもない。
「何、これ」
 紙を開くと何か書いてあった。少し気味が悪かったので、見ずにそのまま捨てようかと思ったけど、一応、中身を見てからと思って、部屋に入ってすぐに書いてある文面を読んだ。
 
 そこにはこう書いてあった。
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