「最強令嬢、ついに本気を出す!正体バレ!?偽りの令嬢、もう演じない

lilgrave

文字の大きさ
420 / 658

第419章 言霊は法となる


第四百十九話 言霊は法となる

姜老太太(ジャン・ラオタイタイ)の口調は、決して穏やかなものではなかった。
長年にわたって欺かれてきたと知りながら、それを自分の人を見る目の誤りだとは認めたくなかったのだ。
無意識のうちに、どうしてもっと早く教えてくれなかったのかと、姜栩栩(ジャン・シューシュー)を責める気持ちが湧いてしまう。

姜澄(ジャン・チョン)が気運を奪われて不運続きになっていたことを見抜けたのなら、
自分の身体の異変も路雪溪(ルー・シュエシー)と関係していると、きっと察していたはずだ。
それなのに、なぜ黙っていたのか。

さらに視線を向けると、姜老爷子(ジャン・ラオイエ)も姜禹城(ジャン・ユー チョン)も、まるで最初から知っていたかのように落ち着いた顔をしている。
それがまた、彼女の胸中の苛立ちを煽った。

「あなたたちも、前から知ってたの?! どうして私に言わなかったの?!」

この時の姜老太太は、路雪晴(ルー・シュエチン)のことなど、すっかり頭から消えていた。
ただ、腹立たしかったのだ。

「黙っているように言ったのは、私です」

姜栩栩は淡々と、言葉を引き取った。
老太太が理由を問い返す前に、そのまま続ける。

「この話は、もっと適切なタイミングで伝えたほうが効果的だと思いました。たとえば……今、みたいに」

姜老太太:……

「でも老太太は、路家の若い子たちをとても可愛がっていらっしゃいますし、きっと気になさらないでしょう。
路雪溪がしたことは、路家全体を代表するものでもありませんし、ましてや路雪晴を代表するものでもありませんから」

姜栩栩はそこで一息つき、淡々と告げる。

「言うべきことは、これで終わりです。
この先、誰かを家に招いて仲良く過ごそうが、また親戚の子を住まわせようが、老太太のご自由です」

そう言い終えると、彼女は立ち上がり、そのまま二階へ向かおうとした。

今回、姜淮(ジャン・ホワイ)は終始口を挟まなかったが、姜栩栩の最後の言葉を聞いたあたりから、口元の笑みが消えなかった。
安堵と賞賛が入り混じった表情のまま、老太太に一礼し、彼もまた階段を上っていく。

残された姜家の人間たちは、姜老爷子と姜禹城を除き、互いに顔を見合わせるばかりで、誰も口を出せずにいた。
老太太の顔色をうかがい、慰めることも、席を立つこともできない。

やがて、ようやく気を取り直したのか、姜老太太は階段の方を睨みつけ、鼻を鳴らした。

「誰を住まわせるですって?! 私がそんなこと言った覚えはありません!」

路雪晴を家に入れはしたが、路雪溪のように引き取るつもりなど、最初からなかった。
彼女は決して、完全に判断力を失っているわけではない。

あれほど大きな損をして、何も学ばないほど愚かではないのだ。

ただ、あの子が少し可哀想に思えただけで……。

しかし、自分が長年歩けなかった原因が路雪溪にあったと知った今、そのわずかな情けも、完全に消え去っていた。
それどころか、考えれば考えるほど、怒りがこみ上げてくる。

真実を知ってしまった以上、姜老太太はもはや路家の誰一人として、まともに見ることができなかった。

「執事! これから路家の人間が誰であろうと、二度と家に入れないでちょうだい!
路家に関する話も、もう私には一切報告しなくていいわ!」

そう言い放ち、怒りを抑えつつも祖母としての威厳を保つように、姜瀚(ジャン・ハン)に合図して車椅子を押させ、部屋へ戻っていった。

一部始終を見ていた姜溯(ジャン・スー)は、目を輝かせていた。
――さすがは姉だ。

一手で決めてみせた。

(次は兄貴だな……)

彼は、姉が姜澄をどう“正気に戻す”のか、すでに楽しみで仕方がなかった。
正直、もう疲れているのだ。

……

姜栩栩は、姜溯の内心の期待など知る由もなく、部屋へ戻る途中、後ろからついてくる足音に気づいた。
振り返ると、そこにいたのは姜湛(ジャン・ジャン)だった。

彼は二階まで上がっただけで息を切らし、顔色もやや青白い。

「話があるの?」

姜湛はようやく息を整え、頷くと、スマートフォンに素早く文字を打ち込んだ。
画面いっぱいに表示された文章を、彼女に見せる。

姜栩栩は、音声再生ではないことに一瞬疑問を抱き、内容を読んだ途端、目を細めた。

【祖母が最初に路雪晴を家に入れるのを許さなかったのは事実です。
でも、姜澄がある女性を連れて帰ってきて、一言言ったんです】

【「彼女は無垢そうだ。許されるべきだと思う」】

その言葉のあと、老太太はその晩、自分が路家に対して厳しすぎたのではないかと反省し始めた。
路雪溪が間違いを犯したとしても、路雪晴には関係ない。
身内の若い子をここまで追い詰めるのは、長輩として器が小さいのではないか――そう考えたのだ。

