「最強令嬢、ついに本気を出す!正体バレ!?偽りの令嬢、もう演じない

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第682話 彼女は存在しない

第682話 彼女は存在しない

「どういう意味だ?この件、お前が仕組んだのか?!」

姜瀚がガタンと音を立てて立ち上がる。
二人がまったく動じず座ったままなのを見て、無意識に姜栩栩の隣へと寄った。

しかし——
当の二人は彼を完全に無視し、ただ互いを見据えていた。

一人は冷ややかに、鋭く。
もう一人は、どこまでも飄々と。

「どうして俺が嘘をついたって分かった?」

乔屿はむしろ興味深そうに尋ねた。
自分では完璧に振る舞っていたつもりらしい。

姜栩栩は無表情のまま答える。

「異世界から来た人間は、あなただけじゃない」

最初に“集団自殺”の話を聞いた時点では、疑ってはいなかった。
ただ、どこか引っかかる違和感があった。

だから彼女は京市から戻った後、黎清姿に直接確認を取った。

かつて黎清姿は、自分が転生者であることを隠していた。
玄門に捕らえられ、魂を研究されることを恐れていたからだ。

だが姜栩栩がすでにその秘密を知っていたと分かると、彼女はすべてを打ち明けた。

黎清姿は前世、黎家という泥沼の中で生きていたため、社会ニュースには疎かった。
それでも——

重大事件の記憶くらいは残っている。

彼女はこう言った。

「他の地域は分からないけど、海大でこんな大事件が起きてたら絶対に知ってる。
もし隠されてたとしても、一般人はともかく、あたしたちの“圈子”が知らないわけない」

つまり——
その事件は、前世では“存在していない”。

さらに彼女はこうも言った。

「その人、新聞学科の学生?
じゃなきゃ、なんでこんなに正確に時系列覚えてるの?」

普通、人が正確な日付まで覚えている出来事は限られている。
自分に関係するか、あるいは日常的に関わる分野の出来事だけだ。

この一言で——
姜栩栩は確信した。

乔屿は“おかしい”。



「なるほど、もう他の転生者に会ってたのか」

乔屿は感心したように頷く。
正体を暴かれても、まったく動揺は見せない。

姜栩栩は冷たい目で彼を見据え、断言する。

「あなたは確かに異世界から来た魂。でも——乔屿本人じゃない」

「身体を奪ったのね」

彼が包艺思に話していた内容は事実だった。
この三日間で彼女も調査を済ませている。

元の乔屿は、子供の頃からずっと大人しく、平凡な性格だった。

黎清姿のような“途中転生”なら、ここまで性格が変わるはずがない。

だから結論は一つ。

——異魂による“奪身”。

しかも完全に融合している。

だが——

乔屿は首を振った。

「それは違う」

「俺は最初から乔屿だ。生まれた時からな」

姜栩栩は動じない。
ただ静かに問いを重ねる。

「じゃあ聞くわ。今回の件を仕組んだ理由は?」

「九人と何か因縁があるの?」

乔屿は肩をすくめる。

「因縁ってほどでもない」

徐涛の件も、ただの些細な摩擦に過ぎない。

「最初は殺すつもりだったけどね」

そして——
最初の八人については。

「まあ、こう思ってくれていい」

彼は笑う。

「君の実力を見たかっただけ」

その視線には、どこか底知れぬ含みがあった。

「前に言っただろ?うまく解決できたら、君に関する“あること”を教えるって」

だがその瞬間——

姜栩栩が淡々と口を開く。

「もしそれが、“私は異世界に存在しない”って話なら」

「もう知ってる」

——空気が凍りついた。

姜瀚は完全にフリーズ。
乔屿も一瞬、表情を固めた。

「……また別の転生者か。つまらないな」

少しだけ不満そうに舌打ちする。

一方、姜瀚は耐えきれず口を挟んだ。

「ちょっと待て、どういう意味だ?!存在しないって何だよ!」

乔屿が代わりに説明する。

「つまり——平行世界であるはずの異世界において」

「姜栩栩という人間は、最初から存在していない」

言葉を区切りながら、はっきりと告げる。

姜瀚は完全に言葉を失った。

だが当の姜栩栩は——
まったく動じない。

すでに一度、驚きは済んでいる。

黎清姿から聞いた時点で。

その前世では——
姜家に「姜栩栩」という娘は存在しなかった。

それどころか、姜淮すらいない。

姜家長男・姜禹城は生涯独身。
姜瀚には兄がいたが、幼くして夭折。
次男夫婦は離婚したが、時期はもっと後。

黎清姿はそんな情報を細かく語っていた。

そして——
姜栩栩の中には、すでに一つの仮説が浮かんでいる。

だが真相を確定するには、師父に会う必要がある。

そして目の前の乔屿は——
異世界へ繋がる“手がかり”そのものに見えた。

偶然にしては出来すぎている。
だが——

だからこそ、逃す理由はない。

姜栩栩はゆっくりと立ち上がる。

「話は十分ね。場所を変えて、続きを聞かせてもらうわ」

そう言って、拘束符を取り出した。

乔屿はまったく焦らない。

「捕まえるつもり?」

「でも証拠は?九人がどうやって飛び降りたか、まだ分かってないだろ?」

姜栩栩が口を開きかけた、その時——

バンッ!!

個室のドアが勢いよく開いた。

齐天讫と、もう一人の安全局メンバーが入ってくる。

そのまま一直線に乔屿へ。

「安全局の拘束に、証拠は要らない」

姜栩栩:……

(……ちょっとカッコつけすぎじゃない?)

心の中でそう思う。

その間に二人は乔屿を拘束。

だが——
乔屿は一切抵抗しなかった。

連行される直前、もう一度姜栩栩を見る。

「約束通り、一つ教えるよ」

「もう一つの“情報”をね」

そして——

「海大には“ゴキブリ”が潜んでいる」

「今回の八人——そいつに関係してる」

その言葉を残し、彼は連れて行かれた。
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