「最強令嬢、ついに本気を出す!正体バレ!?偽りの令嬢、もう演じない

lilgrave

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第235章 彼女はもう演じない

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第235章 彼女はもう演じない

《インスピレーション》第4回の放送当日、ネットのトレンドが再び爆発した。

最初、多くの人が噂の「道教学院」に惹かれ、さらに姜栩栩(ジャン・シュシュ)の家族が初めて登場したこともあり、一日中トレンド上位を独占。なんと6つの話題が同時にランクインした。

最初は「学校の環境すごい!」という感想が多かったが、いつの間にか話の方向が変わり、「こんな父親がほしい」という羨望の声があふれた。

娘が大学で美味しいものを食べられるようにと、山のふもとにレストランを開く父親──誰だってこんな姜禹城(ジャン・ユーチョン)みたいなお父さんがほしいに決まってる。

ところが、その父親がぼんやりしていて娘を抱きしめ損ねた瞬間、ネットでは新たなハッシュタグが誕生。
#気まずくて不器用だけど愛しいツンデレ社長系パパ がトレンド入りした。

そして──姜栩栩が配信中に、ふいに二体の小さな人形を取り出した。

首をかしげながら動く紙人形が現れた瞬間、姜溯(ジャン・スー)たちも、配信の視聴者たちも、父親の感動シーンなどすっかり忘れ、コメント欄で絶叫した。

【パパーーー!! その紙人形ちょうだい!!】
【番組スタッフ、10秒以内に販売リンク出せ! 本気だぞ!】
【ついに演じるのをやめた! この女、もう隠さないつもりだ! 今までは濁してたのに、今や堂々と二体も!】
【“霊学”が台本だって言う奴、これ見ても同じこと言える? この紙人形、どうやって作るんだよ!?】
【霊学は本物って、もう何回言わせるの!】【ああああ、欲しい! お姉ちゃん! お腹すいたー!】

最初に動画を見た一部の一般人は、「どうせドラマの特撮だろ」と思ったらしい。
だが、これが生配信の録画であり、映像加工が一切ないと分かると──手のひら返し。コメント欄には「その紙人形ほしい!」の嵐。

まさにドラマが現実になったような光景。
自分で動く紙人形があるなら、いつか本当に“剣で空を飛ぶ”日も遠くないのでは?

姜栩栩の突然の行動は、ネットを完全に沸騰させた。
そのせいで、後半の父親とのハグのシーンなど誰も気にしなくなり、監督の陳(チン)も彼女の“爆弾投下”に呆然。

「……なんで、もう演じるのをやめたの?」
彼の疑問に対し、姜栩栩は穏やかに答えた。

「観客には、少しずつ慣れてもらわないとね。」

何に慣れるのか──彼女はそれ以上言わなかった。
だがすぐに、陳監督を含めた全員がその意味を知ることになる。



翌朝。
古い鐘の音が山に響き、この期の「道教学院」新入生たちの“軍事訓練”が正式に始まった。

姜栩栩と、他の4人のゲスト、そして司会の邹南北(ズー・ナンベイ)は、全員学院の新入生と同じ道服を着て集合。

番組は“霊学を広める”という名目で学院の撮影許可を得ており、視聴者がこの特殊な大学の生活をよりリアルに感じられるよう、学院側は彼らに「仮学生」として合宿参加を許可した。

空はまだ薄暗く、遠くの地平には星が二つ三つ瞬いている。
彼らは新入生たちと共に、二人の先輩に導かれながら「贔屭(びき)」の石像が立つ広場へ向かった。

学院の新学期は一般大学と同じく九月に始まるため、今はこの“軍訓”の新入生たちと、訓練担当の教師、そして助教として早めに来ている二人の先輩──白術(バイ・シュウ)と謝雲里(シェ・ユンリー)しかいない。

周察察(ジョウ・チャーチャー)らゲスト陣も新入生と同じ道服を着ていたが、カメラを担いだスタッフの存在がどうしても目立っていた。

訓練を指導する師長がまず、番組チームの撮影目的と、彼らが二日間学生と一緒に訓練を受けることを説明し、そのまま第一日の訓練開始を告げた。

「今年の道教学院の新入生は二十九名。実際の登録者は二十八名。全員、乾坤の序列に従って並べ。」

言葉が終わると、学院生たちは素早く整列。
だが、周察察たちはぽかんと口を開けた。

「乾坤の序列って……何? どんな陣形で並べってこと?」

配信を見ていた視聴者たちも同様に首をかしげた。

そのとき、商陸(シャン・ルー)と姜栩栩が落ち着いて反応し、男性ゲスト三人を引っ張り、周察察を並ばせる。
横にいた鹿南星(ルー・ナンシン)が小声で教えた。

「“乾坤”は陰陽のこと。つまり男女ね。」

確かに、よく見ると全員が男女で列を分けて立っている。
ようやく理解した視聴者たちはコメント欄で突っ込みを入れた。

【男女で並ぶだけなのに、乾坤とか言うなよ! いちいち格好つけんな!】

だが、現場ではそんな声に構う者などいない。
師長は全員が足元の石畳に沿って整列したのを確認すると、軽く手を振り、最初の課題を発表した。

「本日の第一課──坐禅だ。」

その声とともに、全員が一斉に胡坐をかいた。
番組メンバーも同じように座り、ほっと息をつく。

(よかった……坐禅なら簡単そうだ。)

だが、師長の次の言葉に空気が変わった。

「今から、二刻(約四時間)。心を静め、決して動くな。」

そう言って、白術がどこからか四鼎の香炉を取り出し、「贔屭」の前に置いて火を灯した。

次の瞬間、薄い煙がゆらゆらと立ちのぼる。
清らかで古風な香りが漂い、まるで神前にいるような澄んだ気配が場を包む。

配信の視聴者には香りは届かないが、その雰囲気に「これはまさに道教っぽい」とざわめきが起こる。

しかし、師長が懐から四枚の黄色い人型の紙を取り出した瞬間──
全員が息を呑んだ。

見覚えのある形。そう、あの小紙人形と同じ。

師長が口の中で何かを唱えながら手を振ると、紙人形はふわりと舞い落ち、地面に着くと同時に動き出した。

小さな足でトトトッと走り出し、まるで命が宿ったかのよう。
師長の厳かな声が響く。

「忘れるな。動いてはならん。」

その言葉を残して去っていく師長。
四体の紙人形はまるで命令を受けたかのように、ちょこちょこと首を上げて列の間を巡回し始めた。

──配信、再び大炎上。

モニター前の陳監督は、その瞬間ようやく悟った。
昨日、姜栩栩が言った「観客に慣れてもらう」──あの言葉の意味を。

……まさか、こういう“慣れ”だったとは!!
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