そして翌日、路雪晴は屋敷に入ることを許された。

姜栩栩は、そこに周亚亚(ジョウ・ヤーヤ)が関わっていたとは思っていなかった。
しかも、姜湛がそのままの言葉を再現している。

「……許されるべきだ」

その表現に、どうにも拭えない違和感を覚える。
感情的な慰めというより、結論を“宣告”しているような言い方だ。

ふと、姜栩栩は十八階の男の霊が語っていた少女を思い出した。
あの時、その少女はこう言った。

「あなたは、強くなる」

そして、男は本当に強くなった。

漫展ビルで飛び降りた少女もそうだ。
彼女に向けられた言葉は――

「彼女は死ぬ」

結果は、その通りになった。

もし、これらの言葉を発したのがすべて同一人物だとしたら。
周亚亚が姜澄に特別に重視されている理由も、単純ではなくなる。

たった一言で人の運命を定める。
そんなことができる存在として、姜栩栩が思い当たるのは、ただ一つ。

言霊。
言葉が現実となり、言葉が法則となる力。

もし周亚亚が生まれつきの言霊使いだとしたら、話は相当に厄介だ。

まず、なぜ彼女は姜澄に近づいたのか。
――そう、接近したのだ。

姜溯から聞いた二人の出会いは、あまりにも出来すぎている。
路雪溪を捕らえた直後に気絶させられ、
偶然通りかかった彼女に助けられる。

偶然が重なりすぎる時、それはもう偶然ではない。

人為だ。

考え込んでいる間に、姜湛はスマートフォンをしまい、無言で立ち去ろうとしていた。

姜栩栩は彼の背中を見つめ、ふと問いかける。

「わざわざ教えてくれたのは……何か思うところがあるの?」

姜湛は足を止め、しばらくしてから再び文字を打ち込む。

【違和感があった。だから、伝えただけ】

それ以上の説明はなく、彼は振り返ることもなく、そのまま去っていった。

姜栩栩:……

考えるべき存在が、また一人増えた。
院長、周亚亚、そして姜湛。

だからこそ、彼女は真言符が好きなのだ。
どんな思惑があろうと、一枚貼ればすべて白日の下に晒される。

もっとも――
院長は霊力が強すぎて通じない。
姜湛は話せないから意味がない。

残るのは、周亚亚だけ。

姜栩栩は、すでに興味を抑えきれなくなっていた。
彼女の真言符は、果たして効くのだろうか。

……効いてくれると、いいのだけれど。


● 言霊(ことだま)
言葉に宿る霊的な力。特定の言葉を発することで現実を変質させ、結果を確定させる能力。
本章では「言出法随(言葉が法則となり、必ず現実化する)」という天賦の神能を指す。

● 気運(きうん)
個人が持つ運勢・流れ・巡りの総称。
奪われると不運、怪我、破財、健康不良などが連鎖的に起こる。

● 真言符(しんごんふ)
対象に真実を語らせるための符。
対象の霊力や状態によっては効果が及ばない場合もある。
感想 10

あなたにおすすめの小説

謹んで、婚約破棄をお受けいたします。

パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

名前すら呼ばれなかった妻は、最強の竜騎士でした〜ようやく気づいても、もう遅いです〜」

まさき
ファンタジー
屋敷を襲った魔物。 三年間、夫に名前すら呼ばれず冷遇され続けた私は、隠された力を解放する――。 「下がってください――」たった一言で戦況は一変。 魔法と剣技を駆使して魔物を一瞬で撃退し、夫も周囲も愕然とする。 私の正体――最強の竜騎士――は、誰も予想できなかった。 冷遇されていた日々はもう終わり。 これからは、私が世界を切り開く――戦闘と魔法で。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

ちゃむふー
恋愛
この国の全ての女性を虜にする程の美貌を備えた『華の騎士』との愛称を持つ、 アイロワニー伯爵令息のラウル様に一目惚れした私の妹ジュリーは両親に頼み込み、ラウル様の婚約者となった。 しかしその後程なくして、何者かに狙われた皇子を護り、ラウル様が大怪我をおってしまった。 一命は取り留めたものの顔に傷を受けてしまい、その上武器に毒を塗っていたのか、顔の半分が変色してしまい、大きな傷跡が残ってしまった。 今まで華の騎士とラウル様を讃えていた女性達も掌を返したようにラウル様を悪く言った。 "醜草の騎士"と…。 その女性の中には、婚約者であるはずの妹も含まれていた…。 そして妹は言うのだった。 「やっぱりあんな醜い恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!代わりにお姉様が嫁げば良いわ!!」 ※醜草とは、華との対照に使った言葉であり深い意味はありません。 ※ご都合主義、あるかもしれません。 ※ゆるふわ設定、お許しください。